菊地成孔×沖野修也 対談(前編)

菊地成孔×沖野修也 対談(前編)

LOUNGE FEATURES

『Beats & VIbes』
菊地成孔 × 沖野修也 対談(前編)

沖野修也さんが、SHIBUYA-FM 78.4MHz(毎月第四金曜日 21:00~)にてお送りしているハイブリッドでクロスオーバーなラジオ番組『Beats & VIbes』。
今回は、JAZZサックスプレーヤーの菊地成孔さんをお迎えして、10月にリリースされたペペ・トルメント・アスカラールの新譜『記憶喪失学』、そして11月にリリースされたNARUYOSHI KIKUCHI DUB SEXTETのライブアルバム『IN TOKYO』の話題を中心に、2008年12月5日、6日にBunkamura オーチャードホールにて行われるライブ『菊地成孔コンサート 2008』のお話、さらに沖野さん、菊地さんのおふたりが愛してやまない格闘技の話題など、話題盛りだくさんな60分となった。

Text by OPENERSPhoto by Tomo Stampede

沖野 今夜は、スペシャルゲスト菊地成孔さんをお迎えしてお送りします。
最近は、メールのやり取りはさせていただいていましたね。

菊地 そうですね。

沖野 菊地さんはね、メールが面白いんですよ!
一行一行にユーモアと、毒が(笑)。

菊地 恐縮です(笑)。

沖野 かなり面白いメールをいただきました。
最初にお会いしたのは──、たしか雑誌『ブルータス』の企画でしたっけ?

菊地 対談ですよね。

沖野 もちろん、それ以前からも存じ上げておりましたよ。
ROOMのスタッフが、じつは菊地さんにサックスを教わっていたんですよね。そのことを聞いていまして、勝手に親近感を覚えていたのですが(笑)。その対談を機にお近づきにならせていただきまして、逆に菊地さんのラジオのゲストに呼んで
いただいたりしましたね。
あと、菊地さんの本が好きで、いまも『服は何故音楽を必要とするのか?』を熟読中でして、同時にマイルス・デイビスの本も読みつつ、まだ全部読めていないんですけれどね。あと類家(心平)くんが、”KYOTO JAZZ MASSIVE”や、僕がプロデュースしている”DJ Kawasaki”の曲に参加したりしているので、じつは間接的なつながりはあるんですよね。

菊地 僕も”KYOTO JAZZ MASSIVE”が出た時から、ずっと聴いていますよ。
ROOMも1~2回行ったことありますから(笑)。

沖野 恐縮です(笑)。

菊地 沖野さんをリスペクトしていたので、対談ができたときは本当にうれしかったですよ。

沖野 僕は、毒舌が過ぎることでときどき自分の事務所からクレームが来たりするのですが(笑)、そういう話を話せるヒトがなかなかいないんですよ。だいたいDJが集まると、音楽の話題しかしないんです。「最近、何を買った?」とか(笑)。それもいいけれど、もうちょっといろいろと話をしたいなと思っているんですよね。
だから僕は、菊地さんの料理の話だったり、格闘技の話だったり、洋服の話だったり、どれも好きなのでお話がしたかったんです。音楽だけじゃなくて、執筆家、批評家としての菊地さんもリスペクトしているのですが、でも読むのが追いつかないくらい、本の量を出されますね(笑)。

菊地 どんどん出すからね、スミマセン(笑)
でも、沖野さんも本を出されているじゃないですか。

沖野 ぼくは2冊だけです。

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菊地 あと沖野さんの場合、アルバムは、もちろん音も素晴らしいのですが、楽しみなのは──沖野さん! ライナーを書くじゃないですか(笑)。

沖野 ドキ(笑)!

菊地 “KYOTO JAZZ MASSIVE”といわれて、けっこうMASSIVEな量のライナーを書くじゃないですか(笑)。さらさらという感じじゃないですよね。かなり語る系でいっぱい書かれているので、アレが好きなんですよ。感動するんですよね、ムーヴするというか──。

沖野 書かないと理解してもらえないのもどうかなと思っていますけれどね。

菊地 音は音で、きちんと理解されていると思いますよ。

沖野 説明しないと分かってもらえないという、”脅迫観念”みたいなのがあるんです。

菊地 そうなんですか!?

