新型アウディ「A7 スポーツバック」に試乗|Audi
CAR / IMPRESSION
2018年3月18日

新型アウディ「A7 スポーツバック」に試乗|Audi

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック

新型アウディ「A7 スポーツバック」に試乗

6年ぶりのフルモデルチェンジを施されたアウディ「A7 スポーツバック」。その試乗会が今年2月、ジャーナリスト向けに開催された。パーソナル化の進むこの時代において、クルマのパーソナル化とはどういうものか。それを体現するような機能を手に入れた同モデルを、小川フミオ氏が南アフリカ・ケープタウンで確かめた。

Text by OGAWA Fumio

注目すべきは内面の進化

「アウディ A7 スポーツバック」がフルモデルチェンジ。2017年秋にお披露目されて、18年2月に南アフリカ・ケープタウンでジャーナリスト向けの試乗会が開催された。

新型A7 スポーツバックはファストバックスタイルを従来モデルから継承。ボディサイズもほとんど変わっていない。でも内容は大きく“進化”しているのが特徴だ。

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一つは動力性能で、もう一つは運転支援をはじめとするデジタル装備。ひとことで新型の特徴をいうと、新しい時代のパーソナルカーで、日常的にクルマを使う人にとっては特に頼りがいのある“パートナー”になりそうだ。

まず走りの面で注目してほしいのはシャシーだ。オプションになるが「ダイナミックオールホイールステアリング」と呼ばれる後輪操舵システムを採用した。

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前輪の舵角に応じて後輪を電気モーターで動かす。低速では逆位相にして小回りがきくようにし、60km/h以上では同位相に動き仮想ホイールベースを延ばすことで安定性を増す。

このシステムを採用したことをきっかけに、48ボルトの高出力モーターが使えるようになり、高速走行など低負荷時にエンジンを停止させたあと再起動させる速度域が高くなり、結果として燃費にも貢献。アウディでは高電圧バッテリーも追加した。充電はエンジンと、ブレーキング時の回生エネルギーによって行われる。これをして「マイルドハイブリッド」と呼んでいる。

エンジンにも見どころがある。スーパーチャージャーを廃して、ツインスクロールターボチャージャーを採用した。広範囲の回転域に対応させており、2,995ccのV6は250kW(340ps)の最高出力と500Nmの最大トルクを発生する。

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック

新型アウディ「A7 スポーツバック」に試乗 (2)

ドライバーの意思をスムーズに汲み取る走りを実現

ケープタウンは世界的に知られた観光名所テーブルマウンテンに代表される山がちの土地だ。湾に面しているので崖が多く、そこに屈曲路が設けられている。

空いていればなかなか痛快な道なのだが、往々にして交通量は多い。人口増加のせいだろう。いま深刻な水不足に直面していて、これも(小雨と)人口増加のダブルパンチによるものとされている。

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それでもワイナリーがある内陸部に入ると、ところどころ痛快な気分が味わえる道路がある。A7 スポーツバックのV6ユニットは1,500rpmを超えるあたりから力をもりもりと出しはじめ、レッドゾーンの6,500rpmあたりまで気持ちよく回る。

このエンジンの感じはとてもいい。電動で圧を調整するターボチャージャーの恩恵もあるだろう。ターボラグは感じずスムーズさも印象に残る。この電動調整式といわれるターボの作動も48ボルトバッテリーの恩恵なのだそうだ。

4輪駆動のクワトロシステムは「クワトロウルトラドライブ」とアウディが呼ぶタイプ。前輪駆動を主体とした効率重視型で、路面の状況や走りに応じて予測的に後輪へトルクを配分する。

7段のツインクラッチ式Sトロニック変速機もマッチングがよい。通常のドライブモードでは変速を早めにして高いギアを選び燃費をかせぐ設定だが、アクセルペダルを軽く踏み込んだけでギアを落とし力を出す。そのレスポンスは速い。

