YOKOとTAKASHIのバーゼルワールドどうだった?|BASELWORLD2018
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2018年8月1日

YOKOとTAKASHIのバーゼルワールドどうだった?|BASELWORLD2018

BASELWORLD2018|バーゼルワールド2018

YOKOとTAKASHIのバーゼルワールド取材日記(1)

600社が撤退したって、すごいよね

TAKASHI YOKOさん、今回のバーゼル取材は何年ぶり?

YOKO 実は何年ぶりか忘れちゃっているくらい。少なくとも改装前です。

TAKASHI そしたら、実際に見て驚いたんじゃない? あの大きな穴!

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© BASELWORLD2018

YOKO 思った以上に時間ごとに表情があって、あー結構、いいなぁって思った。写真見てただけだからなめてた。

TAKASHI またまたそんなオシャレな表現使っちゃって。でも新聞報道では規模縮小でしょんぼりしてたって広まってるみたいだよ。

YOKO それは感じた。人の数は一般客も含めてだけど、もっとワッサーな感じだったから。それとブースひとつずつがでかくなってて、

この辺にしょんぼりが反映されているのかなって。

TAKASHI 600社が撤退したって、すごいよね。ただ大半はジュエリー系の小さなブランドがほとんどだけど。

YOKO 600社が一気にって、社会問題寸前のレベルだよね。周辺の宿泊施設とかに落とすお金の推移を考えたらおそろしい。でもなにが原因なんだろう、減っちゃったのは。

TAKASHI 経済の停滞? 貴金属商売って、時計も含めてパトロンがいて成り立つものだよね。日本だって、バブル期は世界筆頭のパトロンだったはず。

YOKO 中国をはじめとするアジア人、アラブ系の人が減ったというのは感じた。

TAKASHI でもさ、そんな状況下だからこそ、ブランドの本気を感じたな。だって、売れセンばっかりだったでしょ。

YOKO 私の記憶では、以前はみんな新しい機構をどんどん開発していて、特にトゥールビヨンの開発合戦がすごかった。各社、ユニークなトゥールビヨンを作ろうって開発へのエネルギーをすっごく感じたし。取材行くところで「こんなムーブメントを作った」って中身の自慢ばっかりで、売れるとかの前に、技術をどうするかに一生懸命だったような気がする。

TAKASHI そういう雰囲気は今でもスーパーリッチ向けとしてしっかり残ってるよ。一方で、一部の富裕層ではなく、再び中間層に向けたデイリーモデルが目に付いた。その最たるが、ロレックスの「GMTマスター」。

青と赤のベゼルを搭載したSSモデルって、これ、年末の紅白のオオトリ級なモデルでしょ。サブちゃんの「まつり」とか。

YOKO そこがバブルを知っている世代だからかな、「あれ? 地味かも?」って思っちゃうのは。新製品を紹介してもらうと、最初にゴージャスなモデルが来て、3番手くらいにデイリーモデルのご登場って感じだったもん。ただ、今回見せてもらったデイリーモデルはどれもコストパフォーマンスの高さを実感したのも事実。作りはしっかりしているし、クオリティは間違いなく上がっている。しかも乱暴な値付けはしていない。そのあたりに「時代は変わったな」と。

TAKASHI いま無茶な値付けとかしたら、ネットで袋叩きに合うでしょ。それくらい、情報が出回ってるよ。ところでYOKOさんの今年記憶に残るモデルはナニ?

YOKO ブルガリのオクト フェニッシモ

私が最初にバーゼルに来た年、ブルガリがアルミニウムを発表したの。ジュエリーブランドがしっかりした時計を出しているのは、今では普通のことになったけど、これほどのレベルの時計がラインナップするとは、随分と遠くにきたものよと、時の経過を実感したのがこのモデルだったから。

TAKASHI オクト フェニッシモは昨年のGPHPで賞をとって話題になったね。たしかに

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ブルガリ「オクト フェニッシモ オートマティック」

時計ブランド以外の頑張りも目を見張る物がある。その一方で、皆んなGUCCIを話題にしてたね。蛾とか薔薇とか、ファッションのモチーフをそのまま時計に盛り込んで、かなりはっちゃけたことやってるよね。元気だなって思った。

