彫刻を作るんじゃなく空間を作る意識でいると、形に対する考え方も変わります|MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|彫刻を作るんじゃなく空間を作る意識でいると、形に対する考え方も変わります

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

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B-BOY彫刻家・TAKU OBATA氏に聞く(1)

“B-BOY(ブレイクダンサー)彫刻家”を名乗り、ヒップホップ4大要素のひとつであるブレイクダンスをモチーフとした作品を作り続けるアーティスト、TAKU OBATA。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了後、国内外で数々の作品を発表。昨年は現代美術家の梅沢和木と東京・外苑前のワタリウム美術館で展覧会「梅沢和木 × TAKU OBATA 超えてゆく風景」を開催。これを記念して彫刻作「B-GIRL Down Jacket NAGAME」を3Dスキャンし、スケールダウンした立体作品エディションが100体限定でメディコム・トイから発売されることになった。今回はOBATA氏のアトリエのある埼玉・所沢で、「彫刻家を目指すきっかけ」「自作に込めた思い」「これから彫刻で表現したいこと」についてお話をうかがった。

Photographs by OHTAKI KakuText by SHINNO Kunihiko

日本では、B-BOYはこういう見え方をしてる

――B-BOYをモチーフとした彫刻作品は世界でも珍しいですね。

TAKU OBATA そうですね。グラフィティは多いんですけれども。

――こうして実際に「B-GIRL Down Jacket NAGAME」を目の前にすると、圧倒的な存在感があります。

TAKU OBATA 人間に見えるけど、よく見たら人間じゃないという不思議さがありますよね。空間を生み出すために、なるべく人間と等身大かそれ以上にしないといけないという思いがあって。これより小さくなると、こっちが支配する側になるから。

ワタリウムで展示したもう1体は、もっとでかくて2m30cmあるんです。ただ立ってるだけでも動きを感じられるように、ダウンジャケットの水平ラインを前後でずらしたり、結構複雑なことをやってます。

――この作品は1本の木を彫ったものですか?

TAKU OBATA そうです。彫刻刀とノミで彫っただけで、研磨は一切しなくてもこれだけツルツルになるんです。あと、横から見ると分かるんですけど、ちゃんと人体の体幹と同じカーブになってるんです。そうしないと、これだけの大きさのものを人間と同じように立たせるのは難しい。

メディコム・トイ

木彫作品「B-GIRL Down Jacket NAGAME」

よく着ている服とかポーズが面白いと言われますけど、基礎があっての作品という感じはあります。

メディコム・トイ

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――いつ頃からブレイクダンスを始められたんですか?

TAKU OBATA 中学・高校はバスケ部だったんですけど、高校の時に兄貴がダンスを始めたことがきっかけです。それから地元の友達とUNITYSELECTIONSというダンスチームを作って、みんなで航空公園とか所沢の駅前にマットとラジカセを持っていって練習して、ショーをやったりバトルに出たり。

B BOY PARK(1997年から2017年まで毎年夏に東京・代々木公園野外ステージで行なわれていた日本最大規模のヒップホップのブロックパーティ)で育った感じですね。’80年代のオールドスクールスタイルを掘っていくと、映画『ワイルド・スタイル』(’82年)や『ビート・ストリート』(’84年)に出ているダンサーの格好がすごく細身なんです。LEEのジージャンにジーパンとか。その感じが衝撃的で。

ダンスもフットワーク重視でかっこいいし、これが本当のヒップホップの感じなんだって。なので彫刻はみんな細身です。

――バスケやダンスをやりながら東京藝術大学に進学するのは大変ではなかったですか?

TAKU OBATA 高校の頃は彫刻なんて全然考えてなかったんです。とりあえず大学に行きたくて。最初はダンスの実技で受けられるところを探して受けたんですけど、周りがバレエダンスの女の子ばかりで自分ひとり場違い。

それで一浪して立川美術学院という美術系予備校の映像科に入りました。その授業で見せられたヤン・シュヴァンクマイエル(チェコスロバキアの映像作家)のクレイアニメが衝撃的で、自分でもやりたいと思ってダンスがモチーフのクレイアニメを作ったんです。そこからデッサンと彫刻をはじめたらすごくハマって。

B-BOYの彫刻があったら面白いに違いないと思って、二浪目から彫刻科志望に変えたら藝大の一次に受かって。一次受かると特待生として予備校が半額になるから三浪して、ようやく合格したという。

――藝大でのなかでも、彫刻科は特に狭き門ですから。

TAKU OBATA 俺のときで倍率20倍くらいですね。彫刻科の受験はデッサンと塑像だけできればいいっていう一番シンプルなものだったので。結局、予備校の3年間がかなり濃厚だったんですよね。デッサンもめちゃくちゃやったし、塑像もやったし。

自分はすごく恵まれているなと思うんです。最初からB-BOYをモチーフにした彫刻作品を作りたいというのは決まっていたので、大学入ってから迷いなく作れる環境に行ったという感じです。

さらに木彫にすることで、他にやっている人がよりいなくなることもよかったし、あとは日本感ですね。初期はFRPでも作っていたんですけど、B-BOYはアメリカの文化だし、それをアメリカの素材で表現しても面白くない。木彫なら誰もやってないし“日本では、B-BOYはこういう見え方をしてる”っていうオリジナル表現になると思って。B-BOY彫刻家を名乗ってるのは、敢えて前に出すことで、そこから俺が逃げないように縛っているという感じです。

――ダンス経験があることも強みですよね。

TAKU OBATA どういう動きが好きか、どこがかっこいいかというのは、自分の中で分かっているので、理想のものを作っていくっていう感じです。実際に真似しようとしてもできないポーズもあるんですけれども、人体の構造的には、一応は合ってます。いまも遊び程度ですけど、UNITYSELECTIONSにMC仁義(GERU-C閣下)が加わった「HIPHOP戦隊B-BOYGER」というパフォーマンス集団をやってます。やっぱりダンスをやってなかったら彫刻もやってなかったし、作りたいものも決まっていなかったので。

Page02. フィギュアに関してはずっと渋ってきたんです