バーニーズ ニューヨークが見出した新鋭ブランド|BARNEYS NEW YORK
FASHION / NEWS
2018年8月6日

バーニーズ ニューヨークが見出した新鋭ブランド|BARNEYS NEW YORK

BARNEYS NEW YORK|バーニーズ ニューヨーク

ミレニアル世代のリアルはofflineにあり

Fashion As Musicを掲げて展開する、今季のバーニーズ ニューヨーク。シーズン終盤となった先日、新宿店では新ブランドofflineのローンチイベントが開催された。新世代を代表するラッパーのHIYADAMとYOUNG FREEZによるライブパフォーマンスが披露され、会場は盛況となった。前評判すら耳にしたことのない日本の無名ブランドが、華々しいデビューを飾ることができたのはなぜだろう? メンズファッションディレクター中箸氏を介してofflineを手がける若きデザイナーのmasa氏、柿沼氏にインタビューを試みた。

Text by KAWASE Takuro

――お二人それぞれのキャリアを簡単に教えてください。

masa 2007年にカリフォルニアの大学へ進学するために渡米し、卒業後はニューヨークへ移住しました。当時、ストリートブランドの中でも勢いがあったSABIT NYCでデザインアシスタントの職を得て、服作りのキャリアをスタートしました。2014年、東京に戻ってからは、ショールームのコーディネイターとして活動しています。現在ではパリ、ニューヨーク、ロサンゼルスを飛び回り、海外ブランドの日本進出に携わっています

柿沼 20歳にジュエリー専門学校を卒業後、Shinalized(シャイナライズド)というブランドを立ち上げ、デザイナーとしての活動を開始しました。当時はストリート寄りのデザインが多かったのですが、もっと幅広いアプローチをしたくなり、5年前にVacation Jewelryへ改名しました。シルバージュエリーを中心としたプロダクトを手がけながら、アーティストのツアーグッズや他ブランドのジュエリー制作を請け負うこともあります

――お二人が出会うきっかけは?

masa (柿沼)昌一とは、10代の頃から渋谷や六本木などで遊んでいた仲間で、NYにいた頃もよく遊びに来てくれました。先輩や仲間には、ラッパーやDJといったミュージシャンや、映像やグラフィックを手がけるクリエイターが多かったんです。だから、ヒップホップをベースにしたストリートカルチャーの影響を自然に受けました

柿沼 自分も15歳から20歳手前までラップをやっていて、音楽活動を通じて仲間が広がって行きました。そうした中で、共通の知人であるYOUNG FREEZというラッパーを通じてmasaと出会いました

――お二人とも同じカルチャーを共有しながら成長し、現在は軸となる別の仕事をやりながらofflineを立ち上げたのですね?

masa 2年前にパリのファッションウィークを二人で巡っていたとき、"洋服とジュエリーを融合させたブランドがあったら面白いよね"という話をしたことがきっかけです。最初は遊び半分の感覚で、チャンピオンのスウェットをボディにシルバージュエリーを組み合わせた試作品を作りました。それが、周囲の友達を中心に広まって、多方面から評価してもらえるようになり、本腰を入れるようになりました。仲間内のラッパーたちが、アンダーグラウンドから徐々に有名になり始めたタイミングと同時だったことも追い風になりました

――ブランド名はあえてネットを使わないという意味ですか?

柿沼 ECサイトをやらないとか、アンチSNSという訳ではありません。僕たちは、固定電話からガラケーそしてスマホへ、コミュニケーションツールが移行してきたことをリアルに体験してきた世代です。だからアナログとデジタル、オンラインとオフラインの両方の良さを知っています。ただ最近は、常に繋がっていると面倒なことも多く、情報が溢れすぎて疲れていることは確かです。だからこそ、顔を付き合わせてコミュニケーションすることの重要性を意識するようになりました。ネットやSNSのツールとしての利便性を活かしながらも、オフラインの自分たちのリアルを伝えていこう、というのがコンセプトです

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――アイテムそのものは非常にベーシックですが、90年代的なシルエットと着こなし、グラフィックが特徴的でした。こうしたデザイン要素はシーズン毎に変わっていくのですか?

masa 自分たちのルーツであるヒップホップカルチャーをベースにしながら、今の社会に対する疑問やメッセージを込めてデザインしています。中でもグラフィックは、特に有効な手段だと位置付けています。正式なデビューとなる今シーズンはアーバンリゾートがテーマで、ジュエリーを邪魔しないよう、全体像から考えてデザインしています

柿沼 masaがデザインした服をキャンバスに見立てて、ジュエリーデザインを考えています。シルエットや素材といったさまざまな制約があるからこそ、面白いアイデアが生まれるし、互いのデザインを活かすことができると

――正式なデビューコレクションをバーニーズ ニューヨークで展開できたことは、非常にラッキーですね

masa 誰もが知っている有名ショップで、しかも一流ブランドばかりのバーニーズで取り扱っていただけるのは、本当に光栄です。普段から接している仲間はもちろん、海外からも多くのお祝いや応援のメッセージが届きました。とにかく、中箸さんに見つけてもらったことが大きいですね

中箸 今季の大きなテーマでもある、音楽とファッションの関係性に注目しながら、有名無名を問わずたくさんのブランドを見てきました。そこで出会ったのがofflineで、バックボーンにあるヒップホップの要素が響いたんです。さらにミレニアル世代のデザイナーに注目していたことも重なりました。二人のデザイナーがそれぞれ別の仕事を持ちながら、ブランドを始めたというのも今っぽい感覚で面白いと思いました。そうして、生まれたてのブランドをゼロからやってみようと思い、今回のローンチイベントに踏み切りました

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――現在のファンションシーンをどのように見ていますか?

masa Off-Whiteのヴァージル・アブローがルイ・ヴィトンのディレクターになったことが象徴的ですが、ストリートの出身者がハイファッションに進出しています。ファッションスクールに通わず、独学で服作りを始めたデザイナーが活躍できることを証明してみせたのですね。ヒップホップのコミュニティを広げてファッションを発信してきた姿勢に共感できるし、自分たちの感覚と似ていると思っています

――今後のofflineとしての展望や、ブランドのあり方についてどう考えていますか?

masa もちろんヴァージルとはビジネスの規模感が違いますし、すぐにうまくいく訳ではありませんが、自分たちにもチャンスはあるはずだと信じています。自分も仲間のラッパーをスタイリングすることもあるし、少しずつ自分たちのコミュニティを広げて、offlineを知ってもらえればと。それから、カルチャーだけを打ち出すだけでは長続きしないので、日本の伝統技法や素材を取り入れた服作りそのものも強化していきます

柿沼 本業がありながらofflineでも活動する、この距離感が非常にうまくいっていると考えているので、無理せずマイペースにやっていきたいですね。従来のファッション業界のサイクルに追従するのではなく、その時々で自分たちが面白いと思ったことをクリエイションに落とし込み、発表していきたい。自分たちの勢いとバランスを取りながら、徐々に取り扱うアイテムの点数を増やしていくのが理想です

EVENT
バーニーズ ニューヨーク新宿店8Fにて、offlineのPOP UP STOREを開催中。8/12(日)まで

問い合わせ先

バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター

0120-137-007

https://www.barneys.co.jp/

           
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