LOOPWHEELER|ループウィラー×ルモアズ別注パーカついに完成!
Fashion
2015年8月3日

LOOPWHEELER|ループウィラー×ルモアズ別注パーカついに完成!

LOOPWHEELER|ループウィラー

テーマは“大人のためのスウェット”

ループウィラー×ルモアズ別注パーカ、ついに完成!(1)

昨年より制作が進められてきた、ループウィラー×ルモアズによる別注パーカが、ついに完成した。テーマは“大人のためのスウェット”。素材の質についてはもちろん、細かなディテールまでこだわった会心作だ。その仕上がりについて、ループウィラー代表 鈴木 諭氏、ルモアズのディレクター 松本博幸が語る。

Text by FUJITA Mayu(OPENERS)Photographs by TAKADA Midzuho

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世界が認める、職人気質の伝統的なモノ作り

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代表の鈴木 諭氏は“生産管理”という裏方として、数多くのアパレルメーカーを支えてきた人物だ。素材の手配からパターンメイキングまで手がけ、「テーラードもの以外はすべて作ったと思います」と本人も語るほど。裏方として経験を積むなかで、吊り編み生地に対する価値感を共有する工場(職人)との出会いを重ね、1999年「ループウィラー」をスタート。“ループウィラー”というブランド名は、“Loop wheel Machine=吊り編み機”に由来する。吊り編み機でなければ作れない吊り編み生地の独特の風合い、コットンの特性を活かした保温性の高いふんわりと柔らかい肌触りは、洗濯を繰り返しても長持ち。

そんな吊り編み生地を主役にしたクリエイションは、国内だけに留まらず、ナイキとのコラボレーションや、パリの『コレット』で展開されるなど、世界で認められている。これがブランド、吊り編み工場、縫製工場がつづけた誠実なモノ作りへの評価とするなら、伝統を重んじた、日本ならではのモノ作りの未来は明るい。こうした三者の“三人三脚”に、ルモアズがくわわるカタチで進められてきた今回の別注プロジェクト。ついに完成した別注パーカに込めた想い、仕上がりに対するこだわりとは?

ループウィラーの3つの定番ジップパーカ

――今回の別注パーカはディテールのアレンジだけでなく、ベースから作られているのですか?

鈴木 まったくのゼロからというわけではなく、ハイジップパーカ、通称LW190という既存モデルがベースになっていますが、パターンはあらためて引き直しています。最終的に既存モデルから40mmも削りましたし、ポケットの位置や仕様も異なりますから。ベースとなったLW190は襟もとが高く作られたスマートなシルエットが特徴で、襟が高いぶん、風を通しにくいのも魅力です。1年半ほど前にリリースした比較的あたらしいモデルになりますが、このLW190ふくめ、ループウィラーには全部で3種類のジップパーカがあります。ひとつはLW190同様、“ループウィラーライト”と呼ばれる生地を使ったコンパクトな作りのダブルジップパーカ、通称LW81です。

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ループウィラーライト LW190

もうひとつはスウェットのもっともオーセンティックな作り方を踏襲して作られた、通称LW09です。スウェットのオリジンともいえる仕様の特徴は、サイドに継ぎ目のない丸胴ボディにあります。LW81、LW190を見てもらえばわかるとおり、口径の大きな吊り編み機で編まれた生地を裁断し、前身ごろと後ろ身ごろをつなぎ合わせてボディを作るため、ボディのサイドにシーム(脇縫い)が生じます。これは洋服の一般的な作り方ですね。

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ループウィラーライト LW81

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ループウィラーベーシック LW09

しかしLW09は完全にシームレス。XSからXLまで5つのサイズの吊り編み機があり、筒状になって編まれてくる生地をそのまま使用します。口径の直径=サイズになっているのです。ブランド立ち上げ当時、一番最初に作ったのがこの“ループウィラーベーシック”ラインです。生地の継ぎ目がないので肌あたりに抵抗がなく、そのため着心地は抜群。ただ口径のサイズに合わせて作るしかないため、サイズの微調整はできません(笑)。

日本一のニット縫製工場! 丸和繊維工業

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丸和繊維工業株式会社 青森縫製工場アプティマルワ
付属パーツ作成風景 ©LOOPWHEELER

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丸和繊維工業株式会社 青森縫製工場アプティマルワ
フラットシーマによる縫製 ©LOOPWHEELER

縫製はおもに青森にある丸和繊維工業さんにお願いしていますが、ここはフラットシーマという4本針のミシンを使った縫製をおこなっています。作業速度がほかのミシンに比べ遅いため、現代においては希少な存在です。一般的な2本針のミシンは、表面はきれいに仕上がりますが、裏側では縫い代の重なりがステッチの中で膨らんでゴロつき感が生じます。しかしフラットシーマは、最小限の幅で上下に重ねた生地同士を4本針で平らに縫い合わせるため、ゴロつきのない着用感をもたらしてくれます。さきほど紹介したLW09、LW81はじめ、ループウィラーの商品にはこのフラットシーマが必要な部分に使われています。

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洗練された“大人のためのスウェット”

――身幅を40ミリも削れらたそうですが、デザインテーマとは?

