アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(2)|JOHN LOBB
JOHN LOBB|ジョンロブ
アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(2)
パウラ・ジェルバーゼが語る、ジョンロブの美しいプロセス
ジョンロブのアーティスティック・ディレクターに就任したパウラ・ジェルバーゼさんは、インタビュー前半で「今回の変化はすべてブランドの原点に対するリスペクトによるもので、いずれも事実に基づくもの」と力強く語った。インタビューの後半では自身でファッションブランドも手がける彼女のデザイン観を探る。
Photographs by SUZUKI Shimpei Text by KAJII Makoto (OPENERS)
男性にとって“儀式”として重要なこと
――ファーストコレクションとなった「ロンドンコレクション メン」2015-16年秋冬コレクションでは12モデルの新作を発表されましたが、パウラさんのお気に入りを教えてください。
どれか一足……というなら、やはりジョンロブで初めてデザインしたモデル「COMBE(コーム)」ですね。創業者ジョン・ロブの旅をたどると、まず彼は自分が履くブーツをつくってロンドンへの旅に出た。ジョンロブにとってブーツ、とくにレースアップブーツは重要なアイテムなので、最初に手がけたのです。
男性にとってレースアップをしっかり結んで履くというのは“儀式”として重要なこと。このコームはさらにバックルがくわわって儀式の手順が多くなりますが、これは旅にとても適したデザインでもあるのです。
ジョンロブならではの、ワンスキン=ワンシュー
――もう一足教えてください。
ジョンロブのノーザンプトンの工房の技術を結集し、ハンドメイドの良さという点で、カーフの一枚革仕立てのモデル「COAST(コースト)」、イヤーモデルのの「FOWEY(フォウェイ)」を挙げます。どちらも美しいプロセスを経て、技術がきちんと表現されている彫刻のような靴ですが、「ワンスキン=ワンシュー」、1枚の革で1足(片足)のみ生産するラグジュアリーな素材遣いはジョンロブならではだと思います。
私は素材にパッションを感じています
――ファッションデザインと靴のデザインの共通点はありますか。
私にとってのデザインプロセスは、素材から考えることから始まります。靴も服も、工房や工場と一緒に、「素材が何になるべきか、何をつくるべきか」を深く読み取っていきます。真摯に訴えかけることで、やがて素材が語りかけてくるのです。ジョンロブでも革職人とともに、クオリティを見極めて、色や重さからじっくりと吟味していますね。
また、カッティングやパターンも重要で、モデル「コースト」のようなホールカットの1枚革ではグラフィックな部分も大切。かたちとして立体で成立しているのは靴もファッションもおなじですが、パターンを平面に置いた状態であっても美しくあるべきだと思っています。
JOHN LOBB|ジョンロブ
アーティスティック・ディレクター、パウラ・ジェルバーゼが語る新生ジョンロブ(2)
パウラ・ジェルバーゼが守っていく、ジョンロブの伝統と革新
靴も服も、快適に一日を過ごすためのもの
――ファッションと靴のデザインにおいて、機能性も見逃せませんよね。
私のファッションブランド「1205」では着心地をとても大切にしています。自分のキャリアは、サヴィル・ロウのテーラーでスタートしましたが、スーツのビスポークで大切なのは、それが身体のためにつくられ、身体とともに的確に動く、フィットするということ。それは靴もまったくおなじことなのです。
また、テーラリングで重要なのはカットで、ミリ単位で着心地が変わります。英国の紳士靴には重くて堅牢といったイメージがありますが、ジョンロブのノーザンプトンの工房は技術が高いため、私たちが求めるモダンなフィット感を生み出すことができました。
――男のスタイルにとって「靴」はどういう役割を果たしますか。
私は男性のワードローブはユニフォームのようなものだと考えていて、それはブランド「1205」に共通するテーマでもあります。そのなかにおいて靴は、その日のコーディネートを完成させるキーアイテムで、家を出るときには最後に身につけ、帰宅すると最初に脱ぐもの。服とはもちろん、あなた自身と密接なつながりをもち、保護してくれるものでもあります。
また、男性はおなじメーカーの靴を履いているひと同士は、どこか「秘密クラブ」のようなシンパシーを感じるようで、ジョンロブを履いていると、「お、良い靴を履いているね」と瞬間的に繋がりを感じるというのがおもしろいですね。
あなたによりよいブランド体験を……
――では、日本のジョンロブファンにメッセージを。
モノとしての美しさと、ハイレベルな職人技が込められたジョンロブを楽しんで履いてください。このブランドにおける私の役割は、ジョンロブを守る人=プロテクターでもあります。クリエイティブとは変化させること、だと多くのひとが思っているかもしれませんが、私はジョンロブの核心に潜んだ価値に光を当てていくことで、お客さまによりよいエクスペリエンスを味わってほしい。そのためにも、ブランドへのリスペクトを込めた、伝統と革新に満ちたストーリーをこれからも語っていきたいと思っています。
ジョンロブの靴は、あなたにとって、その日、あるいは一週間。旅のあいだや会議の場で、つねに心地よい状態でいるための大切なパートナーです。ひとの手から生まれるものだからこそ、ひとをやさしく包み込んでくれる、という理想的な靴との関係を楽しんでいただけることを願っています。
パウラ・ジェルバーゼ|Paula Gerbase
パウラ・ジェルバーゼは、サヴィル・ロウのテーラーでキャリアを積んだ後、2010年に、ピュアで抑制された物質主義をコンセプトにしたブランド「1205」をスタート。カット、素材、プロポーションを何よりも重視し、まるで喧噪のなかの静寂を見つけるように、本質的要素を探求することによって伝統的なクラフツマンシップを際立たせる。2014年7月、ジョンロブのアーティスティックディレクターに就任。
ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
http://www.johnlobb.com/jp