ART|宇和島を舞台にしたアートプロジェクト『AT ART UWAJIMA 2013』
ART|束芋×ほしよりこ×永山祐子によるサイトスペシフィックなコラボレーション
愛媛・宇和島を舞台にしたアートプロジェクト『AT ART UWAJIMA 2013』
リアス式海岸が美しい、瀬戸内海に面した愛媛県宇和島市。この地を活性化させようと建築家の永山祐子(ながやま・ゆうこ)とリバースプロジェクトでも活躍するアーティスト藤元明(ふじもと・あきら)が呼びかけて設立したNPO法人 SO-ENによるアートプロジェクト『AT ART UWAJIMA 2013』が7月24日(水)から8月22日(木)まで、市内の老舗、木屋旅館とアーケード(商店街)にある宇和島きさいやロードで開かれる。
Text by YANAKA Tomomi
アーケードでは「サイドコア」の4人のアーティストが作品を展示
城下町であり、牛鬼祭りや闘牛、そして魅力的な食など、さまざまな文化と豊かな自然を継承してきた宇和島にあたらしい文化価値を積み上げてみようと企画された『AT ART UWAJIMA 2013』。
アートプロジェクトが展開されるのは、明治44年に創業、多くの文人に愛されてきた由緒ある木屋旅館と、アーケード内にあり、閉店した文具店を総リノベーションした「SITUATIONALLY」だ。木屋旅館は2012年に“引き算”というコンセプトをもとにあたらしい価値観の発見を目指し、建築家永山祐子により1日1組の宿泊施設へと生まれ変わり、この出会いをきっかけにプロジェクトは誕生した。
旅館のなかでは現代美術家の束芋(たばいも)が、漫画『きょうの猫村さん』などで知られるほしよりこによって書かれた、木屋旅館を舞台にした小説をもとに、日常の風景、記憶の痕跡などから紡ぎだされた内面世界を展開。100年もの時を継承する閉じられた宿泊空間で繰り広げられる物語と映像による私的体験を味わえる。また、プロジェクト開催中も通常どおり1日1組が宿泊できるという。
一方、「SITUATIONALLY」では、ストリート文化以降の表現を扱う「サイドコア」が美術作品を展示。今回は、阿部亮太郎、菊地良太、木村泰平、コムロタカヒロの4人がリノベーションを含めた、意欲的な作品を展開。「SITUATIONALLY」という場自体が作家によって作品の一部となっていく過程をインスタレーションとしても楽しめる。
どちらも日常的な空間を舞台にしながら、プライベートな空間である旅館と、パブリックな場であるアーケードという異なる方向性をもつふたつの展示。しかし、いずれの作品も宇和島の多様な生活と結びつき、わたしたちが普段何気なく通り過ぎていた日常へのあたらしいアプローチを示している。