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YOKO そうそう、これこれ! という安心感があった。しかもただはっちゃけている訳ではなくて、GUCCIとしてのモノ作りのスタンスがきっちりしているでしょ。丁寧だし。そのあたりは、さすがと思わせてくれた。

ズラーッといろいろなモデルが並ぶのもファッションブランドならではの楽しさだよね。「何を選ぼうかな」っていうワクワク感をくれた。

TAKASHI そうなんだよね。メカ攻めでも、伝統工芸攻めでも、なんでもいいんだけど、つまりワクワクさせてもらうのが

ともにGUCCI「G−タイムレス」。

サイコーなんだよね。GUCCIは価格帯を抑えている分、割り切っている部分もあるけど、マインドはしっかり伝わってきた。

YOKO これまで時計のベルトを交換するのは専用工具が必要だし、特に女性にはハードルが高いものだったけど。今年、カンタンにベルト交換できるモデルがいくつかのブランドにラインナップしていて、いいなって思ったけど。確か、あの機構ってどこかが特許を持ってたよね。

TAKASHI バネ棒外しが要らないやつでしょ(笑)。あれ、カミーユフォルネが早いうちから手掛けてたよね。なんか、特許が切れたらしいよ。

YOKO 流石、皆さま敏感! これまで替えベルトの発想が根付かなかったのは、面倒くささもあったもんね。それとトゥールビヨンも100万円台で買えるようになったし、時計の複雑機構と言われて高価だったものが、デイリーモデルに採用されるようになったね。

TAKASHI ロンジンのアニュアルカレンダー。この機構を20万円台で出してくるのは凄い。しかもグループ内のオメガから技術提携受けてないって言うよ。このブランドの独自性は素晴らしいなぁ。昨年もVHPという高精度クオーツを出してきたけど、マスブランドの底力を見た気がする。

YOKO 高精度クオーツといえばCITIZEN。100周年に向けて年差±1.0秒の新型ムーブメントを作ってきた。精度新時代って感じだよね。

TAKASHI やっぱり時計メーカーの本分は、他のソースに頼らず、自力で正しい時間を計ることだもんね。グランドセイコーもVFAで機械式ムーブメントの精度向上に再び挑戦してたよ。

YOKO 1960年代は公式機関のお墨付きが大切だったけれど、今は独自のスタンスで「精度」を磨いてきている。いつの時代も精度は時計の価値であることを考えれば、ムーブメント開発合戦は続いているってことだね。

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左から、ロンジン「ロンジン マスターコレクション」※アニュアルカレンダー、シチズン「Cal.0100」※コンセプトモデル、グランドセイコー「キャリバー9S 20周年記念限定モデル SBGH265」。

Page02. ブライトリングの変わらぬ姿勢に安堵?

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YOKOとTAKASHIのバーゼルワールド取材日記(2)

ブライトリングの変わらぬ姿勢に安堵?

TAKASHI ねぇねぇ、YOKOさんってブライトリングの取材をよくしてきてるけど、今回、本社の体制が変わることに対してどう思ってた?

YOKO 多くのブライトリングファンもそうだったけど、新しいCEOに不安を覚えていたことは確か。でも答えを知るのが怖いので、あまり考えないようにしてた。

TAKASHI リシュモングループで出世した人みたいだね。IWCを立て直し、その後、グループ全体を牽引するような存在だったとか。その地位を捨てて、今回、ブライトリングのCEOになったって、勇気あるよね。そのままでも十分に安泰なお方だったのでは?

YOKO リシュモンのとある部門のトップに就任したばかりだったところをスパッと辞めてブライトリングに来たとか。しかも自身でブライトリングの株を所有して就任したというから、とにかく熱い思いを持っていたことは間違いないみたい。

TAKASHI 最後の独立系と言われている最大手だもんね。きっとスイス人にとっても思い入れがあるブランドなんだろうな。「ナビタイマー8」。自分は好きだな。

YOKO ブライトリングってコアなファンが多いので、ナビタイマー8に回転計算尺が付いていないとわかった途端「けしからーん!」ってフツフツっとなったファンも多かったと思う。でも新しいCEOジョージ・カーンさんは、ブライトリングのこれまでをしっかり学んで、歴史を反映したモデルとしてナビタイマー8をつくってきた……いいシリーズだと思う。

