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2008.11.14

抽象的でフローラルな香りをやさしく包む「エンプティネス」

「KENZOPOWER」原研哉インタビュー (前編)

バラでもない、ジャスミンでも、フリージアでもない。これは想像上の花「ウッディーアンバー」の香り。何とも瑞々しいこの香りを発するパフュームの名は「KENZOPOWER」。フランス屈指の調香師が手がけ、日本を代表するデザイナーがボトルとパッケージをデザインした。鏡のようなテクスチャーに、シンプルな曲線を用いたミニマルなフォルム。そのボトルが収められた箱は店頭に並べられたとき、空間に光をもを織りまぜる。
オウプナーズではデザインを担当した原研哉氏にお話をうかがった。視覚と嗅覚をやさしく刺激する「KENZO POWER」の魅力がここに明らかになる。

文=武井正樹
Photo by JAMANDFIX
撮影協力=ギンザ・グラフィック・ギャラリー



──「KENZOPOWER」のボトルとパッケージのデザインを手がけることになった経緯についてお聞かせください

今回の「KENZOPOWER」のひとつ前のプロジェクト「TOKYO BY KENZO」(2007年)の時に、KENZOのクリエイティブ・ディレクター、パトリック・グエージに声をかけていただいたのが、そもそものはじまりでした。
「TOKYO BY KENZO」はコンペティションでした。ボトルのデザインが「竹」をモチーフにしたものに決まっており、そこに「東京の夜の木のイメージ」をデザインするというやや難解な内容でした。
私は普段、他人が考えるイメージではモノをつくりません。自分のイメージを大事にしますし、誰に対して、どの値段で、どのような特徴の商品を、どのように売るのか、というオリエンテーションを受けるのが一般的です。しかし、パトリックには日本のデザインに対してリスペクトがあり、そして我々の意見も尊重してくれた。

ならばその「イメージ」と彼の気持ちに応えたいと、新宿や六本木の夜のイルミネーションのなかを歩き、デザインに取りかかりました。結局、コンペティションで私のデザインが選ばれず商品化はされなかったのですが、個人的には満足のいく仕事ができたと思っています。そして今回はご縁があり、コンペではなく「KENZOPOWER」のデザインの依頼がきたんです。

──香水をおさめたこちらのボトルですが、以前、原さんがデザインされた日本酒のボトル「白金」(はっきん)をコンパクトにしたそうですね

パトリックからは「白金のボトルのような」という要望が今回の依頼のなかにありました。といわれてもおなじデザインを使うわけにはいかないと、新たにデザインに取りかかりました。
しかし発想を変えて、このメタリックでミニマルなカタチは、自分にとってはボトルのイメージの原型のようなもので、あえておなじデザインを使うことのほうがラディカルでいいかもしれない、と思うようになりました。日本の酒とフランスの香水におなじデザインを供給し、それで両社が満足するならば、その物語がいちばんおもしろいなと。
すぐに「白金」の製造元である長野県の小布施堂に連絡し、その旨をお話しました。すると即座に「おもしろい」といってくださり、デザインはそのまま、「白金」を小さくして、今回の「KENZOPOWER」のボトルが誕生しました。

──大きさを小さくするだけでガラッと印象が変わりますね。原さんは香水というものに対して、特別な思い入れはありましたか?

僕は香水のデザインをずっとやってみたかったんです。その憧れは30歳ごろにウイスキーの仕事をしてしたころまで遡ります。度数の高く、強いお酒をデザインしていく作業は、「ちょっと恐いもの」を瓶に閉じ込めるようなスピリチュアルで、ある種、呪術的なことだと思っていました。そのなかでは非生産的なプロダクトを試してみたいと考えていて、通常とは違うデザインの精神性が必要だと感じていたのです。

そんな時に「もっと凄いものがあるかもしれない」と思ったのが香水です。お酒のように飲んだりしない分だけ感覚の抽象度が高く、純粋な趣向品としての絶対価値のあるものが香水。その価値はまさに美意識の固まりです。美意識を率直に表現することはデザイナーの理想というか、ひとつの憧れですから。

しかし日本ではモノをつくり、売るにしてもマーケティングが支配的になってしまいました。日本では香水よりも効能重視の基礎化粧品が主流なので、なかなかこういう仕事はできないと思っていましたから、今、こうして香水の仕事ができたわけで、とても恵まれていると思います。






kenzo


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