ART│東京都現代美術館で『ガブリエル・オロスコ展-内なる複数のサイクル』
ART│現代美術を代表するアーティストの日本初個展
東京都現代美術館で『ガブリエル・オロスコ展-内なる複数のサイクル』開催
現代美術を代表するメキシコ人アーティスト、ガブリエル・オロスコ(Gabriel Orozco)による国内美術館での初個展『ガブリエル・オロスコ展-内なる複数のサイクル』。5月10日(日)まで江東区の東京都現代美術館で開かれている。
Text by YANAKA Tomomi
平等な目で世界を眺め、本質を提示する作品群
1962年にメキシコで生まれたガブリエル・オロスコ。1990年代の現代美術を語るうえで欠かせない存在となり、近年でもニューヨーク近代美術館(MoMA)やイギリスのテート・モダンを巡回する大規模個展も開かれてきた。しかしながら、アジア圏ではあまり展示の機会はなく今回の企画展が、待望の日本初個展となる。
彼の作品の最大の特徴といえるのが、日常にある見慣れたものに介入することで、鑑賞者にあらたな思考を促す手法。路上に打ち捨てられた何気ないモノや風景のなかから魅力的なかたちを発見したり、それらのかたちを変えて作品に転換。日本庭園で石や砂を水の流れに見立てるのにも似たあらたな読み替えは、観る者に読み解く楽しさを与えてくれる。
地域性や政治性を排除したユニバーサルな彫刻や、さりげないスナップショットのような写真は、現在活躍する日本の若手アーティストにも大きな影響を与えてきた。
会場には、オロスコの初期作から近作までを一堂に展示。自動車を分割して張り合わせた代表作『La DS』や最新のカンヴァス作品を紹介するとともに、中央に池がある奇妙な卓球台では、実際に遊ぶことができるという。
人工物でも自然物でもヒエラルキーをもたない平等な目で世界を眺め、普通の人は見向きもしないようなものに着目し、作品を生み出してきたオロスコ。宇宙のなかで万物が流転し循環する様子を、遊び心でもってとらえた本質を見抜く作品群は、日本人の心にもすんなりと染み入ってくれることだろう。