フォード フォーカス・スポーツ 長期レポート 第2回|Ford
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

フォード フォーカス・スポーツ 長期レポート 第2回|Ford

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

第2回 フォーカスでワインディングを走る

OPENERS編集部の長期レポート第5号車として導入した「フォード フォーカス」は、2012年の単一車名販売No.1の記録を持つベストセラーモデルである。過去、フォーカスといえばWRCでの活躍がすぐにイメージできるように、走りの良さがセールスポイントだったが、現行モデルの実力はどうか。久々の空き時間を利用して、ワインディングロードへとステアリングを向けたみた。

Text by SAKURAI KenichiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko

Ford Focus|フォード・フォーカス

5号車
Ford Focus Sport
フォード フォーカス・スポーツ

導入時期 2013年8月
購入価格 293万円
総走行距離 11,062km
今回の燃費 12.5km/ℓ
総平均燃費 11.8km/ℓ

一路、富士の裾野を目指して

普段から都内や首都圏近郊の取材で、コンパクトなボディがもたらす運転のしやすさや快適性は十分に確認済みだ。目にとまったパーキングにスッとなんの迷いもなく入れられるボディサイズは、ストレスフリー。都心の渋滞さえ見越していけば、クルマでの移動は何の苦もない実用性と利便性をもたらしてくれる。日々の運転をこれほどまでに楽しいと思わせてくれたのは、何年ぶりだろうか。フォーカスは、短距離ではあるが、ほぼ毎日フル稼働状態である。


今日のスケジュールを確認すると、珍しく夕方の打ち合わせから続く夜のイベント取材のみだった。久々に空いた早朝~夕方までの時間を利用して、長距離を試してみることにした。早朝都内を出発し、世界遺産認定でも話題の富士の裾野を目指す。

Ford Focus|フォード・フォーカス

Ford Focus|フォード・フォーカス

特筆すべきはシートの出来の良さ

いつものように、広い室内に収まるシートに体を預ける。あいかわらずドライビングポジションがしっくりと決まる。何かのモデルの流用などではない、フォーカスのために開発されたシートは、ホールド感、クッション性、座り心地において、申し分のないフィーリングだ。

特に、直接肌に触れる部分をファブリックで、サイドサポート部分や座面と背もたれの両端をレザー仕様にしたコンビネーションデザインのシートは、滑りにくく体の包み込み感が絶妙だ。単なるデザインのためだけではなく、ドライバーが乗車した際に効果的に体をホールドする、機能を持ったデザインなのである。


これまで編集スタッフが代わる代わるフォーカスのステアリングを握っているが、誰一人としてシートポジションに不満を唱えたものはいない。“フォーカス=輸入車”という先入観から、左レバーをウィンカーレバーだと勘違いし、動きだしでワイパーを操作してしまうスタッフが何人かいたのはご愛敬である。

シフトレバーの表示や右側にあるウィンカーレバー、サイドブレーキの位置などは、きちんと右ハンドル仕様に設計されているので、日本車からの乗り換えでも違和感はない。初めて選ぶ輸入車として、これほどふさわしいモデルもないであろう。

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

第2回 フォーカスでワインディングを走る (2)

コンパクトカーとは思えないNVH性能

流れに乗って走る高速道路は、快適のひとことだ。高速巡航で気づくのは、風切り音と、フロアを通して聞こえるロードノイズの少なさだ。特にフロア透過音は、先週試乗会で乗った同クラスのプレミアムハッチバックよりも、体感上少なく思えた。新型フォーカスのCD値(空気抵抗係数)は0.298で、先代フォーカスの0.341に対して約15パーセントも削減されている。


資料によれば、カーペットの改良やボディ空洞部への発泡フォーム充填、吸音性に優れたヘッドライナー、トリムパーツのシーリング強化など、キャビンへのノイズ侵入防止のために多岐にわたる技術を妥協なく採用。ウィンドノイズの低減にも配慮して、ドアガラスを密着するガラスランを三枚構造にしたほか、ドアミラーやウェザーストリップ形状も最適化。先代モデルに対してウィンドノイズを大幅に軽減しただけでなく、キャビン内の音圧分布を均一化した。

