アウディが発明した“椅子のない椅子”|Audi

アウディが発明した“椅子のない椅子”|Audi

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Audi Chairless Chair|アウディ チェアレス チェア

アウディが発明した“椅子のない椅子”

新型「R8」やコンセプトモデル「プロローグ アバント」など、ジュネーブモーターショーに向けて華々しいモデルたちを発表したアウディが、あらたに公表したのは「チェアレス チェア」。冗談のようなネーミングの、アウディが提案する“椅子のない椅子”とは。

Text by HORIGUCHI Yoshihiro(OPENERS)

カーボンファイバー製の“もうひとつの脚”

アウディは、研究開発を進める「チェアレス チェア」を、自社工場で試験運用すると発表した。

“椅子のない椅子”と名づけられたこの装置は、カーボンファイバー(CFRP)でできた重量2.4kgの外骨格装置。レザーでカバーされた“腰掛”をおしりにあてがい、腰、膝、くるぶしの3点をベルトで固定して装着する。膝の関節部分はジョイントと油圧により、体格や姿勢にあわせて最適なポジションが得られるようになっている。

このようにチェアレス チェアを装着して“座る”ことにより、カーボンファイバーの“脚”がエルゴノミクス(人間工学)にもとづいた最適な姿勢で体重を支えてくれる、見えない椅子というのが名前の正体だ。着用した作業風景からは中腰の辛い姿勢にも見えるが、チェアレス チェアのみに注目してみると身体にフィットした、脚のない腰掛けとなっているのがわかる。

Audi Chairless Chair|アウディ チェアレス チェア
Audi Chairless Chair|アウディ チェアレス チェア

このチェアレス チェアは、車両のアッセンブリー(組立)工程にたずさわる従業員をサポートすべく開発されたもので、場所を選ばずに腰掛けたまま作業に従事することができる。この椅子に腰掛けると、ただ立つよりも人間工学的に正しい姿勢が保たれ、足腰への負担を軽減させることができるという。また、従業員の身体への負担が少なくなり、肉体的理由による欠勤の一部を減らすことができるのではないか、という期待も寄せられている。

「アウディでは長いあいだ、最先端のエルゴノミクス研究をおこなってきました。このチェアレス チェアは、数多くあるリサーチのなかでも生産ラインの労働環境を改善する装置です。従業員の健康を維持し、そのうえ、人間工学にもとづいたもっとも好ましい姿勢での作業は、生産性やクオリティの向上にも貢献します」とアウディの役員は語る。

ドイツのネッカーズウルムにあるアウディの工場では、「A4」と「A6」のラインで、今週から3種類のパイロットテスト版のチェアレス チェアを導入しているという。また5月からはインゴルシュタット工場でもテストがおこなわれる予定だ。アウディでは最終的にすべての生産ラインにおいて、この装置を展開するつもりでいる。

この開発は、研究部門のなかでも学際的なチームによりサポートされており、アウディのすすめるエルゴノミクス ストラテジーのひとつ“workplace of the future”の一端だという。この見えない椅子は、アウディが、車体の軽量化「Audi ultra」や「e-tron」「g-tron」などの多様なパワートレーンといったクルマのみにとどまらず、都市交通や労働環境まで包括して、社会全体のより良い未来を研究している成果のひとつといえる。