新型パサートに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2014年12月16日

新型パサートに試乗|Volkswagen

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント

“らしさ”を磨き上げた8代目

フォルクスワーゲン新型パサートを試乗

ことし7月にフルモデルチェンジし8代目となった、フォルクスワーゲン「パサート」。発表と同時に設定されたスポーティなRラインにくわえ、10月のパリモーターショーでは、無給油で1,000km走行できるプラグインハイブリッドモデルが追加されたのも記憶にあたらしい。来年には日本への上陸が期待されるその新型パサートに、小川フミオ氏がイタリア・サルディニア島で試乗した。他ブランドでは同クラスのサルーンたちがスポーティやラグジュアリーを強調してゆくなか、パサートはどのような進化を遂げたのか。

Text by OGAWA Fumio

ひと目でパサートとわかるエクステリア

累計2,200万台。もっとも売れているフォルクスワーゲン「パサート」がフルモデルチェンジを受けた。伊サルディニア島で、このB8と呼ばれる8代目に試乗。洗練度が大きく向上しているのが印象に残った。

2014年9月に発表された新型パサート。ボディは、セダンと、ヴァリアントとよばれるステーションワゴンの2本立て。エンジンは、ガソリン1.4リッター4気筒、ディーゼル2リッター4気筒(出力にバリエーションあり)。駆動方式は前輪駆動と4MOTION(フォーモーション)と呼ばれる総輪駆動が選べる。ギアボックスはMTと、DSGとよばれるデュアルクラッチが用意されている。

「デザイン、技術、エンジンから細部にいたるまで、すべてがあたらしい。重量を最大85kg削減し、燃費を20パーセント削減している」。ポルトチェルボというリゾート地のホテルを舞台にした発表会の席上で、ジャーナリストを前に担当者は誇らしげに語った。

Volkswagen Passat 1.4TSI|フォルクスワーゲン パサート 1.4TSI

Volkswagen Passat 1.4TSI|フォルクスワーゲン パサート 1.4TSI

見た目は、多くのひとがすぐにパサートとわかることを重視したという。しかしボディパネルの面は歪みがほとんどなく、側面のキャラクターラインは触った手が切れそうなぐらいエッジが立っている。その質感の向上ぶりは、生産技術にたっぷりとお金を注ぎ込んでいることの証明だ。

高級感がすぐに感じられる。これまでより、もうワンステップ、クルマのグレードが上がったように思われるのが、セダンとヴァリアントとともに共通する印象だ。走りも相応によくなっている。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント

“らしさ”を磨き上げた8代目

フォルクスワーゲン新型パサートを試乗 (2)

新型パサート最大の美点

パサートは、2013年だけでも世界中で110万台も販売したという。でも日本だと、大きさ(利便性)と燃費効率を考えて理知的に選ぶひとはいても、いまひとつブランド性で弱いところがある。

個人的には、エモーショナルな要素をあえて取り込まないところが、ザ・フォルクスワーゲンというかんじで気に入っている。新型の最大の美点は、あえてスポーティ路線とかに振らず、従来のよさを大きく伸ばしたところにある。

それは、トルク感が増すいっぽうで燃費が改善されたという1.4リッターガソリンエンジンしかり、よりよくなった室内の静粛性しかり、ハンドルは軽くなったいっぽう正確性が増したステアリングしかり、である。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート

150psの最高出力と、250Nm/1,500rpmの1.4リッターTSI(ターボ、ガソリン、直噴という意味)は、数値で想像できるとおり、低回転域で大きなちからを出す。加速性もよくなっているうえ、ギアチェンジをさぼっても運転できてしまうほどだ。最初マニュアルで乗ったが、50km/h前後の速度域なら加減速があっても3速いれっぱなしで問題ない。もちろん引っ張ればレッドゾーンまでトルクがとぎれることなく、きっちりまわる。

フォルクスワーゲン車に1.4リッターエンジンが搭載された当初は、“こんな小さい排気量で大丈夫かな”と心配になったものだが、洗練を重ねてきており、すばらしい仕上がりになっている。後述するがディーゼルの2リッターTDIもやはり素晴らしいキャラクターで、ここにフォルクスワーゲンの技術力の真骨頂を感じるのだった。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート

Volkswagen Passat 2.0TDI 4Motion|フォルクスワーゲン パサート 2.0TDI 4モーション

2020年までにCO2排出量が95g/kmと定められた欧州委員会の決定を受けて、いま欧州メーカーは必至に対策に取り組んでいる。あたらしい1.4TSIを載せた今回のパサートで115g/kmというので、ハードルは越えていないものの、ゴールに着実にちかづいているかんじだ。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント

“らしさ”を磨き上げた8代目

フォルクスワーゲン新型パサートを試乗 (3)

パサートに興味をもつひとを満足させる

「より短く、より広く」と謳われる新型パサート(セダン、ヴァリアントとも)のボディサイズを従来型と比較すると、全長は2mm短縮されて4,767mmであるのに対してホイールベースは79mm拡大されて2,791mmとなっている。いっぽう、全高は14mm低くなって1,456mmに、車幅だけは12mm拡大して1,832mmだ。

