Japan Craft Sake Company主催「The Master of Craft Sake」VOL.5 黒龍酒造|INTERVIEW

Japan Craft Sake Company主催「The Master of Craft Sake」VOL.5 黒龍酒造|INTERVIEW

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The Master of Craft Sake VOL.5「黒龍酒造」

8代目蔵元・水野直人氏インタビュー

去る9月27日、東京・六本木にあるザ・リッツ・カールトン東京の日本料理「ひのきざか」にて、中田英寿氏率いる株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPAY主催によるイベント「The Master of Craft Sake」が開催された。世界でも名高い5つ星ホテルを舞台に、日本の各地で徹底したこだわりのもと酒造りを行う醸造家(マスター)を迎え、素晴らしい料理と空間で、特別な一夜を楽しむイベントだ。

Photographs by TANAKA TsutomuText by MAKIGUCHI June

黒龍酒造8代目・水野直人氏に聞く、黒龍の魅力

第5回となる今回は、1804年、江戸文化元年創業の黒龍酒造。初代蔵元・石田屋二左衛門が良質な水に恵まれた福井県吉田郡永平寺町松岡で清酒造りを始めて以来、「良い酒を造る」というシンプルながら最も大切な理念を守り続けてきた。用いられるのは、酒蔵の地下深くに流れる白山水系・九頭竜川の伏流水。その源流近くには酒米の田園風景が豊かに広がる。厳しい冬が酵母による酒の発酵をじっくりと促していく。そんな自然に恵まれた永平寺のお膝元で213年に及ぶ地酒造りを行い、プレミアム酒の流れを作ったとも言える黒龍酒造の代表・8代目水野直人氏に、日本酒そして、「黒龍」の魅力を聞いた。

―― 「黒龍」というと代表的な日本酒です。海外でも名前が知られていますね。

水野直人氏(以下、水野) 実は、海外への出荷量は全体の2~3%です。ただ歴史は長く、20年近く前から海外に出しています。最初、ワイン大国で日本酒がどれほど通用するのか知りたくて、フランスに置かせてもらうようになったんです。それがきっかけで、アメリカのインポーターと取引させていただくようになり、次にアジア圏への輸出が始まりました。最初、フランスへはハンドキャリーで自ら持ち込みました。まずは三ツ星レストランで食事をし、その後ソムリエに日本酒の蔵元だと話を切り出しました。客なので、ちゃんと話を聞いてもらえまして(笑)。どんな風に思われるのか興味があったので、まずは評価を聞きに行っていたという感じですね。

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―― 20年前というと、海外ではまだ「SAKEって何?」という時代ですね。

水野 海外では日本酒がまともに飲めない時代でした。そこで最初はパリの日本文化会館で、同じ福井の奥井海生堂という昆布屋さんと組み、日本酒と昆布の会を開催しました。今でこそ和食がもてはやされていますが、当時の日本料理は“なんちゃって”ばかり。昆布でちゃんと出汁をとることなんて知らないわけです。今や“UMAMI”は外国でも通じる言葉となりましたが、出汁も旨味も全く通じないところから試飲を行い、そこに日本酒を合わせることで和の味の普及に努めていました。

―― 草の根活動をなさっていらしたんですね。

水野 そうですね。ただ、ワイナリーの方やソムリエからの評価は、すでに高かったです。当時海外で飲まれていたのは燗酒がほとんどでしたから、日本酒はお料理を食べた後、最後に気付けのように飲むというイメージがあったようです。決して美味しいものではなくて、アルコールを摂取するというイメージが強かった。ですから、私が持ち込んだ大吟醸のような吟醸酒は、本当にびっくりされました。こんなに上品で繊細な日本酒があるんだと驚かれましたね。

―― 実は私自身も最近日本酒を飲む機会が増え、日本人ながら日本酒に多くの表情があることに驚いています。

水野 ありがとうございます。日本でも、昭和40年代にようやく冷酒文化が始まりましたし、普及していったのは昭和50、60年代。今は当たり前のように、みなさん冷酒でお飲みになりますし、吟醸酒、純米酒といった言葉も浸透していますね。そういった特定名称酒のカテゴリーを楽しんでいただける時代になったのは意外に最近のことなんです。昔は、そういった言葉自体がありませんでした。日本酒級別制度(酒税法上の分類制度。アルコール度数や酒質などから特級、一級、二級など級に分けられていた)が廃止されたのは、平成4年のこと。級別がなくなってから日本酒文化は劇的に変わりました。しかも、かつては級別に全国一律の価格で販売されていたんです。そういうなかで、黒龍酒造では大吟醸を先駆的に製造・販売していきました。日本でも海外でも、営業活動として行ったのは、冷蔵庫で冷やしてくださいねというところからだったんです。

ABOUT
牧口じゅん

牧口じゅん|MAKIGUCHI June 共同通信社、映画祭事務局、雑誌編集を経て独立。スクリーン中のファッションや食、音楽など、 ライフスタイルにまつわる話題を盛り込んだ映画コラム、インタビュー記事を女性誌、男性誌にて …