NAUT|ノート
Design
2015年4月22日

NAUT|ノート

NAUT|ノート

素材の持ち味を生かす、潔いデザイン

NAUT(ノート)は、名古屋発のファニチャー・レーベル。NAUTがつくりだす機能的で潔いデザインの家具たちは、いつの時代にも変らずに愛されつづける普遍的な美しさを醸し出している。

文=加藤孝司

永遠を映し出す、モダニズム・デザイン

「ミニマル」「スタンダード」をコンセプトに、2000年に名古屋で活動を開始したNAUT(ノート)。そのストイックなまでに家具の原型を突き詰めたようなかたちと、木のもつテクスチャーの豊かさを生かしたデザインで、東京にもファンの多いファニチャー・レーベルだ。

NAUTの店名の由来になった言葉は「NAUGHT」といい、「0(ゼロ)」のことである。ゼロはあらゆるものを生み出す原点であり、それはすべてのもののはじまりを意味する始原的な言葉だ。それはまたモダンデザインの礎を築いたバウハウスの教えを想起させる。バウハウスが突き詰めたのは、それまでのデザインの歴史をいったん停止させたところで再構築するデザインのゼロ地点である。

NAUTがつくりだす家具は、天然の無垢材を使用する。それを生み出す自然への配慮から木そのものを慈しみ、必要以上に端材が出ないよう木の造作を生かした無駄のないミニマルな家具が生み出される。“形態は機能に従う”という言葉があるが、それが置かれている空間にまで配慮がなされた家具が美しくないはずがない。

徹底的に無垢材にこだわることから生まれてくるのは、素材の持ち味を生かした家具というものの原型に近いピュアなかたちだ。家具は生活に密接に関わるものだから、それがつくられた風土がそのものの在り方にそのまま反映される。だからこの国の生活風土が必要とするものはこの国独自のものだし、そのことは北欧の家具や道具と比べても、材の特質や加工の具合にこの国の気候風土や暮らしぶりに適応させる配慮がなければならない。そしてそれはそれを仕上げるつくり手の存在そのものにも委ねられ、その生業という生きることの喜びに結びつく。

NAUTの「材を無駄なく使用する」というコンセプトは、機能主義や合理主義の考えを超えて、極めて今日的な問題にも密接につながっているのだ。それはまた地域性を超えてユニヴァーサルともスタンダードともいえる価値観を家具に宿らせることに成功している。それは装飾全盛のいまの時代にあって、モダニズムが本来もっていたはずの人間性を、モノ本来の価値観という視点から捉え直す意義ある試みに違いない。

素材の持ち味を生かす、とはNAUTのものづくりの姿勢を表す言葉として適切だと思う。いつの時代にも変らず求められるデザインとは、こんな潔さをかたちにしたような清々しいデザインだろう。

NAUT(ノート)
愛知県名古屋市千種区楠元町2-65-5 富士ビル1階
Tel. 052-752-0720
営業時間|13:00~19:00
定休日|日・月曜
http://www.naut.ne.jp/

           
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