TAKASHI ノン・クロノいいなと思う。実際に使いやすそう。あと、自社ムーブメントにこだわらない汎用クロノも痒いところに手が届いてる。

YOKO おっしゃる通り! 自社ムーブメント搭載モデルの価格がアップして、いいんだけれど買えないというファンも多かったことを考えれば、ブライトリングの世界観をいろんな人が

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ブライトリング「ナビタイマー 1 オートマチック 38」。

手にできるようなったのはよかったと思う。ちなみに私はナビタイマー3針モデル、とくにゴールドにグラッときました。

新CEOつながりといえば……

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RJ「アロー クロノグラフ 45MM」。

TAKASHI CEOが変わったという意味では、ロマン・ジェローム。新しくイニシャルのRJに変更して再出発することになったね。

YOKO このブランド、トリッキーという印象なんだけれど、新CEOになったことで、なにか変わった?

TAKASHI うん、ケースの仕立てが圧倒的に変わった。見た目からいいモノ感が伝わるようになったし、実際、腕に載せて収まりがよかった。これなら身に着けた当事者は、かなり満足感が得られるだろうね。

YOKO 価格的にはどう? ちょっとお高めだったように記憶しているんだけど。

TAKASHI 価格帯は変わらず。すごく工夫してる。価格を変えずに、できることを全部やってる。

YOKO なるほどねー。CEOといえば、相変わらずお元気で、

かつ目立っていたのがビバーさん。タグ・ホイヤー、ゼニス、ウブロなどの各ブースで精力的にプロモーションしていたのが印象的だった。

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© BASELWORLD2018

TAKASHI 地元の記者から質問受けてたよ。600社撤退して、御社は?って。そしたらビバーさん、「スイスの時計産業を守るためにも、バーゼルからの撤退はあり得ない」って。強い口調だった。

YOKO スウォッチグループの故ハイエックさんが存命だったら同じようにコメントしただろうな。時計産業にとって、どんなに市場が変わっても、バーゼルが世界共通のアイコンになっているんだろうし、アイコンにし続けていこうとする強い意思があるんだろうね。

TAKASHI ぼくたち、この期間中にいくつの時計に触ったんだろう? なんか、30分刻みで次から次へとブランドのブースを行脚して、足も心も冷え切る本当にツラい作業なんだけど、指の腹で撫でるように確認したケースラインの感触ってハッキリ覚えてるんだよね。

YOKO いまはバーゼル開幕と同時に各ブランドがネットで情報を開示しているなかで、実際にバーゼルに足を運ぶ意味って、そこにこそあるんだろうって思う。

TAKASHI 写真とは案外違うんだよね。あと腕に載せた感覚。リアルとバーチャル。やっぱそこには隔たりが有る。

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パテック フィリップ「5531 ワールドタイム・ミニット・リピーター」。

YOKO 写真と実物の時計が著しく乖離しているとなると、やっぱりパテックフィリップの名前は出ちゃうな。いろいろと褒めるべき点はあるんだけれど、個人的に感心するのは金属の質感。こればかりは写真には写ってない。

TAKASHI パテック フィリップの魅力は2次元には落とし込めないよね。これだけ伝統を磨きに磨いてきたブランドはないもん。

YOKO 既存モデルにホワイトゴールドケースモデルがラインナップすると同時に、イエローゴールドケースモデルを廃番にしちゃったりするのも、パテックならではだよね。WGの方がYGより魅力的だと思えば、あっさり止めちゃう。

普通のブランドだったら「ラインナップが豊富になりました」と言うところでも、それをやらない。

そうした姿勢もトップランナーゆえ、かな。

TAKASHI ミニットリピーター、今年も出てたね。しかもホームタイムとローカルタイムを鳴り分けるワールドタイムモデル

YOKO 複雑機構に複雑機構を加えていく、どんどん足していくのはパテックフィリップでなければできない技術力。こうした超技巧派モデルを直接見て、触って、聴くことができるのも、ありがたいチャンスだと思ってる。だってなかなか日本で実物に触れるチャンスってないじゃない?

TAKASHI ホントです。でもミニットリピーター付きモデルを持って海外に行く人って、どんだけスーパーリッチなんだろ?

(終わり)

追記 2018年7月30日、バーゼルワールド主催者は、2019年以降のスウォッチグループ撤退をアナウンス。同時に、残されたブランドとともに、この世界最大の時計見本市を盛り立てていくと発表した。

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