“紫”のシグネチャーコーヒーができるまで|SARUTAHIKO COFFEE

SARUTAHIKO COFFEE|トヨタ ハリアーと猿田彦珈琲が挑む、五感を刺激するコーヒー

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SARUTAHIKO COFFEE|猿田彦珈琲

トヨタ ハリアーと猿田彦珈琲が挑む、五感を刺激するコーヒー

“紫”のシグネチャーコーヒーができるまで(1)

コーヒー好きの間で「サードウェーブ」という言葉が飛び交うようになって久しいが、「シグネチャーコーヒー」というジャンルをご存知だろうか。今回「TOYOTA HARRIER CAFE(トヨタ ハリアー カフェ)」が挑むのが、ハリアー特別仕様車「PREMIUM“Style MAUVE” (モーヴ)」のこだわりのカラー“紫”とその世界観をシグネチャーコーヒーで表現するというもの。そして、そのメニュー開発のコラボレーターとして白羽の矢を立てられたのが、いまや日本における「サードウェーブ」の第一人者として知られる「猿田彦珈琲」の店主・大塚朝之氏だ。

Text by MATSUURA AkariPhotographs by KOMIYA Koki

まずはおいしさを追求すること

シグネチャーコーヒー。簡単に言えば「コーヒー以外の素材を加えたオリジナルビバレッジ(創作コーヒー)」のことを指すこのジャンルは、正式にはシグネチャービバレッジと呼ばれ、コーヒー業界ではバリスタチャンピオンなど世界的な大会で出題されるテーマとなっている。

今回、大塚氏はトヨタ ハリアー カフェのためにふたつのオリジナルメニューを考案。いずれも意外な素材との組み合わせで見事な“紫”(モーヴカラー)をまとわせ、驚きに満ちたフレーバーを完成させた。プロジェクトの発端からのプロセス、そしてシグネチャーコーヒーが完成するまでには、どんなこだわりと試行錯誤が重ねられたのだろう。

―― 最初に「シグネチャーコーヒーをつくる」と聞かされたとき、どのように思われましたか?

「Style MAUVE」の世界観をコーヒーで表現するという企画そのものが斬新でおもしろいと感じた一方で、正直、とても身が引き締まる思いでした。シグネチャーコーヒーは僕らにとってある種“聖域”のようなものなので、生半可なやり方は通用しないだろうと。やり方次第では諸先輩方に「あいつなにやってるんだ」と言われてしまいますから。

とはいえ、声をかけていただいたこと自体がとても嬉しかったですし、思っていた方向に着地すれば、どれだけ僕らが真剣に頭を使って味覚を追求しているかを、あらためて表現できる場になってくれるかもしれないという思いもありました。

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1階に約10メートルのロングカウンターをしつらえた仙川店。2015年2月にオープンした60坪の店には、本格的な焙煎工房も併設。まさに焙煎したてのスペシャルティーコーヒーが味わえる

―― 開発にあたって第一にこだわった点は?

当たり前のことかもしれませんが「おいしいこと」を最優先課題にしました。もちろんイメージのベースにあるのはStyle MAUVEの世界観で、“紫”がテーマであることも大前提なんですが、飲む側にとっておいしくなければもう二度とリピートしませんよね。もっとシビアに考えれば、来場される方全員が必ずしもコーヒー好きとは限らない。なかにはサードウェーブやスペシャルティコーヒー、ましてや猿田彦珈琲なんて店の名前すら聞いたことがない方もいらっしゃることを想定しておかなければならないですし。なので、いったん頭をできるだけフラットな状態にして、なによりもまずは「おいしさを追求すること」「目の前のお客様によろこんでもらうこと」にフォーカスしました。

―― “紫”と聞いたときにはどんなことをイメージされましたか?

実際にStyle MAUVEにも試乗させていただいたんですが、直感した色は「紫に1番近い黒」でした。コーヒーは“黒”でたとえられることが多いと思うのですが、そのなかには紫のニュアンスも感じることができる。豆の中にはブルーベリーのような酸味を特徴とするものもあるので、漠然とではありましたがひとつはブルーベリーを使って表現できるかもしれないというアイデアが浮かびました。今回はどちらかといえば直球ではなくて、捻りのある味わい。ニュアンス的な高級感が求められているのだなということを感じました。

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ふたつのシグネチャーコーヒーに使われた素材(左:ブルーベリーと炭酸割り 右:アサイーカフェオレ)
ベリーやアサイーだけでなく、ミントやライムの効かせ方にも注目したい

―― シグネチャーコーヒー「Style MAUVE」が完成するまでの開発プロセスを教えてください。

このシグネチャーコーヒーのベースになっているのは、ハリアーのもつゴージャスかつシックな世界観を表現するために、ケニアを中心としたコロンビアとのオリジナルブレンドを夏らしくコールドブリュー(水出し)でご用意しました。ベリーのようなフルーティな甘みとコーヒーとは思えないような華やかな風味を、コーヒー好きな方にはぜひそのままを楽しんでもらいたいと思い、今回特別にメニューのひとつに加えさせていただきました。

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コーヒーとほかの素材との比率が変わるごとに色味と風味が刻々と変化する

Style MAUVEの最初の1杯は、濃縮水出しコーヒーをブルーベリージュースと炭酸で割った爽やかな味わいのシグネチャーコーヒーです。品質の良いコーヒーの酸がブルーベリーの爽やかな酸と繋がることでさらに上質な甘みへと進化するのですが、きび糖を少量加えると、やや立ち過ぎる酸をやわらかく包み込んで甘みに奥行きが生まれます。

ハリアーのもつ嫌味のない清涼感をミントの爽やかさで表現したのですが、その爽やかさを泡で際立たせるため、硬水の炭酸水で仕上げました。最後に絞るライムは、甘みや清涼感に複雑味を与えるためのもの。タテに広がる甘みをライムやミントでヨコに広げることで奥行きのある余韻が生まれるのですが、これらすべての要素が交わることで、ハリアーの艶麗なエレガントさやSUVとしての強さ、ミステリアスな二面性を感じていただけると思います。

もうひとつは、ハリアーの助手席が似合う理想の女性をイメージして「助手席のエキゾチックな甘み」をテーマにつくりました。濃縮したハリアーブレンドにアサイージュースとミルクを加えると、アサイーのとろみのあるエキゾチックな甘みがスパイスチョコやカフェモカのようなニュアンスを生みます。最後にライムを絞ることでほどよいアクセントになり、全体的にマイルドに仕上げられたフレーバーにメリハリが生まれます。コーヒーが苦手な方や小さなお子さんにもぜひ飲んでいただきたい1杯です。

SARUTAHIKO COFFEE

工房では「美味しさ」を追求するためにギリギリまで試行錯誤が重ねられた

―― アイスコーヒーにこだわった理由はなんでしょうか?

単純に、暑い季節に飲みたいドリンクはなんだろう? と考えたときに頭に浮かんだのが、店で出している水出しコーヒーでした。僕らは水出しコーヒーを「コールドブリュー」と呼んでいるのですが、猿田彦珈琲には自信をもって出せる品質の良いコールドブリューコーヒーがあるので、それをベースに味を構築すれば、多少冒険をしてもきっと巧く着地できるだろうという直感もありました。

“紫”のシグネチャーコーヒーができるまで(2)