沖野 じつは、菊地さんがご自分でライナーを書かれていることを知っていて、そういうことをやってもいいんだなと思ったんですよ。それまでは、自分で作った音楽を自分の言葉で説明すること自体に「いいのかな?」と感じていたんです。そもそものキッカケは、DJは、アーティストではなかったじゃないですか?

菊地 そうですね、昔はね。

沖野 いまでこそDJプロデューサーといって、曲を作ったりしていますけれど。もともとDJには批評性というものがあって、たとえばジェームス・ブラウンのなかでもこの曲はOKだけれど、この曲はダメというのがあるんですよね。
いまも自分のなかで音楽紹介業みたいな意識があって、紹介するときに言葉で説明しないとその曲が持っている魅力が伝わらないと思っているんです。ヒトのライナーはなかなか書けなかったのですが、自分が出す側になったときに、自分の音楽をいちばんうまく説明できるのは自分かなって(笑)。

菊地 絶対そうですよ。

沖野 でも、菊地さんが自分の作品のライナーを書かれていて、僕はまちがっていなかったなと思いました。ココロの”支え”にさせていただいております(笑)。

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菊地 そんな”支え”にならないですけれどね(笑)。
でも、自分語り系というか、自分で説明するタイプの人って多いですよね。まあ、書いてあるものがイケていればそれでいいんですけれど。
沖野さんのライナーは、すごくいいですよ。必ず感動するようになっていますから(笑)。胸が熱くなる、あれがなんともいいですね。

沖野 菊地さんに褒めていただけるとは思っていなかったです。ではそろそろ、近況をお聞きしたいのですが。

菊地 10月に”ペペ・トルメント・アスカラール”というバンドから『記憶喪失学』というアルバムを出しまして、11月21日に”NARUYOSHI KIKUCHI DUB SEXTET”のライブアルバム『IN TOKYO』をリリースしました。

沖野 いつも驚かされるのですが──、僕もアルバムを多くリリースしているほうですけれど、僕自身の名義のオリジナルというと2年に一枚だったりするんです。菊地さんは、アルバムのリリース量がすごく多いですよね。

菊地 僕は、コンピレーションもできないし、プロデュースもできないので、自分のアルバムを出すしかないから多くなってしまうんです。

沖野 でも、いまの時代、このペースでリリースしている人はなかなかいないと思いますよ。出し惜しみしつつも、でも出さないと忘れられてしまうじゃないですか? ”KYOTO JAZZ MASSIVE”も、かれこれ6年新作を出していなくて、海外に行くと、知っている世代がもういないんですよね。
ただ、マイスペースが普及してからは、むかしに”KYOTO JAZZ MASSIVE”を知っていた人たちが戻ってくるみたいな感じですよ。でも、現場では、特にヨーロッパはテックハウスが全盛で、ジャズクロスオーバー系のあたたかい音楽は、ほぼ全滅なんです。
忘れられないから出さないというわけではなく、出すものがあれば僕もいっぱい出したいと思っていますよ。その辺りの菊地さんのモチベーションについて、すごく興味があるのですが。

菊地 たぶん、僕がコンピレーションを出したり、プロデュースをしたら、オリジナルアルバムはお留守になると思いますね。でも、そういう仕事ができないんですよ。だからオリジナルをやっているというだけなんです。

沖野 でも、いろんなプロジェクトを並行されて手がけられているじゃないですか?

菊地 いまはふたつに絞りました。だから自分のことをやっている限りは、次々と出していきますよ。

沖野 でも──、ライブもあるでしょ? 曲も作らないといけないじゃないですか? レコーディングもあって、執筆活動もある。時間は、どうやって捻出されているんですか?

