INTERVIEW|Open Reel Ensemble × artlless代表 川上俊 スペシャル対談
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2015年2月16日

INTERVIEW|Open Reel Ensemble × artlless代表 川上俊 スペシャル対談

INTERVIEW|Open Reel Ensemble×artless

スペシャル対談

メディアアートと音楽をシームレスにつなぐ新時代アーティスト(1)

ステージ上の4台のオープンリール式テープレコーダー。5人の若者があらわれ、前代未聞のショウがはじまる。オープンリールに記録されたメディアは、新しいグルーブをともなって再生されていく── 結成からわずか3年ながら、圧倒的なパフォーマンスで世界中を熱狂させているOpen Reel Ensemble(オープンリールアンサンブル)。来たる9月8日(土)には、渋谷WWWにてワンマン公演を行う予定だ。メンバーの和田永さん、吉田悠さんと、6月27日にリリースされた1stアルバム『Open Reel Ensemble』のアートワークを手がけたartlessの川上俊さんとの、三者の対談をお届けする。

Photographs by JAMANDFIXText by IWANAGA Morito

デビューアルバム製作までの経緯

――デビュー前から面識があったということですが、お互いの印象は?

川上 和田くんのことは、彼がひとりでライブをやっているころから知っていました。けっこう有名だったんですよね、まわりのメディアアーティストのあいだでも。そのあとも、僕がポスターのデザインとかをやらせてもらったイベントにオープンリールアンサンブル(以下、ORE)が出ていたので。

吉田 「ボイコットリズムマシン」という即興ライブで、坂本龍一さんや大友良英さんが出演されていたイベントです。

和田 それがきっかけで僕らは川上さんのことを知ったんですよね。

川上 そうそう。それでCDを出すという話を聞いたときは、あの人たちってミュージシャンだっけ?って(笑)。おもしろいね、ぜひやりたい、という具合に。ライブパフォーマンスがもともと有名だからね。OREは絶対にライブだとは思うけれど、あえての挑戦だよね。DVDは想定の範囲内だったけど、CDっていうのは挑戦だと思うな。でもすごくいいですよね、逆に。想像できて。

吉田 僕たちも以前から川上さんのデザインや作品を見ていて、惹きつけられるものがあったんですよ。瞬間を捉えているというか、間とか緊張感のあるデザインに魅力を感じていて。

キャストを集める映画監督のように

――デビューアルバムにしてゲストが豪華ですよね。

吉田 贅沢させていただいてます。ふつうに考えたらありえないですからね。

和田 だからまずゲストの方がたには、僕らがやっていることと熱い思いを、手紙で伝えました。OREの別のスイッチをいっしょに押してくださいとか、息を吹き込むことによって命も吹き込んでくださいとか、いろんな言い回しで表現しながら。僕らのプロジェクトをおもしろいと思って参加してくれることが、一番大事なんですよ。組み上げた物語や歴史のなかにぜひとも登場してください、みたいな。映画作品の俳優を集めるような感じでしたね。

川上 まさしく映画監督の口説き方だね。マニー・マークさんにもメールしてたよね?

和田 「Push The Button」っていう曲があるんですね。僕らからマニー・マークさんへの口説き文句は「Push The Another Play Button」ですからね。誰かがある現実世界で声帯を震わせて発した音を、僕らが掻き集めて別のストーリーを作っていくような感覚があって。現実なんですけど、映画のサウンドトラックみたいなところがあるんです。いろんな方がたの肉声をいただけて、光栄でした。

――井深大さんとはどういうかかわり方をされたんですか?