松本 もともとループウィラーのスウェットは完成されてますから、仕様変更するのはおこがましいのですが……。カジュアル過ぎず、それでいてシンプルに着られる、洗練された“大人のためのスウェット”をイメージしています。すっきりとしたシルエットは、身幅を削るだけでなく、ポケットやファスナー部分の仕様を工夫することで、見た目からもスマートな印象を与えるよう意識しました。“カンガルーポケット”と呼びますが、通常パーカのポケットって、腹部の中央に向かって両端から手が入れられる“ハンドウォーマー”のようなカタチになっている、いわゆるパーカの基本形ですが、カジュアルでアメリカっぽいイメージが強い。スウェットってそもそもアメリカ生まれのカジュアルウェアだから正解なんですけどね(笑)。

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でも今回は、すこしモダンな仕上がりにするため、“ボックスポケット”にしました。ポケットが存在感を主張しないというか、これだけでだいぶ印象がスマートになるでしょう?

鈴木 ループウィラーにもボックスポケットのアイテム、通称LW79がありますが、こちらはポケット生地にフライスを使用しています。でも今回はポケットも共地にすることで、よりすっきりとして、カジュアルさが抑えられていると思います。

デザイン性と機能性を兼ね備えた遊び心あるバックポケット

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――ディテールのこだわりはほかにも?

松本 フロントジップのサイドにステッチを入れました。これはスウェットパーカのオーセンティックなディテールですが、縦のラインを強調するため見た目にすっきりとした印象を与えます。これがあることでジップも締めやすくなるんですよ。また、最近は自転車に乗るひとが増えたので、背面にもポケットをつけてみました。前に膨らみを作るとスマートなシルエットも崩れてしまいますからね。別注パーカでは左にポケットをつけましたが、ループウィラーは右ですよね?

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これが職人技! ピシっと締まったバックポケットの口、気持ちのいい仕上がり。

鈴木 ループウィラーでは毎年バックポケットのパーカを作っていますが、うちは右ですね。手が入りやすいよう斜めにカットされていますし、容量もけっこうあるのでなかなか便利です。自転車に乗るときは背中が丸まったぶん生地が張りますから、自然とポケットの口も締まるので、物が落ちる心配はありません。僕はよくペットボトルを入れています。ポケットの口は使ううちにある程度開いてきますが、ピシっと締まっていた方が気持ちいいですよね。ささいなことかもしれませんが、手を抜けばだらしなく、くたびれた印象を与えてしまう重要なポイントです。縫製にも高い技術が必要となりますが、ニットの特性を知り尽くした丸和繊維工業さんならではの技が叶えた仕上がりといえるでしょう。

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改良を重ねて完成したこだわりの生地はルモアズのエクスクルーシブ!

――ブランドのアイコン的存在である袖口のタグですが、色がちがいますね?

鈴木 袖口のタグは別注を受けたブランドさんそれぞれにカラーを用意していますが、ルモアズは黒地にチャコールグレーの文字。シックでいいですよね。スウェットってカジュアルで、アメリカンカレッジライクな雰囲気になりがちですが、これはトラッドっぽさを残しつつ、ヨーロッパテイストな仕上りを目指したのです。

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通常のループウィラーのタグ

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ルモアズ別注パーカのタグ

松本 細身のボトムスを合わせるヨーロッパのスタイルにも違和感のないモノを作りたかった。カジュアルを“きれい”に着こなす提案をしたいですね。気楽に着てるけど、見た目は“ちゃんと”していたい、そんなワガママを叶えてくれるスウェットです。この“ちゃんと”を表現するには、ある程度ハリのある素材でカタチをしっかり作る必要があるのだけど、軽さと柔らかさもほしい……。

鈴木 それで提案したのが今回の素材でした。これまでにない新素材で、この別注パーカだけでしか使われない、いわゆる“エクスクルーブ”ってやつです。“LW ライト”と、さらに薄手の“LW エキストラライト”の中間ぐらいの厚さで、まさにリクエストどおりの仕上がりだと思います。

じつはこれに近いものを以前作ったのですが、僕のなかで納得のいかない部分があって。それで糸の番手や編み機を変え、改良を重ねて完成したのがこの生地です。編み機を変えるとは、針数を変えるということ。

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おなじ口径でも針数が多ければ編み目の詰まったハリのある生地になりますし、少なければ編み目がゆるくなり、柔らかさが増します。こうして糸と針数を変えることで風合いの異なる生地を作っているんですね。

試行錯誤を重ね、やっと実現したヴィンテージな白

――シンプルなデザインのなかに、左袖の控えめな白のラインが印象的ですね。

松本 ヴィンテージな風合いをイメージしました。

鈴木 これが大変だった……何度、試刷りしたことか(笑)。白の場合、ベタっとテープを貼ったようにクッキリと表現するなら問題ないのですが、これみたいに染み込んだような風合いとなると、すごく難しい。白のインクを極力少なくして薄く重ねていくんだけど、スウェットだから薄くすればするほど吸ってしまって、なかなか色が出ない。白いインクの調合を何度も変えて、やっと納得のいく色を出すことができました。きっと写真では伝わらないだろうな、この微妙な色の差は……(泣)。

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決してマニュアル化できない技術、だからこそ確立される価値

――今回のコラボレーションを振り返って、いかがでしたか?

