Cや3じゃない、高級セダンやスポーツセダンたち Part 3
CAR / IMPRESSION
2019年3月28日

Cや3じゃない、高級セダンやスポーツセダンたち Part 3

Audi A8 60 TFSI quattro|アウディ A8 60 TFSI クワトロ

自動運転レベル3への長い道

毎年2月に日本輸入車組合(JAIA)がプレス向けに開催する試乗会からの一気乗りリポート。セダン編の第3弾として、2018年にフルモデルチェンジを受けたアウディのフラッグシップモデル「A8」のショートインプレッションをお届けする。

Text & Photographs by HARA Akira

搭載されるはずだった「レベル3」自動運転機能

オールアルミボディをまとった初代に始まり、「技術による先進」を掲げてきたハイテクの塊であるアウディのフラッグシップサルーン「A8」。2018年9月にフルモデルチェンジし、4代目としてデビューする際の目玉機能として世界中にアピールしたのが、量産車初の「レベル3」自動運転機能搭載車という肩書きだった。

ちなみにレベル3の自動運転とは、「自動車専用道路など限られた条件下ですべての操作をシステムが行い、緊急時はドライバーが操作を行う必要がある」というもの。常にドライバーがクルマの状態を監視し続ける必要があるレベル2とは異なり、一般の人が「自動運転」としてイメージするのがレベル3以上のドライブといえよう。

搭載するはずだった「アウディAIトラフィックジャムパイロット」と命名されたアウディA8のそれは、高速道路上などでドライバーはステアリングから手を離し、風景を楽しんだりビデオを見たりという、運転以外の行為が可能になるというものだ。「はずだった」というのは、残念ながらこのシステムは本国のドイツでも日本でも法整備が間に合わず、結局世界のいずれでも使用することができないために、新型A8には搭載されないままの発売となってしまったのである。

今回試乗した黒に近いヴェスヴィオスグレーメタリックカラーのA8は、「55」「60」という2グレードのうちトップグレードとなる60シリーズで、搭載するエンジンは最高出力338kW(460ps)/5,500rpm、最大トルク660Nm/1,800-4,500rpmを発生する排気量4.0リッターのV型8気筒直噴ツインターボ(ちなみに55は3.0リッターV6エンジン)。8段ATとクワトロシステムを介して4輪を駆動する。

欧州車のトレンドである48V電源システムによるマイルドハイブリッドシステムや、55km/h以上の高速巡航時にエンジンを停止するコースティング機能を搭載。足回りには、後輪が65km/h以下で前輪と逆に最大で5度、65km/h以上で前輪と同じ向きに最大2度後動く4輪操舵システム「ダイナミックオールホイールステアリング」をオプションで装備していた。

Page02. 5メートル超のボディサイズを感じさせない4輪操舵システム

Audi A8 60 TFSI quattro|アウディ A8 60 TFSI クワトロ

自動運転レベル3への長い道(2)

5メートル超のボディサイズを感じさせない4輪操舵システム

走り出してみると、5,170mmの全長、3,000mmのホイールベースを感じさせない身のこなしを見せてくれ、後輪操舵が効果を発揮しているのがよく分かる。介入は自然に行われるので、普通にステアリングがよく切れるクルマに感じられるところに、アウディの技術の高さが証明されている。カタログを見ると、通常の回転半径が5.7メートル、装着車で5.3メートルとなるのでその差は歴然だ。

また、レベル3自動運転実現のため量産車として初めて搭載したレーザースキャナーを始め、レーダー、超音波センサー、カメラなど最大23個にもなるセンサー類が、レベル2運転支援システムである「アダプティブドライブアシスト」を支えている。

ステアリングポスト左奥にあるコラム式レバーで追従運転をONにしてみると、システムが作動する様子がデジタルメーターのセンター部分に大きく表示され、前走車を正確にトレースし始める。車線中央の維持やコーナリング時も、ステアリングに触れる手に車両の意思が伝わるようななめらかなトルクが感じられ、高度なコントロールが行われていることが確認できた。

搭載予定だったAIによる自動運転スイッチは、センターコンソールのシフトレバー前方という一等地に設置するはずだったとのことで、試乗車ではその部分が恨めしげな黒いプラスチックカバーになっていた。

インテリアは、ダッシュボードやコンソール部分をすべて平面のグラスエリアとし、パワーオンでメーター類や各種スイッチが浮かび上がる「アウディバーチャルコックピット」とすることで先進イメージが強調されており、未来的な空間となっているのも特徴。あたかも最新のクールなビジネスルーム然としていて、こうした点はメルセデスのSクラスとは成り立ちが異なるところである。

価格は1,510万円。ルマン24時間レースで培ったLEDレーザーライトシステム、後輪操舵システム、パノラミックルーフ、23スピーカーのバング&オルフセンサウンドシステムなど多くのオプションを搭載した試乗車は、1,857万円のプライスタグを掲げていた。

問い合わせ先

アウディ コミュニケーション センター

0120-598-106

           
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