こういった細部にわたるアプローチによって、総合的な新型フォーカスのNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)は、ラグジュアリー・サルーンなみの洗練されたレベルを達成しているという。

Ford Focus|フォード・フォーカス

確かに、高速走行時にキャビンへと侵入するノイズは少ない。同乗者がいれば、高速走行時の騒音を意識することなく、会話が楽しめるのもフォーカスの美点である。

助手席の乗員によっては、たまに会話が聞こえないふりをしたくなることもあるのだが、残念ながらフォーカスにおいて「え? 聞こえなかった」は通用しない。運転中も場の雰囲気が悪くならない程度に、内容のぜひはともかく、相づちを打つ必要はあるのでご注意いただきたい(経験談)。

ドライバー中心に話を進めれば、高速走行の直進安定性が良く、長距離走行の疲労が少なくてすむのはメリットだ。軽くステアリングに手を添えているだけで、クルマはまっすぐに進む。「ハンドルをまっすぐにしていれば、クルマは当然まっすぐ進むのでは?」と思うのは早計だ。路面状況によっては、絶えず左右に細かくステアリングを操作しなければならないクルマも多い。

簡単なようだが、クルマをまっすぐ走らせるのは意外に難しく、基本設計はもちろんだが、機械の工作精度や部品の組み付け精度の高さも、大いに関連してくる。余談だが、ディーラーでの新車試乗の際は、このあたりを意識して乗ると、クルマの基本スペックの高さが理解できると思うのでお試しあれ。

Ford Focus|フォード・フォーカス

Ford Focus|フォード・フォーカス

期待に沿った加速力

搭載される最高出力170ps、最大トルク20.6kgmを発揮する2リッター直列4気筒直噴エンジンのパワーは、フォーカスにマッチするパフォーマンスをもたらすものだ。もしも追い越し車線の流れをリードしたいと思えば、それは簡単な作業だ。シフトレバーを「Sレンジ」に入れ、パワーシフトと呼ばれる6段のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)のギアをセレクトシフトで1段落とし、アクセルを軽く踏み込めば、期待に沿った加速力を披露し、瞬く間に余裕ある高速巡航に移れる。

例え「Dレンジ」のままであっても、問題はない。アクセルを強めに踏み込めば、乾いたエキゾーストノートともに、欲しい加速力が瞬時に手に入る。Cセグメントのコンパクトカーであっても、フォーカスにおいては、加速シーンでストレスを感じることなど、ほとんどないはずである。

Ford Focus Sport|フォード フォーカス・スポーツ

第2回 フォーカスでワインディングを走る (3)

水を得た魚のごとく

平日のトラックの多い高速道路で他車を後方に追いやり、一般道に下りる。御殿場の市街地を抜け、程なくして富士山の5合目まで登るワインディンロードは、交通量も少なく、お気に入りの道のひとつだ。いよいよフォーカスの本領発揮となるステージである。


数キロにわたる緩やかな登りと連続するきつい登りのコーナーでも、フォーカスの加速力は落ちない。この走りを「スポーティ」と称さないものはいないだろう。しっかりしたボディがもたらすソリッド感と、ステアリングレスポンスの良さは、初代フォーカスから変わらない美点だ。


もっとも、ヒラリヒラリとワインディングを駆け抜けていく初代モデルに対して、3代目となる現行モデルは、安定感の高さがウリ。直線でステアリングが真っ直ぐなうちにしっかりと減速、コーナーを回り、クリップに付きすぐさまアクセルをジワリとオンにする。そんなセオリー通りの走りで、気づけば意外なほど速いスピードでワインディングを駆け抜けていく。2速と3速を駆使し、まるで自分の運転が上手くなった……と錯覚するほど、ハイスピードコーナリングが楽しめてしまうのだ。