菊地 それは、よく聞かれるのですが、逆に沖野さんにそれを聞こうと思っていたんです(笑)。沖野さんも時間をどうやって捻出しているのかな? と。僕はゲームをやらないんですよ。あとマンガも読まないし、テレビもほとんど観ない。インターネットもほとんどやらないんです。でも、その4つをやらなくなったら、日本人は相当時間があまると思いますよ(笑)。

沖野 たしかに(笑)!

菊地 ただ、僕の場合、晩ごはんに3時間くらいかかるんで(笑)。あと、散歩して、物書きして──。「寝ていないでしょ?」とよく言われるのですが、今日も10時間は寝ましたしね。

沖野 格闘技を観に行くのも、時間がかかりませんか?

菊地 その日は潰れます。
で、夜に原稿書いて、ご飯を食べてという感じですね。

沖野 僕もテレビは観ないですね。ただメールのチェックにすごく時間かかります。

菊地 それは時間がかかるでしょうね、世界中から来ますもんね。

沖野 その分、寝る時間を削っています。

菊地 やっぱり! 寝ない派ですか?

沖野 寝ない派です。

菊地 寝ない”ハイ”の感じですよね(笑)。

沖野 寝ると不安になるんです。寝ているあいだに──。

菊地 何かが起こるんじゃないかと?

沖野 いや、寝ているあいだにほかの連中がオレを置いていくんじゃないか? と(笑)。

菊地 誰も置いていかないと思いますけどね(笑)。

沖野 僕の母が、「何もかもダメ!」という人なんですよ。

菊地 認めてくれないんですね。

沖野 そういう育てられ方をしたので、不安がいつも取り巻いているんです。だから、「これじゃダメだ」「オレまだダメだ」という感じになるんです。

菊地 一番いい育てられ方じゃないですか!

沖野 アルバムも出して、イベントもやって、DJツアーもやって、本も出して──「まだダメや!」と思う、みたいな感じです。

菊地 ワーカホリックですね。

沖野 自信がないわけではないのですが、完成度に満足できないというか。

菊地 芸術家としては、一番いいんじゃないですか? 逆に僕は、やっていることに毎回満足しているんです。
「今日もサイコーサイコー!」と言いながら、というバカタイプですよ(笑)。ただ、それが最高だから、またやろうという感じになっちゃう。結局、好景気世代なんですよね。
生まれたのが1963年なので高度成長期で、20歳のときが83年でしょ。大バブルじゃないですか(笑)。不景気安定みたいなのが苦手なんですよね。だから、毎日”何か”があるという80’sの感じとか、あと60’sの感じがカラダに染みついてしまっているので、静かにためてというのができないんです(笑)。

沖野 なるほど(笑)。

okino

菊地成孔コンサート 2008会場 渋谷Bunkamuraオーチャードホール
2008年12月5日(金) 第一夜
開演 19:00
出演 菊地成孔 ダブ・セクステット
スペシャル・ゲストDJ
沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE、DJ/選曲評論家)

2008年12月6日(土) 第二夜
開演 18:00
出演 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール

チケット 6500円(全席指定)
チケット問い合せ
Bunkamuraオーチャードホール
03-3477-3244(10:00~19:00)
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/shosai_08_kikuchi.html

菊地成孔コンサート 2008
菊地成孔ダブ・セクステット<br>イン・トーキョー

菊地成孔ダブ・セクステット
イン・トーキョー
価格 2500円
ダウンロード価格
アルバム 1800円
一曲 200円
(iTunes Music Storeで販売)

菊地成孔とペぺ・トルメント・アスカラール<br>記憶喪失学

菊地成孔とペぺ・トルメント・アスカラール
記憶喪失学
価格 3000円

ABOUT
KIKUCHI Naruyoshi

音楽家/文筆家/音楽講師。活動、思想の軸足をジャズ・ミュージックに置きながら、ジャンル横断的な音楽、著述活動を旺盛に展開。2010年、世界ではじめて10年間分の仕事をUSBメモリに収録した全集『闘争エチカ』を発表。201 …