連載・TOKYO PREMIUM BAKERIES|第17回 アオサン

連載・TOKYO PREMIUM BAKERIES|第17回 アオサン

カラダもよろこぶ、東京の自然派素材パン屋

第17回 AOSAN|アオサン

「大きな時計」 が目印の、行列のできるパン屋さん

東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第17回は、京王線・仙川駅からほど近い公園の向かいにある『アオサン』。お店の内装や外装も手づくりでスタートした、心なごむパン屋さんです。

取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ

試行錯誤を繰り返し、本当につくりたいパンだけをメニューに載せる

『アオサン』は、京王線の仙川駅から南側をつつじヶ丘方面に歩いて4分ほどの児童公園の真向かいにある。店主の奥田充央さんはフランス菓子店とドイツ菓子店、さらに天然酵母パンの老舗「ルヴァン」で修行を積み、2006年2月に、やはりパン職人だった奥さまとともに『アオサン』をオープンした。

店頭にはこれといった看板はなく、かわりに目を引くのが、小学校の校庭で見覚えのある大きな時計。この場所は以前理容室で、前の公園で遊ぶ子どもたちが、店内の時計をのぞき込んでは時間の確認をしていたそうだ。それを知ったご主人の奥田さんは店をオープンするときに、どうせつけるならと一番大きな時計を店頭に掲げた。いまではすっかりお店のシンボルとなり、近所では「大きな時計のあるパン屋さん」で通っている。

『アオサン』では、ハード系のパンには小麦と少量の全粒粉からおこした天然酵母を使い、食パンなどには無添加のドライイーストと、メニューによって酵母を使いわけている。大人気の「角食パン」は、仕込んでからパンになるまで3日間かかる、試行錯誤の末に完成した奥田さんのオリジナルレシピ。独特の甘みと香りがあり、奥田さんは「角食パンはどうしてもこのレシピでつくりたかった」のだそうだ。生産量にも限りがあるため、朝と午後の30本ずつを求めて、行列ができてしまうほどだ。

一方、天然酵母を使った写真の「ノアカンパーニュ」や「アヴリーヌ」も、重すぎず、それでいて小麦の味と香りがしっかりと感じられる、食べごたえのあるパン生地だ。奥田さんいわく、「あっさりしているけれど、酵母のちからはなかなか強いんです」とのこと。とくに「ノアカンパーニュ」には、くるみがどっさり入っていて、ハード系のパン好きにはたまらない。

また小さなハート型の「レーズンサンド」は、ラム酒のきいたレーズン入りのバタークリームを、クッキー生地でサンドしたもの。お菓子の修行経験もある奥田さんらしい一品で、ちょっとしたプレゼントにも適している。

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「パンは、おなじ材料でもつくり方はいろいろで、決まりはありません。どれだけ酵母や製法について研究しているかによって、味やできあがりがちがうものです。僕は、“仕事は稼ぐための手段”とは割り切れず、どうしても“やりたいことをやりたい”タイプ。パンもお店のスタイルも、本当に自分の思い通りにつくって、それが地域のひとたちに受け入れてもらえた。ありがたいことです」

たとえば、店内の花瓶と壁とライト。ナチュラルで親しみやすい雰囲気のなかに、『アオサン』のパンづくりにも通ずるセンスと主張が感じられる。

決して押し出しが強いわけではないが、まっすぐでブレのない奥田さんの言葉はあたたかく力強い。そのすっきりした印象は、『アオサン』のパンそのものにもあらわれているようだ。

香ばしい焼きたてのパンを、目の前の公園で仲良く食べて行く親子連れも多いという、地域密着の『アオサン』。身体に優しい素材を使って、心をこめて焼かれたパンが、ふっと心がなごむ空間に並ぶ。

取材の最中、小さな男の子が店内のカフェスペースにちょこんと座って、買物中の母親を待っていた。男の子が「いい匂~い」と無邪気につぶやくのを聞いて、なんだかこちらもうれしくなってしまった。「こんなパン屋さんが近所にあったらいいな」と思わずにはいられないそんな一軒だ。

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AOSAN
『アオサン』

東京都調布市仙川町1-3-5
Tel. 03-5313-0787
営業時間|10:00~18:00
日・月・休み
(京王線・仙川駅より徒歩4分)