和田 テープレコーダーのことを紐解いていくといろんな歴史があって、井深さんは日本における超重要人物なんですよ。ほかにもさまざまな研究チームがあるんですけど、やっぱり井深さんは、そのころの会社の創設者でありテープレコーダーを実際につくった方ですから。それで、ソニー歴史資料館に井深さんが録音した声が実際にテープで保存されているっていうのを知って、連絡しました。最初は断られたんですけど、「ふつうのバンドじゃありません! 必然なんです! 井深さんが登場しないと僕らの物語は完成しません!」って、本当に映画監督みたいなこと言って。

川上 だからスペシャルサンクスにちゃんと入ってますよね。「ソニー歴史資料館」と。

Open Reel Ensemble|artlless 03

Open Reel Ensemble|artlless 04

――川上さんがCDをデザインするにあたって、注意したことはありましたか?

川上 注意というわけではないんですけど、打ち合わせしながら──なんていうんだろう、見えちゃったんですよ。オープンリールのCDは透明だね、透明だよ和田くん、今回は透明だわって。

和田 もう瞬間的ですよ。スパーク。興奮しました。最初はサンプル盤を渡すのが申し訳なくて。ふつうのチープなプラスチックケースなんですよ。そしたら、そのサンプルの中の紙を、これ邪魔じゃない?みたいな感じに川上さんがはぎとっていっていくと、どんどんかっこよくなっていって。で、コレで文字入れてどーよ?みたいな。メンバー全員、笑っちゃいました(笑)。かっこいいんですよね、このプラスチックケースっていう物質がもつ質感だったりが一体になっていて。あ、きた!っていう瞬間でした。

川上 オープンリールっていう機械自体が古くて、アンティークじゃないですか。ある意味、CDのプラケースも僕らにとってはすでにアンティーク。いまは紙ジャケがモダンですよね。その紙ジャケがないっていうのが逆にいいなと思って。あと二枚組だから、CDとDVDが。この二枚組ケースというのもけっこうレアなんですよね。だから、みせちゃうやり方のほうがかっこいいかなと思いました。響きも「オープンリール」っていう全部オープンにするっていうイメージが浮かんで、今回のデザインはなるべく透明、透明なプラケースだけ!みたいな感じですね。

和田 二枚のサンドイッチ。

川上 そうそう。二枚のサンドイッチがオープンリールにも見えるし。たぶんそういうので思いついたんでしょうね。それに文字を載せてみんなのクレジットとかを載せていくっていう作業で──本当は曲にたいする彼らのアツい思いがあったんですが、それは載らないからウェブサイトでやろうって話になりました。ウェブでは彼らの熱い思いを絵にして描いてもらいました。

――絵はどなたかが描かれたんですか?

吉田 これは寄せ描きです。モチーフごとに描くメンバーが分かれていて。

川上 みんなで描いているんですよ。彼らがずっと地図だったり旅だったりとかそういう話をずっとしていたので、じゃあ描こうか、という話になりました。絵の中を旅するような感じで、ある箇所は動かしたり、パラパラ漫画を描かせてみたり。それをGIFアニメにして。そのGIFアニメがレトロな感じでいいんですよね。

Open Reel Ensemble|artlless 05

吉田 パカパカしててコマが足りない感じが(笑)。

和田 若干、先祖返りしている感じがいいですよね。カタカタ動いて。

川上 みんな曲にたいする思い入れがあってコンセプトがしっかりしてるんですよ。ただポップミュージックを作っているわけじゃないので。音もむかしの資料館からもってきたりとか、けっこう深いんですよね、音楽にたいしてのつくり方が。だからこんなに“絵”を描けるんですよ。

INTERVIEW|Open Reel Ensemble×artless

スペシャル対談

メディアアートと音楽をシームレスにつなぐ新時代アーティスト(2)

振り幅は広く、何かにとらわれることのないように

――今回の作品を通して伝えたいことは?