松本 本当は抜染に挑戦してみたかったけど、ラインだけ、というのは無理に等しいそうなので断念。ワガママなお願いをしましたが、今回の別注では難しい技術をいっぱい取り入れたかったんです。日本の技術力、精度の高さについて語られることは多くても、注目されるのは最新技術ばかり。それももちろんすばらしいことですが、職人たちが守りつないできた伝統の技術だって、もっと世界に誇るべきだと思うんです。

継承者がいないために閉鎖されてゆく工場は増えるいっぽう。僕は以前所属していた『モノ・マガジン』という雑誌をつうじて、いろんなことを学び、現在ではウェブマガジンOPENERSという“媒体”に携わる人間として、誇るべき技術のすばらしさや職人の美学をもっと伝えていきたい。古いやり方なんだけど未来が見える、読者の方々にそう思ってもらえたらうれしいな。だから今回、伝統を守り継ぐモノ作りで世界に認められるループウィラーと一緒にモノ作りをできたことは本当に幸せです。

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鈴木 今回使われている新生地もそうですが、工場の職人さんと仕上がりのイメージを共有しながら、試行錯誤を繰り返して新しい生地を作り上げていきます。大変だと思います、僕うるさいから(笑)。でも無茶は言いません。

“あうんの呼吸”ではありませんが、長年の付き合いのなかで築き上げた関係はもちろん、深い知識、培った感覚が互いに必要となる作業です。それって決して仕様書付きのマニュアル化はできないんです。最低限のことは文字にして認識を統一する必要があるでしょうけど。

でも、その先の、見る者を唸らせる技術というのは世代から世代へ、目や手や声を使って伝えていくものだし、感覚で覚えていくしかないんです。それも1日、2日で覚えられることではなく、時間がかかりますから、教える側にも教えられる側にも根気と忍耐が必要になる、本当に大変な作業です。

それは縫製工場もおなじ。ご存知のようにスウェットは布帛の生地とはちがい、伸縮する素材です。伸びる生地を正確に縫い合わせる、と頭ではわかっていても、生地が伸びていく感覚は手で感じて覚えるしかない。あらゆるケースに対応するための発想も、経験のなかで積み重ねた知識や感覚がなければ思いつけません。こうした感覚的な技術の伝承って、流れが一度でも途絶えたら永遠に失われてしまうものなんです。

僕らが本当に伝えるべきこととは――

――これからのモノ作り、消費活動についてどう考えますか?

松本 モノ作りの場におけるマニュアル化というのは、ある程度は仕方ないと思うんです、現代においては。でもスピードや便利さを追求するなかで、こぼれ落ちてしまった大事な感覚はあると思う。ショッピングにしたって、わざわざお店に行かずとも、クリックひとつで購入、翌日には手元に届く、が当たり前になりつつある。

でも僕がまだ学生だった頃って、憧れのショップというものがあって、置いてある商品ももちろんすてきなんだけど、なにより店員さんが商品の特性だけでなく歴史や逸話まで、あらゆることを教えてくれるんです。

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そうすると商品に対する愛着が生れるというか、価値感が変わってくるんですよね。それは生地の特性や縫製の技術、歴史から時代背景ふくめ、売り手がモノをちゃんと知ってないとできないんです。ルモアズもそうありたい。新しい時代に合わせた新しい形態のひとつのショップとして、デザインや価格だけじゃなく、その商品についてちゃんと伝えてきたいですね。

鈴木 僕らみたいなニッチなモノ作り……スウェットの伝統やオリジンを守り継いでいくことって、着心地の感想については十人十色でいいと思うんです。でも伝統やオリジンについては決まっていることだから、十人十色の理解ではならないんです。僕がすべてのお客様に直接お話しできればいいけど、それは物理的に不可能ですから、こうして広くお話しできる機会には、ちゃんと“本当に伝えるべきこと”を伝えたい。

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本当に伝えたいことっていうのは、現場のひとたちが、どういう想いで、どういうふうにモノを作っているのか、ということです。どれだけの想いを込めて作られたものなのか、一番大事なことってそこだと思うんです。あらゆることにおいて合理性を求める現代で、僕らのモノ作りも、価値感も、逆行しているのかもしれません。でも僕はこれからも工場の職人さんたちに支えられながら、時代に則した方法で主張しつづけていこうと思います。

――ありがとうございました。


いよいよ、3月7日(水)ルモアズにて販売開始。お楽しみに!

           
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