アウディとイタリアンブランド|Audi
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2014年12月25日

アウディとイタリアンブランド|Audi

Audi|アウディ

アウディとイタリアンデザイン

アウディの年次記者会見前夜、多くのジャーナリストを招いて盛大におこなわれたレセプションに小川フミオ氏が出席。ランボルギーニ、イタルデザイン ジウジアーロ、ドゥカティなど、イタリアの名だたるブランドを傘下におさめたアウディグループを取材した。

Text by OGAWA Fumio

自然にイタリアブランドが集った

ランボルギーニ、イタルデザイン、ドゥカティ。どれも一流のブランドだが、いまやアウディの傘下で活躍している。

2013年にドイツ インゴルシュタットのアウディ本社で開かれた記者会見で、アウディのルーパート・シュタートラー取締役会会長は、スーパースポーツカーのランボルギーニ、数かずの斬新なデザインを生み出してきたイタルデザイン、そして高性能バイクをつくるドゥカティの3社を傘下に収めることを発表した。

Lamborghini Veneno|ランボルギーニ ヴェネーノ

Lamborghini Veneno|ランボルギーニ ヴェネーノ

Ducati 1199 Panigale R|ドゥカティ 1199 パニガーレ R

Ducati 1199 Panigale R|ドゥカティ 1199 パニガーレ R

SUVコンセプト「ウルス」が話題をよんでいるランボルギーニは、くわえて2013年3月にスイス ジュネーブで開催された国際自動車ショーで、300万ユーロ(約3億6,300万円)で3台しか限定生産されない「ヴェネーノ」を発表したばかり。

「なぜ、アウディの下にすべてイタリアのブランドを統括することになったのか、というと、自然にこうなったというしかないです」

シュタートラー会長は、単独インタビューの席で語ってくれたのだった。

Audi|アウディ

アウディとイタリアンデザイン(2)

デザインとは芸術のひとつ

記者会見を控えた前日の晩、ミュンヘン市内の1920年代の郵便局の配送所を改装した建物で多くのジャーナリストを招いての盛大なレセプションが開催された。そこで、イタリアブランドとのシナジーが語られた。

テーブルについているジャーナリストたちを前にステージにスモークがたかれた。登場したのは1966年発表の伝説のスポーツカー、ランボルギーニ 「ミウラ」。美しい黄色い車体をもつモデルで、エンジンをかけて実走行で登場した。

巨大な会場にもかかわらず濃い排気の匂いが充満したが、「ミウラの匂いなら仕方ないね」と英国人ジャーナリストは笑った。つづいてSUVのコンセプト「ウルス」
が、くすんだ赤をベースにしたペイントで塗られたシャープなデザインをひけらかすように現れた。

それから、ジョルジェット・ジウジアーロが登壇。“イル・マエストロ”(巨匠)とよばれ、数々の名車を手がけてきた実績をもつ、もはや歴史上の人物だ。

フォルクスワーゲンやアウディとも縁が深く、初代「シロッコ」や初代「ゴルフ」をはじめ、1988年には、アウディ クワトロのシャシーを使った「アズテック」等のユニークなスポーツカーコンセプトも記憶に残っている。今回は、73年に発表したコンセプトモデル、「アッソ ディ ピッキ」が持ち込まれた。初代シロッコのデザインソースにもなったといわれているモデルだ。

「イタルデザインとどのようなコラボレーションをするか、すぐには答えられないが、基本的にはスタジオ同士でアイディアを交換していこうと考えている。これは若いデザイナーにもいい刺激になって重要なことなことだと考えています」

前出のデザイン部長、エッガー氏は、ジウジアーロ氏の隣に立ちそう語った。

いっぽう、イル・マエストロはデザインがいかに大切な要素かを強調。

「デザインとは芸術のひとつ。たとえば音楽家ならば7つの音だけで美しいメロディをつくります。デザイナーたちも意識しているしていないにかかわらず、音楽のように具体的には表現しようのない美をつくりあげる能力を持っています。もちろん市場の要請に応えるのがプロの仕事ですが、そのなかに自動車への愛がなくてはなりません。その共通理解をベースに、私たちは共同作業をしていきます」

Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス

Lamborghini Urus|ランボルギーニ ウルス

Lamborghini Veneno|ランボルギーニ ヴェネーノ

Lamborghini Veneno|ランボルギーニ ヴェネーノ

カロッツェリアというと、美しいクルマをデザインするのが仕事のようにおもわれがちだが、イタルデザインはとりわけ、技術的なコンテンツをコンセプトカーに盛り込んでの提案力に長けていることで定評があった。その豊かな経験が、アウディのなかで活かされていくことが期待されているのだろう。

「ランボルギーニとは長いシナジー(1999年にアウディによって買収)があるし、イタルデザインとは(フォルクスワーゲンが同社を買収した2010年いらい)デザイン開発でサポートを受けています。イタリアのよさは、エモーションをうまく表現する力があり、デザインに個性があり、そして創造的であることです」

シュタートラー会長はインタビューの席上で、なぜイタリアにこだわるか、と尋ねたときに、答えてくれた。

Audi|アウディ

アウディとイタリアンデザイン(3)

世界最高のバイクを探していたらドゥカティに出会った

会場では、最後を飾ったのが、ドゥカティだった。モトGPで活躍する2人のライダー、ニッキー・ヘイデンとアンドレア・ドヴィツィオーゾが、ドゥカティ「デスモセディチ」にまたがって舞台に出てきた。1リッターエンジンの突き抜けるような排気音が、高い天井でこだまして、場内の気分を盛り上げた。

「2012年秋にアウディがドゥカティを買収したのは、アウディのDNAに二輪があるからです。なにしろ、アウディの4つの輪のうちの2つ、DKWとNSUというメーカーはかつて二輪をつくっていた歴史をもっているためです」

シュタートラー会長は述べる。

「そこで世界最高の二輪メーカーを探したところドゥカティと出会ったのです」

アウディ(および親会社のフォルクスワーゲン)の役員はみな二輪が好きで、結局うまくいかなかったが、高性能二輪をつくるスズキ自動車との業務提携の話は、社内では大いに歓迎されたと聞いたことがある。美しい高性能バイクにかけてはスズキに勝るとも劣らないドゥカティとのきずなが結ばれるのは、同様に歓迎されたことは想像に難くない。

Ducati Streetfighter 848|ドゥカティ ストリートファイター 848

Ducati Streetfighter 848|ドゥカティ ストリートファイター 848

Ducati 1199 Panigale R|ドゥカティ 1199 パニガーレ R

Ducati 1199 Panigale R|ドゥカティ 1199 パニガーレ R

「実質的なシナジーですか? いろいろあるとおもいます。たとえば、軽量化技術とか。私たちの傘下に入ったとはいえ、できるだけ独立性を保ってもらうのがポリシーです。そのことによって、これまでつちかってきた技術などのコンテンツに磨きをかけ、将来的に共同であたらしいことができるのに期待しています」

アウディも属するフォルクスワーゲン グループもデザインを統括するワルター・デ・シルバ氏
はイタリア人だし、アウディのデザイン部長、ウォルフガング・エッガー氏も、2000年代はアルファロメオで「8Cコンペティチオーネ」を手がけるなどした経歴をもつ。意外にも、アウディにはイタリアンコネクションがしっかりあるのかもしれない。

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