Ford Focus|フォード・フォーカス

Ford Focus|フォード・フォーカス

ただし、そうはいっても、170psでは危なげない安定した走りに終始する。よく、「エンジンよりシャシーが速い」と比喩的な表現をするが、フォーカスもまさにそれで、エンジンパワーよりシャシーのポテンシャルが勝っているので、スリリングなシーンに至ることはほとんどない。それでもスムーズにハイスピードコーナリングが楽しめるのは、実は、トルクベクタリング・コントロールシステムを搭載したフォーカスのESPのおかげである。


トルクベクタリング・コントロールとは、コーナリングの際に内側のタイヤのスリップを検出すると、ドライバーには感じられないレベルで内輪にブレーキをかけ、車両を安定させる電子デバイス。ホイールの空転が防止され、よりグリップ力の強い外輪にエンジンのトルクが配分されることで、トラクションとステアリングのコントロールが維持されるのだという。センサーが1秒間に100回もの頻度で車両の動きを監視し、内輪がスリップすると瞬時にシステムを作動させるのだ。


そう。まるで自分の運転が上手くなった……と錯覚するほど、ハイスピードコーナリングが楽しめてしまったのは、まさに錯覚であったのだ。正しくは、ドライバーにまったく意識させないレベルで、フォーカスがスポーティでスムーズなコーナリングをしっかりとサポートしてくれていた……というワケである。

Ford Focus|フォード・フォーカス

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第2回 フォーカスでワインディングを走る (4)

いつでもどこでも楽しいドライビング

残念ながら、自分のドライビングスキルが突然向上するようなことはなかったが、ドライビングを久々に楽しんだのは、紛れもない事実だ。欲を言えば、シフトレバーに備わるマニュアルモード用のセレクトシフトモードスイッチは、もう少し大きいほうが使いやすいし、明確なクリック感を演出すれば、さらにワインディングの下りでは使いやすいと思う。

Ford Focus|フォード・フォーカス

Ford Focus|フォード・フォーカス

タイトなコックピットと感触のいい操作系が、ワインディングロードでクルマとの一体感をさらに意識させ、運転する楽しさを呼び起こしてくれる。スピードを上げれば上げるほど、クルマが体にピッタリフィットする独特の感触が得られるのである。

しかし、これは、なにもワインディングロードだけに限った話ではない。ステアリングやシフトノブを操作し、街中で交差点を曲がる瞬間や、車線を変える瞬間でさえもフォーカスはドライビングの楽しさを感じさせてくれる。スペース効率や実用性を重視した他のCセグメントモデルにはない、フォーカスならではのアドバンテージである。

遠くからでも「あ、フォーカス」と分かる個性あふれるフォルムや、ちょっとスポーティに振ったインテリアデザインのせいで、どうしても見た目優先のデザイン番長に思われがちかもしれない。

だが実際は走りの質にこだわる、まじめなクルマ作りがフォーカスのDNAに組み込まれていることを忘れてはいけない。これは、初代モデルから綿々と続くフォーカスこだわりであり、良心でもあるのだ。

Ford Focus|フォード・フォーカス

帰路、どうやら東名高速は厚木から渋滞しているようだ。ここは富士五湖有料道路を経由して、中央高速回りで都内に戻ることにしよう。夜の取材先にもその方がアプローチはしやすい。多少遠回りにはなるが、その遠回りさえ楽しくさえてくれるのが、今の相棒なのである。


Spec|スペック

Ford Focus Sport|フォード・フォーカス・スポーツ
ボディサイズ|全長4,370×全幅1,810×全高1,480 mm
ホイールベース|2,650 mm
トレッド 前/後|1,555 / 1,545 mm
最低地上高|130 mm
重量|1,380 kg
エンジン|1,998cc 直列4気筒 直噴DOHC
ボア×ストローク|87.5×83.1 mm
最高出力| 125kW(170ps)/ 6,600 rpm
最大トルク|202Nm(20.6kgm)/ 4,450 rpm
トランスミッション|6段オートマチック(デュアルクラッチ)
ギア比|1速 3.917
    2速 2.429
    3速 1.436
    4速 1.021
    5速 0.867
    6速 0.702
減速比|3.850(1,2,5,6速)/4.278(3,4速,後退)
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ|215/50R17
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃料タンク容量|55 ℓ
最小回転半径|6 m
価格|293万円

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