世界中の映画祭を席巻中! デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督作品『裸足の季節』|MOVIE
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2016年6月11日

世界中の映画祭を席巻中! デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督作品『裸足の季節』|MOVIE

MOVIE|アカデミー賞®外国語映画賞ノミネートをはじめ、あらゆる映画祭を席巻!

デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督デビュー作『裸足の季節』

2015年カンヌ国際映画祭に出品されるやいなや、各国マスコミに絶賛され話題を集めた、デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督作品『裸足の季節』。これが長編デビュー作と信じがたいほど卓越した構成力と美しい映像、5人姉妹を演じる少女たちの溢れんばかりの存在感に圧倒される。6月11日(土)シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。

Text by OPENERS

「注目すべき映画監督10人」に選ばれた美しき監督作品

昨年のカンヌ国際映画祭にはじまり、世界中の映画祭に引っ張りだこだった本作の監督と女優たち。新人監督と新人女優ながら、彼女たちがレッドカーペットで身にまとっていたのは、なんと「CHANEL(シャネル)」だった。「綺麗な女性監督が初めて作った美しい姉妹の映画」、内容もビジュアルも『ヴァージン・スーサイズ』を思わせるこの作品を、なぜ最高級メゾンがサポートするのか、騒ぎすぎだとすら感じていた。

しかしひとたび作品を観れば、その考えは一変する。監督デビュー作とは思えないほど卓越した構成力と美しい映像。さらに5人の少女たちの溢れんばかりの存在感に圧倒されるのだ。

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© CHANEL / Olivier Borde

映画の原題である「ムスタング(MUSTANG)=野生の馬」そのままの生命力に溢れ、みずみずしくハツラツとした彼女たちの魅力が、この映画を牽引している。映画の冒頭は、「無邪気に生きる少女たちが思春期を迎え、自分の未来を模索していく」、よくある青春映画だと感じるだろう。しかし、男子と水浴びをしただけで、古い慣習に縛られた祖母や叔父に淫らだと罵られ、折檻を受け部屋に閉じ込められる。さらに携帯も奪われ、結婚までさせられる少女たちの不遇な生き方を知ったとき、まだ世界には、こんなにも自由を奪われた女性たちがいるのか――と哀しい気持ちが溢れてくる。

この作品は、トルコ・アンカラで生まれたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督自身が、少女時代に実際に体験した出来事が投影されている。日本でも、結婚相手を家族に決められ嫁いでいく古い慣習がある。この映画の祖母は少女たちの自由を奪い、冷酷な女性のように描かれる。しかし、早くに両親を亡くした5人もの娘たちを、親の代わりに学校も行かせ、綺麗に育て上げた祖母。もしかしたら、冷酷にみえるこの仕打ちは、「しっかりと嫁がせ安定した幸せを手にすることがこの子たちの幸せになる」という祖母なりの優しさだったのかもしれない。

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しかし、結婚は好きな人としたい! とわめき散らし、ヴェールから見え隠れする、少女のまっすぐな強い眼差しから流れる涙を見たとき、やっぱりこう思ってしまう。「祖母のもつ封建的な思想から、自由を取り戻してほしい――」と。5人の少女が水辺で遊ぶ無邪気な姿や、折り重なる綺麗な素足は、思春期特有の甘美な輝きと憂いを帯びている。でも、その内に秘めたマグマのようなエネルギーが、色鮮やかなビジュアルと光溢れる映像によって、丁寧に繊細に映し出されれば、誰もが自然とエールを送らずにはいられない。彼女達が自由になるとき、世界の古い慣習が消え去るのではないか、そんな気持ちにさせてくれるだろう。

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© CHANEL / Olivier Borde

撮影が自身の妊娠と重なっていたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督だが、その甲斐あってか本国フランスで2015年6月に公開されるいやいなやロングラン大ヒット。初監督作ながらアカデミー賞フランス代表に選ばれ、同外国語映画賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた。2015年のカンヌ国際映画祭で上映されるや、デビュー作とは思えないほど卓越した構成力と美しい映像、5人の少女たちの溢れんばかりの存在感が各国マスコミに絶賛され、世界中の映画祭を席巻している。日本での公開日までに、38の賞を受賞中である。快進撃を続けるデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督は、米国・バラエティ誌が選ぶ「注目すべき映画監督10人」に選出された。

また、姉妹役の5人はいずれもオーディションやスカウトによって監督が見出した新人である。三女エジェを演じたエリット・イシジャン以外はこれが演技初体験ながら、第21回リュミエール賞新人女優賞、第21回サラエヴォ映画祭主演女優賞、第5回サハリン国際映画祭審査員特別賞(主演女優)、第46回インド国際映画祭主演女優賞が5人全員に贈られた。5人姉妹の末っ子である13歳のラーレ役を演じたギュネシ・シェンソイは、作品内で自分の髪を切るなど体当たりの演技を見せ、高く評価された。

フランスを代表する女優のマリオン・コティヤールも「こんなに素晴らしい映画が、今年のアカデミー賞(R)フランス代表であることを誇りに思う。」と語る。全世界注目の『裸足の季節』は、2016年6月11日(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開となる。

自由を奪われた美しい5人姉妹の、甘美でほろ苦い反逆の物語

イスタンブールから1000キロ離れたトルコの小さな村に住む、美しい5人姉妹の末っ子ラーレは13歳。10年前に両親を事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父とともに暮らしている。学校生活を謳歌していた姉妹たちは、ある日、古い慣習と封建的な思想のもと一切の外出を禁じられてしまう。電話を隠され扉には鍵がかけられ「カゴの鳥」となった彼女たちは、自由を取り戻すべく奮闘するが、一人また一人と祖母たちが決めた相手と結婚させられていく。そんななか、ラーレは秘かにある計画をたてる……。

『裸足の季節』
2016年6月11日(土)より、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次ロードショー
監督|デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン 
音楽|ウォーレン・エリス
出演|ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、エリット・イシジャン、イライダ・アクドアン、ニハル・コルダシュ、アイベルク・ペキジャン
2015年/フランス=トルコ=ドイツ/97分 配給:ビターズ・エンド 
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