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ステアリングの設定も好感がもてた。中立付近から反応がよく、切り込んでいったときの車体の動きはややゆっくりと、そして予測が容易でカーブでの取り回しが痛快だ。

試乗車にはアダプティブサスペンションが装着されていたので、ドライブセレクトで「ダイナミック」を選択すると車高が20mmほど下がる。

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これはこれでスポーティな走行が好きな人にはいいだろうが、僕は通常の車高を維持する「オート」、あるいは「コンフォート」がよかった。タイヤサイズも21インチはやや硬すぎで、20インチがより好感がもてた。

きびきびとカーブを曲がるのには、先に触れた後輪操舵システムが寄与しているだろうか。おそらく他車でパイロンスラロームを体験したことなどから想像すると、答えはイエスだろう。

回転径が最大1.1メートルも縮小されるとのことで、ホイールベースが2,926mmもある余裕あるサイズをまったく意識させない操縦感覚だ。

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新型アウディ「A7 スポーツバック」に試乗 (3)

人とクルマの個性に焦点を当てたつくり

ボディは先に触れたように、自動車デザイン史におけるエポックを築いたともいえるなだらかなハッチゲートを備えた4ドア。

ウィンドウグラフィクスによって後席の存在感をやや希薄にする手法が採用されており、前席乗員を中心としたクルマという印象は強い。

面の表情は従来型よりさらに陰影を強調したメリハリのあるもので、前後の車輪の存在感も大きい。同時に新しくなった灯火類も注目のデザインだ。

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ヘッドランプは(オプションで)マトリックスレーザーライトが使われ、片側25個のLEDが並び個性を作り上げている。リアのコンビネーションランプもユニークだ。こちらもLEDを左右幅いっぱいに並べ、流れるように光が動くなどクルマが積極的にコミュニケーションしてくる感がある。

もう一つの特徴はインテリア。スマート端末を組み合わせたようなソリッド感のあるダッシュボードが目をひく。実際、計器のバーチャルコクピットに加え、中央に2つのモニター画面が並ぶ。ここでほとんどの操作を行う。エアコン、ナビゲーション、インフォテイメントの数かず、通信、といった具合だ。2つ上下に並んだモニター間でアイコンをスワイプして動かすことも可能。自分の使い勝手で画面がカスタマイズできる。

6人分のユーザーデータを記録し、ドライバーに応じてナビゲーションの履歴まで管理するそうだ。どういう場面でこの機能がありがたがれるか想像しにくいが、ようはパーソナル化がかなり進んでいるということなのだ。

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レーザースキャナー、長距離レーダー、中距離レ―ダー、フロントカメラ、360度カメラ、超音波センサーで“武装”しているのも特筆点。段階的に最新のシステムは搭載していくそうで、現在予定されているものを含めて39ものドライバーズアシスタンスが採用されるそうだ。

通勤など日常的にクルマを使う人にとって、走るスマートフォンとでも呼びたくなるようなインフォテイメントシステムの充実ぶりはかなりありがたいだろう。これからのクルマのあり方を新型A7 スポーツバックは端的に具現しているのだ。

試乗した3リッターガソリンエンジンのA7 スポーツバックは、正式には「A7 スポーツバック 55 TFSI」と呼ばれる。かつては3.0TFSIと排気量が入っていたが、新型「A8」からアウディはサブネームの変更を行っている。

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理由は「ダウンサイジング化が進んだ今日、排気量はパフォーマンスの目安にならない」とアウディの技術者は説明してくれた。

ちなみに210kWの3リッターディーゼルモデルは「A7 スポーツバック 50 TDI」と名づけられている。メルセデス(AMGを含めて)もBMWも先行して、新しいサブネームのシステムを採用している。

3リッターだが、かつてなら4リッターなみのパワーをもつA7 スポーツバック 55 TFSIは確かに新しい存在感を放っている。日本への導入は2018年前半だという。

           
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