「星のや京都」にて、いにしえのミヤコビトと同じ納涼を体験する|TRAVEL
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2019年8月6日

「星のや京都」にて、いにしえのミヤコビトと同じ納涼を体験する|TRAVEL

TRAVEL|星のや京都

京都の夏を涼やかに、心地よく。「奥嵐山の納涼滞在」

暑いですよねー。あぁ、暑い、暑い。“アツい”と口にするだけで、暑く感じてしまうのに、気がつくとまた、口を出て、アツいと呟いてしまう。無限ループです。曇れば蒸すし、晴れたら日差しが容赦なく刺さる。こうまで暑いと、無理をせず、エアコンのスイッチ・オンで、効率よく涼みたいです。でも時計の針を思い切り逆回転させたその昔、ミヤコが京都にあった時代の先達たちは、周囲を山々に囲まれた“盆地の夏”をどう過ごしていたのでしょうか? その知恵と文化を現代に届けているのが、「星のや京都」が8月31日(土)まで実施している夏のアクティビティ「奥嵐山の納涼滞在」です。

Photographs by OHTAKI Kaku Text by TSUCHIDA Takashi

嵐山の自然が、なすまま。水辺の涼は、身体にやさしい

川風(かわかぜ)って知っていますか? 樹木が生い茂る山の澄んだ空気が川を伝って川上から川下へと吹く風です。岸辺にいると、時折やわらかな涼風を感じるのはそのため。しかしその涼をダイレクトに感じるなら、船に乗り込み、岸を離れ、水面で感じるのが一番です。
その先人の知恵を「星のや京都」が見過ごすはずがありません。宿泊客は、渡月橋の専用船着場から船に乗り、宿のある奥嵐山へと向かいます。この時の風が心地良いったら、もう。窓を開け、風に触れ、団扇で扇ぎ、涼を取る。言葉にすると、ありきたりなことのようですが、そのありきたりなシーンが、いかに神がかっているか……。だって左に嵐山、右に小倉山。その瑞々しい緑をまぶたに感じながら、ふたつの山を掻き分けて頬を伝う涼は、凡人の私をいっとき、平安貴族にさせてくれるのですから。
そして、星のやの船は、座席が水面に近いんですよ。手を伸ばせば、水をひとすくいできる距離。そのせいなんだと思います。自然との一体感がハンパない! 船の静かなエンジン音は、文明の存在を消し、川風との触れ合いを演出します。大堰川を上り、避暑のために嵐山を訪れたミヤコビトたちと同じ、手漕ぎのゆったりとした速度で、船は宿へと向かうのです。

京都の夏の風物詩。納涼床がここ、星のや京都にも

京都市内を流れる鴨川にやぐらをたてて、テラスのようにして宵の涼を楽しむ。古都を彩る、夏の情緒です。そのエッセンスを取り入れたのが、名付けて「奥嵐山の納涼床」。星のや京都の敷地の中心「水辺の庭」に、プレミアムな“浮かぶリビングスペース”を設え、池のなかで、流れる滝の音に耳を傾ける趣旨です。
この納涼床は、「奥嵐山の納涼滞在」期間中の日が落ち始めた時間から、荒天日以外は毎日、用意されています。やっぱり暮れなずむ時間は最高。だって日が落ちてきたということは、大手を振ってお酒を飲めるから。エヘっ。夕食前の喉の乾きを、ここでチュルンと潤します。
まずは、美しいカクテルをふたつ。ショートタイプのカクテルグラスのピンク色のドリンクが「MINAMI」。京都の有名なクラフトジン「季の美」と、ライチのリキュール「DITA」をベースに、クリーミーな甘酒をプラスしたスイートなお酒です。そして右は「ISARIBI」。このカラーコントラストは、嵐山名物、鵜飼の灯りを表現したそう。ブドウのリキュールにブラッドオレンジが添えられています。その他、ドメスティックウイスキーも充実。なんと埼玉・秩父界隈でしか手に入らないと話題のイチローズ・モルトも揃えてありました。
また「奥嵐山の納涼滞在」期間中の土曜・日曜・祝日と、8月13〜15日のお盆期間は、17時からの1時間半、「水辺の夜奏会」が開催されます。篠笛や琴、三味線による和楽器演奏が繰り広げられるのです。と言っても、演目は敢えて決めずに、もっぱら滝の音やヒグラシの鳴き声に合わせた即興。テンポ感のある音楽ではなく、落ち着いた空間を演出するための効果音といった趣で、星のや滞在の楽しい会話を阻害しません。
そよ風が吹けば、風鈴がひとチリン、ふたチリン。水辺の庭のあちこちに飾られた風鈴は、京都職人による1点ものであり、その音色はひとつひとつ異なります。風という見えない存在を、音色を通じて実体化させる風鈴は、いにしえの人々が考案した、脳で涼を楽しむロジカルグッズ。風を数えるって、うーん、たしかに。
素敵なことだなぁ、と思うわけです。

