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2024年3月8日
理系女性のさらなる社会進出が期待される 神戸女学院大学の「生命環境学部」とは | KOBE COLLEGE
AIが世界的な注目を集めるようになった現在、大学に求められる学びとは一体どのようなものであるべきか。長年に渡ってリベラルアーツ教育を推し進めてきた神戸女学院大学は、理系分野で活躍できる女性を社会に輩出するべく、現在の人間科学部環境・バイオサイエンス学科を改組して「生命環境学部」を来年度からスタートさせる。先日行われた取材会に参加し、新学部設立の狙いと概要について講師陣から話をうかがった。
Photo & Text KAWASE takuro
社会で活躍する理系女性を後押しする新学部を目指す
リケジョなる言葉が生まれて10年以上が経つが、日本の理工系分野における女子学生の比率は相変わらず低く、OECD加盟国中で最下位である。さまざまな社会課題の解決に多様性とイノベーションが求められている現在、女性が担う役割はもっと大きいはずだ。そこで大学教育の現場ではどのような取り組みがなされているのだろう。
関西屈指の女子大学「神戸女学院大学」では、創立から150周年にあたる2025年4月に、文系出身者もチャレンジできる理系学部として「生命環境学部」を新設する。本学部設立の狙いは、建築を含めた環境科学と食物や医学を含めた生命科学を、データサイエンスを使って理解し、優れたコミュニケーション能力により社会へ発信できる女性の育成にあるという。
環境・生命・情報・科学をデータサイエンスで横断
新学部のルーツとなるのは、旧制専門部時代の1909年に設置された食物・衣服・住宅といった学科であり、新制女子大学となった1948年に設置された家政学部に、食品学・生化学・数理統計学・環境科学といった学問分野があったことに由来している。冒頭のあいさつでは、本学科長である高岡素子教授が「文理融合を目指すリベラルアーツ教育の歴史が新学部の発足につながっています」とコメント。
次に環境・バイオサイエンス学科に所属する高橋大輔教授が解説を続けた。「新学部では環境科学、生命科学、情報科学、サイエンスコミュニケーションという4つの分野を自由に学ぶことができます。その基礎的な技能としてデータサイエンスの知識や考え方を学び、自然科学のさまざまな分野に応用できるデータ処理と分析を学部生全員が習得できるようになります」。
専門的知識を習得しながら幅広い分野につなげる
環境科学ではウェルビーイングとサステナビリティを念頭に、自然環境や生物多様性の保全、環境と調和する建築や歴史的建造物の保全など幅広い対象をテーマとする。そうした研究の土台となるが、キャンパスを取り囲む岡田山の豊かな自然と、重要文化財にもなっているヴォーリズ建築の学舎である点も神戸女学院大学ならでは。
生命科学では食物を切り口に、身体の構造や食と健康の研究にあたる。細胞や遺伝子を使った生化学・分子科学の実験を通じて、日常生活におけるさまざまな課題解決のための技術や知識を養う。また、情報科学ではICT機器やAIを活用するためのプログラミングを含めた先端技術を習得し、サイエンスコミュニケーションではエビデンスを重視しながら、科学と社会をつなげるための能力を身につける。
これまでの実績があるから卒業後の選択肢が広がる
こうした学習の成果を得た卒業生たちには、企業や公的機関における研究者や技術者、理科の教員、歴史的建造物の保全や良質な住宅を提供する建築士、各種NPOの指導者など、幅広い分野での活躍が期待されている。新設学部の母体となる現在の環境・バイオサイエンス学科の卒業生の就職率(2022年時)はなんと100%。さらに10人に1人が大学院に進み、その半数は国公立の大学院に進学しているという実績も見逃せない。
通常なら理系への進学には数学が必須だが、本学部の受験時には数学が必須ではなく、入学後に必要な数学をしっかり学べることも、女子学生の理系への進学を促す要因のひとつになっている。さらに、同学部で学ぶことで二級建築士の受験資格が得られるなど、卒業後、実社会で活躍できるスキルを得ることが可能だ。女性の社会進出が理系分野にも拓かれることが大いに期待できる新設学部となっている。
問い合わせ先
神戸女学院大学
住所:兵庫県西宮市岡田山4-1
電話:0798-51-8585
*設置される学部等の名称・内容などは予定につき、変更される場合があります。