連載|美しきBoutique city、アデレードへ Vol.3

連載|美しきBoutique city、アデレードへ Vol.3

LOUNGE TRAVEL

伝統にとらわれない自由なワイン造り
オーストラリア最大のワインカントリーへ

フード&ビバレッジの世界で、ここ数年、存在感を増しているオーストラリア。去る6月19日にスペインのビルバオで発表された「世界のベストレストラン」でも、100位までに、オーストラリアからBRAEとATTICA、2軒のレストランがランクインしている。この国の美食の特徴は、個性と多様性だ。広大な大陸は、固有の食材にも恵まれており、そこに移民たちが異なる文化背景を持ち寄ることで、独創的な美食を創り出している。気候と土壌のバリエーションに恵まれていることから多種多様なワインを造ることができるのも魅力だ。世界屈指の良質なワインが多く輸出されており、数々の受賞歴を誇る世界的に有名な銘柄も誕生している。そんななか、ワインカントリーとして近年注目を集めているのが、アデレードを州都とする地中海性気候の南オーストラリア州だ。

Composition & Text by MAKIGUCHI June

VOL.3 FOOD & WINE

豊かなワイン文化が育まれているオーストラリア。国内で産出されるワインの、およそ70%が南オーストラリア州産だ。日照時間が長く、降水量も少ないうえ、昼夜の寒暖差が激しい。代表的なブドウ品種はシラーズで、フルボディの赤ワインに定評がある。オーストラリアワインといえばシラーズを思い浮かべる人が多いのもこのためだ。白なら、リースリングやシャルドネの人気が高い。フルーティで味わい豊か、それでいて凛々しさもあるワインも多く、バランスの良さが魅力だ。

d'Arenberg Winery, McLaren Vale, SA

©d’Arenberg

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オーストラリアワインの歴史は、200年ほどと決して長くはない。1788年、イギリスからやって来た初代総督アーサー・フィリップがシドニー到着時にブドウ樹を持ち込み、その後、“オーストラリアワインの父”と呼ばれるジェームズ・バズビーによりブドウ栽培の礎が築かれた。ヨーロッパからの移民たちは、新天地での馴染みのない気候に悩まされつつも、独自のワイン文化を育んできた。伝統にとらわれずワインを愛するという精神が、手軽で親しみやすいボックス入りのカスクワインや、保存しやすいスクリューキャップのワインなどの進化を生んでいると言えよう。かつては“ニューワールド・ワイン”として手軽な低価格ワインが主軸だった時期もあったが、今やワイン大国のイタリアやフランスにも劣らず高いクオリティを誇るプレミアムワインで美食家たちをも魅了している。

もちろん、ワインの生産が盛んとなれば、美食にも事欠かない。多くのワイナリーがセラードアでのテイスティングだけでなく、自社経営のレストランでペアリングを提供している。

世界に名を馳せる銘醸地バロッサ・バレー

そんな楽しみを存分に味わうために、真っ先に訪れたいのが、国内ワインの約60%という豊かな生産量を誇る銘醸地バロッサ・バレーだ。アデレードから車で60分程度の距離にあり、ここはオーストラリアでも最古のワイン生産地のひとつ。オーストラリアワインの聖地とも呼べる場所だ。オーストラリアワインの代表格「ジェイコブス・クリーク」はこの地で最初の商用ワイナリー。姉妹ブランド的存在で、1983年に設立されたプレミアムワインのブランド「セント・ヒューゴ」で、バロッサの伝説的ワインメーカー、ヒューゴ・グランプの輝かしい功績とワイン造りの精神を体感するのもいい。事前に予約を入れると、同じ畑で違う年に取れたシラーズを飲み比べという特別なテイスティングも可能だ。

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1849年設立の「ヤルンバ」は、6世代150年以上にもわたり続くオーストラリアで最も古い家族経営ワイナリーのひとつ。家族の結束とゆるぎない信念、深いクラフトマンシップへの敬意のもとに作られるワインにも定評があるが、世界で4件しかないという自社での樽作りでも有名。世界各国から独自に集めたワインの秘蔵コレクションやワイン貯蔵施設を改修したファンクションルームも、特別なガイドツアーなら参加できる可能性もある。

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ユニークなテイスティング経験をお望みなら1850年創業の「セッペルツフィールド・ワインズ」へ。ここには、“Taste Your Birth Year”というプログラムがあり、自分の生まれ年のワインを樽から直接グラスに注いでもらい飲むことができる(一人AU$80.00)。ワインは1878年から生産されており、それ以降のすべてのシングル・ヴィンテージが樽で残されている。まさに生きたワイン博物館なのだ。樽は地下ではなく、メインビルディング2階の「センテニアル・セラー」に置かれているため、歳を経るごとに凝縮された濃厚な味わいを増していく。とても特別な体験なので、ぜひ事前に予約してから出かけたい。また、併設されているレストラン「フィノ・アット・セッペルツフィールド」では新鮮な地元食材を使った料理が堪能できる。もちろん、ワインと合わせて楽しみたい。

Seppeltsfield Wines, SA

©Tourism Australia

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バロッサ・バレーには、このように個性的な約150ヶ所のワイナリーがある。毎年8月に開催される「バロッサ・グルメ・ウィークエンド」や奇数年に開かれる「バロッサ・ヴィンテージ・フェスティバル」などに参加するのも楽しそうだ。

ABOUT
牧口じゅん

牧口じゅん|MAKIGUCHI June 共同通信社、映画祭事務局、雑誌編集を経て独立。スクリーン中のファッシ […]