POGGY’S FILTER|vol.2 ジェリー・ロレンゾさん

POGGY’S FILTER|vol.2 ジェリー・ロレンゾさん

POGGY’S FILTER

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UNITED ARROWS & SONS(ユナイテッドアローズ&サンズ)のディレクターであり、世界のファッションシーンからも注目を浴びる小木“POGGY”基史氏をホストに、2019年、ついにスタートした「POGGY’S FILTER」。タイトルの通り、POGGY氏のフィルターを通して、ファッションを中心に様々な分野で活躍する人物と対談するこの連載に今回登場するのは、LA(ロサンゼルス)を拠点とするブランド、Fear of God(フィア・オブ・ゴッド)のデザイナーであるJerry Lorenzo(ジェリー・ロレンゾ)。ストリートウェアの頂点を極めたフィア・オブ・ゴッドでの成功はもちろんのこと、様々なブランドやKanye West(カニエ・ウェスト)、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)といったVIPたちのプロジェクトにも携わり、今やラグジュアリーストリートシーンの中の台風の目ともなっている存在だ。Nike(ナイキ)との新たなプロジェクトである「Nike Air Fear of God」コレクション発表のために、昨年12月、緊急来日を果たした彼を南青山のNIKELAB MA5.にて直撃した。

Interview by KOGI “Poggy” MotofumiPhotographs & Text by OMAE Kiwamu

アーバンファッションにラグジュアリーを取り入れる

POGGY 今日は忙しいところありがとう。2014年に初めて会った時、LAにあるソーホー・ハウスの駐車場で、ジェリーの車のトランクからフィア・オブ・ゴッドのサンプルを出して見せてくれたのを覚えてる?

ジェリー・ロレンゾ(以下、ジェリー) もちろん! あの時のことはよく覚えてるよ。

POGGY あの時、フィア・オブ・ゴッドのブランドコンセプトの一つとしては「No Fashion Show, No Exhibition, No Trade Show」(=コレクションの発表の場としてファッションショウは行わず、展示会、トレードショウにも出さない)だと教えてくれたよね。今でこそ、従来のファッションシーズンとは全く異なる時期に開催されているComplexCon(コンプレックスコン)をはじめ、今までのファッション業界のやり方とは異なる形でコレクションを発表する流れが多くなってきているけど、なぜ、あの時代にそのようなコンセプトにしようと思ったの?

ジェリー あの頃はファッション業界やラグジュアリー業界から自分が歓迎されていないといつも感じていて、それがずっと不満でもあった。けど、彼らに受け入れられる為に何かをやるっていうのも嫌だった。それで、自分の声を聞いてくれるような人や自分の顧客に対してブランドを広げるために、従来行われいてたファッションショウやトレードショウを通さずにコレクションを届かせるっていうコンセプトを思い付いたんだ。

POGGY 自然にそういったコンセプトが出てきたということ?

ジェリー そう。戦略的に考えたのではなくて、自然に生まれたアイデアでした。

POGGY フィア・オブ・ゴッドがブレイクし始めた頃、ストリートシーンではGIVENCHY(ジバンシイ)やRick Owens(リック・オウエンス)のような、黒を基調としたモードな服を取り入れるのがトレンドで、その中でアメリカンオーセンティックなウェアを新しく解釈したフィア・オブ・ゴッドの登場はとても新鮮でした。

ジェリー そう言ってもらえて嬉しいよ。

POGGY なぜ、そのようなデザインのアプローチをしようと思ったの?

ジェリー 実は今名前の出た、リック・オウエンスからの影響が大きい。リックのデザインの最も好きなところは、ヒップホップをイメージさせる全体のシルエットやバランスで、例えばAllen Iverson(アレン・アイバーソン)を彷彿させるようなバギーショーツや丈の長いタンクトップ、それから長い紐のついたドレイプされたコートといったアイテムがそう。彼は自分自身のレンズを通して、アーバンファッションの中にラグジュアリーを取り入れることを可能にした。日常的に履いているようなスウェットパンツのようなアイテムが、ラグジュアリーなものになるっていうのは、自分にとってもすごくエキサイティングなことだった。ラグジュアリーを形にするために、シルエットやバランスを綿密に計算して、そのための製造方法まで考える。Hedi Slimane(エディ・スリマン)がSAINT LAURENT(サンローラン)のコレクションでやったグランジスタイルも同じで、正しいレンズを通せば、いろんなものをラグジュアリーとして提示することが出来る。彼らのようなデザイナーから学んだ手法によって、自分のインスピレーションのもとであるヒップホップやロックンロール、グランジといった、いわゆるアメリカンなものをラグジュアリーとして形にしたのがフィア・オブ・ゴッドなんだ。

POGGY フィア・オブ・ゴッドの服はシンプルでベーシック。誰がどのように着るかで見え方が変わり、そこにカルチャーが吹き込まれていくんだと思う。ブランドのターニングポイントの一つとして、『GQ』のファッションページでカニエ・ウェストがフィア・オブ・ゴッドのコレクションを着用したり、あるいはジャスティン・ビーバーがフィア・オブ・ゴッドを着た事によって、より多くの人たちに魅力が伝わった気がするんだけど、それも戦略の一つだった?

ジェリー いや、それは戦略としてやったことではないよ。カニエやジャスティンといった人たちによってブランドが定義されているんじゃなくて、あくまでも誰がブランドをやっているかっていうことでブランドの価値が決まるものだと思う。実はジャスティン・ビーバーの<Purpose World Tour>でスタイリングやマーチャンダイズを手がけた時は、少し不安もあった。友人としてジャスティンを尊敬していたけども、当時、彼はまだファッションに関しての影響力は無かったし、時々、過ちを犯してしまうような普通の若者でもあった。けど、彼はそんな自分自身のイメージを変えようと努力していたから、自分の洋服やスタイリングに関する才能を通して、何か手助けを出来るんじゃないかって思ったんだ。それでも、頭のどこかでこのプロジェクトによって自分も何かを失うんじゃないか?っていう不安があったけど、結果的には全てが上手くいって、今もブランドはこうやって残っています。

Page02. スニーカーによって完成したフィア・オブ・ゴッドのストーリー