「さらに魅力的な要素をくわえるとしたら、目をみはるようなプロポーション」と語るのは、フォルクスワーゲンでデザイン部門を統括するクラウス・ビショフ氏。

「ゴルフ」から採用されたエンジン横置き用プラットフォーム「MQB」をパサート向けに大型化して使ったシャシーに載せられた車体は、キャブバックワードデザインが採用された。つまり、キャブ(キャビン)をやや後退させて、そのぶんボンネットを長くとったスタイリングである。

Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント

その理由としてビショフ氏は、「パワフルかつスポーティなキャラクターを表現したかった」と述べている。その目的は、プレミアムクラス(メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」)に匹敵する印象を生むことと説明される。「私たちはより上位のクラスへジャンプアップしたいと考えました。ビジネスセダンへと発展してゆける可能性を備えた形状を求めたのです」。

その結果はあきらかだ。サルディニアの道を走っていると、凹凸をていねいに吸収するサスペンションといい、ショックを吸収するクッション性のいいシートといい、さらにクリーンで広々感のある前後席といい、パサートに興味をもつひとを確実に満足させてくれる出来映えなのである。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント

“らしさ”を磨き上げた8代目

フォルクスワーゲン新型パサートを試乗 (4)

ディーゼルモデル導入の可能性も高い

今回の試乗では、さまざまな組合せを試すことができた。1.4TSIのDSGをはじめ、150psの2リッターTDI(6MT)、そして240psの2リッターTDIの4MOTION(DSG)だ。日本には、おそらく1.4TSIとその装備のちがいによるバリエーションを皮切りに、つづけて(ついに)TDIが入ってくる見込みだという。ちなみにすべてのモデルが前輪駆動のDSG搭載モデルになるそうだ。

さきにも触れたようにTSIエンジンのフレキシビリティには感心したが、TDIもまたすばらしいできのパワーユニットだ。

240ps仕様は、最大トルクが500Nmもあり、低速ではほとんどアクセルペダルを踏まないでも力強い加速をみせるいっぽう、5,000rpmまでしゅんしゅんまわるのに驚くばかりだ。足まわりもしっかりしており、ハンドルをまわす速度に応じてギア比を変えるプログレッシブ ステアリングのオプションを備えていたこともあり、カーブ路で楽しさを感じるのだった。

Volkswagen Passat 2.0TDI 4Motion|フォルクスワーゲン パサート 2.0TDI 4モーション

Volkswagen Passat 2.0TDI 4Motion|フォルクスワーゲン パサート 2.0TDI 4モーション

いっぽう150psでもTDIはじゅうぶんなちからを備える。室内で耳をこらすとディーゼルエンジン独特の爆発音が聞こえるが、総じて静かで、ロードノイズがわずかに聞こえるぐらいだ。そして、こちらも最大トルクは340Nmと余裕があり、加速感はかなりのものだ。

フォルクスワーゲン グループ ジャパンでは、2015年夏までに1.4TSIを、その翌年をめどにTDIを日本に導入する計画を立てている。価格は未定だが、現行モデル(約340-440万円)より少し上がるのではないだろうか。

Volkswagen Passat|フォルクスワーゲン パサート
Volkswagen Passat Variant|フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント

“らしさ”を磨き上げた8代目

フォルクスワーゲン新型パサートを試乗 (5)

豊富な安全装備が用意される

新型パサートの安全装備は豊富。これも現行モデルとの大きな差だ。オプションも含まれるが主なものを紹介しておこう。

「エリアビュー」は4台のカメラの画像データリアルタイムにプロセッシングしクルマの周囲360度を鳥瞰した画像をスクリーンに映し出す機能。障害物などを認識に役立つ。死角にいる車両の存在を警告する「サイドアシスト」には、駐車スペースなどからの後退時に左右から接近してくる車両を検知して警告する「リアトラフィックアラート」がくわえられた。

カメラからの情報による「レーンアシスト」は危険車両の方向に操舵しようとすると車両が自動的に軽くハンドルを押し戻すシステム。さらに車線の逸脱を感知してもハンドルを自動的に操舵してそれを予防する。

先行車両への自動追随および自動ブレーキ機能である「アダプティブ・クルーズコントロール」と「レーンアシスト」が組み合わされて搭載されている場合、車両をレーンの真ん中もしくはドライバーが好む位置を学習して維持する。制動と加速と操舵を自動で制御する場合、「交通渋滞アシスト」として機能するのだ。

「歩行者検出機能つきシティ・エマージェンシーブレーキを含むフロントアシスト」は、衝突が迫っていると車両が判断した場合、ドライバーに警告を送る。かつ衝突を避けるために自動ブレーキが作動する。対象は車両ばかりか、歩行者も含まれるのである。

安全だけでなく、コンピューター技術は、利便性拡大にも寄与している。「ミラーリンク」を使えばアンドロイド携帯端末とのアプリケーションの共用もできるし、車両の状態をスマートフォンに転送してチェックすることも可能だ。これを昨今ではインフォテイメントシステムと呼ぶが、こちらの分野でも新型パサートは大きくモダナイズされている。

           
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