奥嵐山の庭にて、夜想にふける

さて、夕食後に部屋でのんびりして、夜10時。「奥の庭」ではじまるのが、30分間のアクティビティ「水辺の夜坐(やざ)」です。嵐山の夜のぐっと涼んだ外気に身体を預けて、心身ともにリラックス。これこそが究極の納涼です。
呼吸を整え、瞑想に入ることを主目的にしているため、誰でも挑戦できる内容ですが、そのアクティビティは、なんと庭に設えられた蚊帳のなかで。この蚊帳、京都の北山杉から紡いで製作されています。
蚊帳のなかにいると、キャンプ中のテントのなかにいるようで、外界からゆるく守られた居心地の良さを感じます。同時に、敷物を敷いた地面に直接座るので、視線が落ち、日中に歩いて通った庭の感覚とは大きく異なることに驚きます。遠くの足音がビビッドに感じたり、川のせせらぎがサラウンドで聞こえ始めたり。心の感度がチューンアップされ、音や匂いにビビッドになるのです。アンテナ感度が鋭敏になったところで、もうひとつ深呼吸。インストラクターに導かれるまま手足を伸ばしていくうちに、身体の火照りがスッと抜けていきました。
翌朝――。
打ち水で清められた敷地を散策すると、25室という限られた宿泊客をもてなすホスピタリティに、改めて心が揺れます。そして思ったのが、「ニッポンの夏ってなんだろう?」ってこと。暑くて辛い? 最近は熱帯の国々のように蒸して厳しい? 答えは、限りなくYESです。
一方で、京都の厳しい夏に、楽しみを見つけてきたミヤコビトたち。だって風を数えちゃうって、ほんとにすごい発想だなぁと思うわけです。もちろん彼らの暮らしは優雅であり、いつも締切に追われて半ベソ掻いているワタクシの生活とは比べるべくもないでしょう。でも、やっぱり心に余裕を持つ努力って、大切だと思ったんですよ。打ち水とエアコンでは、そりゃエアコンの圧勝。でも、発想力ではボロ負けだなぁって。
先人の知恵に習う。まだまだワタクシ、勉強が足りません。
星のや京都
所在地|京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
アクセス|阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICよりクルマで約30分
客室数|25室
料金|一泊一室あたり10万6000円〜(食事別、税・サービス料10%別)
奥嵐山の納涼滞在
期間|〜2019年8月31日(土)
※水辺の夜奏会は、土・日・祝およびお盆期間(8月13日〜8月15日)開催
時間|催しにより異なる
場所|星のや京都施設内
料金|催しにより異なる
参加条件|星のや京都宿泊者
備考|雨天時、各催しは場所を変更して開催することがあります。
納涼BAR
時間|18:00〜23:00
場所|奥嵐山の納涼床
料金|1500円〜(税・サ込)
予約|不要
水辺の夜奏会
期間|〜2019年8月31日までの土・日・祝およびお盆期間(8月13日〜8月15日)
時間|17:00〜18:30
場所|奥嵐山の納涼床
料金|無料
予約|不要
水辺の夜坐
時間|22:00〜22:30
場所|奥の庭
料金|無料
定員|4名
予約|公式HPまたはフロントにて当日20時までに要予約
問い合わせ先

星のや京都
Tel.0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/

                      
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