和田 音を聴いた人が、それぞれにいろんな旅に出てほしい。その断片的なヒントをウェブサイトで展開しています。その旅っていうのが、僕らがオープンリールを聴いたときに空想した世界だったりするんですけど、それを本当にうまく落とし込めたというか。

Open Reel Ensemble|artlless 06

川上 着地点がいいよね。CDは僕のデザインがバリバリに出ているから、僕のテイストが強いんですよね。だから、ウェブサイトはどちらかというと彼らの思いを詰め込みました。ジャケットではいっさい排除したんですよ。CDを聴いてウェブサイトを見たら、噴き出すように。

和田 このなかに宇宙を閉じ込めてる感じですよ。真空パック。

吉田 覗いたときのギャップとか驚きを感じてほしいですね。

川上 いっさいどういう音が入っているか想像できないよね。

――ライブも楽しみです。

和田 僕らのライブでは録音して再生されるということに宿るファンタジー性を、身体的にオープンリールを操ることでパフォーマンス的に表現しています。そのシチュエーションだったり音が出ている背景だったり、そのストーリーだったり、音と結びつく動きを見せられるように。リールを高速回転させることもあるんですけど、これはピート・タウンゼントが腕を回しながらギターをかき鳴らすのに通じる部分かも、って最近勝手に思っています。

――ステージ上では音楽を演奏している感覚なのですか? アートとして捉えられることもあると思いますが。

和田 オープンリールという廃れたメディアでできることを、すべてをやる。そういうところからはじまっていて。最初の動機はアート的なんですけど、いまは音楽的な高揚感とも合体しています。それが一体となった瞬間に、音楽なんだけど音楽だけじゃない要素もくわわって“体感できるもの”を求めています。

吉田 振り幅は広く、何かにとらわれることのないように。それがアートの側面をもっていることと、ダンストラックとして踊れることっていうのは並列する特徴のひとつでしかないというか、絞っていません。おもいきり実験的なことをやることもあります。そこで見せられるものがあれば、それは良いもののひとつ、と考えています。限定しない。コンセプチュアルな魅力をもちながら、ふつうにノれる。そういうところに落ち着くのが理想かもしれないですね。

川上 ライブを一回観たら、また行きたくなると思いますよ。

――野望はありますか?

吉田 このあいだ試聴会をやって、川上さんにも来ていただいたんですけど、最後のプロデューサーのひとことが「売るぞー!」だったので。がんばって売らなきゃいけませんね(笑)。

――ありがとうございました。

Open Reel Ensemble|artlless 08
Open Reel Ensemble|オープンリールアンサンブル
2009年より、和田永(写真左)を中心に佐藤公俊、難波卓己、吉田悠(写真中央)、吉田匡が集まり活動開始。旧式のオープンリール式磁気録音機を現代のコンピュータとドッキングさせ、「楽器」として演奏するプロジェクト。リールの回転や動作を手やコンピュータで操作し、その場でテープに録音した音を用いながらアンサンブルで音楽を奏でる。ライブパフォーマンスへの評価も高く、Sonar TOKYO、Sense of Wonder、KAIKOO、BOYCOTT RHYTHM MACHINEなどに出演。海外ではSONAR 2011 Barcelona、ARS ELECTRONICA(in Linz of Austria)に出演している。

Open Reel Ensemble 1st Album Release Tour Final! "Set the Brand New Tapes!"
日程|9月8日(土)
会場|渋谷WWW
時間|15:30開場/16:00開演
料金|前売3000円、当日3500円(税込/ドリンク代別/オールスタンディング)
ゲスト|やくしまるえつこ
※学生割引として500円のキャッシュバックあり。
受付にて学生証を呈示のこと。
http://www-shibuya.jp/schedule/1209/002442.html

『Open Reel Ensemble』
2012年6月27日発売
CD&DVD[2ディスク] 3500円
http://www.steamblue.net

川上俊|KAWAKAMI Shun
1977年、東京都生まれ。artless Inc.代表。東京を中心に活躍するアーティスト、デザイナー。2000年にartless Inc.設立。その領域は多岐にわたり、グラフィック、インタラクティブ、映像、インスタレーション、空間演出など、アートとデザイン双方から多方面へアプローチを続け、国内外問わずグローバルに活動を行う。http://artless.co.jp

           
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