岡部美代治|Vol. 1 化粧水をコットンでつける本当のワケ
Beauty
2015年3月6日

岡部美代治|Vol. 1 化粧水をコットンでつける本当のワケ

“コットンに500円玉大の…”、“顔全体をパッティング…”

Vol. 1 化粧水をコットンでつける本当のワケ

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生に関わってきた岡部美代冶さん。
女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

語り=岡部美代冶まとめ=オウプナーズPhoto by Jamandfix

毎月のように新商品が登場する化粧水。同じアイテムでも、ブランドやテクスチャーごとに、説明書で指南する“使用方法”は千差万別である。しかしデイリーに使うものだけあって、どの商品でも自分が馴れたつけ方をしているひとが多い。使い方より“肌に入った”感があればOK? ……いえいえ、その我流、じつはソンしているようです。

Q.岡部さん、化粧水を説明書通りに使うことは、そんなに大事ですか?

岡部 化粧水はどれも似たような水分に見えますが、当然のことながら、商品ごとに浸透成分などの配分が異なります。そして……たとえば“500円玉大の量をコットンにつけ、よく叩きこむように……”などと説明書に目安が書かれている場合がありますが、これは、しっかりとパッティングしたあとに、コットンに水分が残っている状態を想定しています。

コットンに“化粧水”が残っているのではありません。説明書にある目安の量をコットンにふくませ、充分な回数パッティングをする。すると、肌に有効成分だけが入り、コットンには不要な水分が残るのです……これがコットン使用を薦める化粧水の構造です。

Q.では、コットンを使わず手のひらでつければ一石二鳥ですね。

岡部 化粧水の有効成分でハンドケア効果もあると? それはあまり期待できません。手のひらは、あまり吸収しないんですよ。だから、コットン使用をすすめている化粧水を手のひらで顔につけると、ベタベタ感が残ることがあります。本来ならコットンに残るべき水分が、吸収力の弱い手のひらに残るので、そういう感覚になるのでしょう。さらにその手で顔を触ってみて、“なんだかベタつく”と思ってしまう……この感触はもう、その化粧水の効果とは異なるものです。

“コットンに残るからもったいない”という考え方は間違いです。化粧水は手のひらからこぼれやすいテクスチャーでもあるので、きちんとコットンを使った方が、結果的にリーズナブルだったりします。大丈夫。コットンを使って、コットンにまだ残っているような感じがしても、肌にはちゃんと必要な成分が入ってます。

Q.“手のひら使用”の化粧水というのは?

岡部 「手で使ってください」という化粧水は、当然、余計な成分が手のひらに残らない処方になっています。たとえば、とろみのあるテクスチャーでも、肌につけるとスッと入ってスッキリするものもあります。これはとろみで贅たく感を感じてもらい、肌にのせた途端スッキリさせることで“肌に入った”感を出し、“コクがあるけれど浸透が早い”と感じてもらいたい、メーカー側の狙いもあります。

化粧水とその使い方は、言い換えれば“絵具と筆”の関係です。筆で染み込ませながら描く水彩画と、パテを使って盛り上げるように描く油絵があるように、おなじ化粧水といっても、その商品の構造次第で使い方が異なるからです。

ただし、基本的に化粧水は手のひらだけでのばしていくことが難しいですよね? 顔には凸凹がありますから。だからまんべんなく均一に近い状態につけられるように、多くのメーカーがコットン使いを薦めています。

Q.叩きこむという動作や回数は、なにを意味しているんですか?

岡部 よくカウンターで販売員各社が薦めるパッティングの回数というのは、“この回数分パッテングすれば、ほとんどの場合、必要な成分は入る”という目安です。

「叩きこむ」という使い方は、まずパッティングすることで肌の内部に入る、血液が循環する、叩くという振動で肌が引き締まるという効果が狙えます。

さらに、叩くという動作で“肌に何かをした”という充実感も得られますし、血流を促進するというのも事実。それはもう物理的な効果でしかありませんが、化粧品の効果と相乗的になるのは事実です。

2009.04  「生命力あふれる緑に惹かれて」

Q.つまり、その商品にふくまれる成分次第で使い方が決まると。

岡部 いいえ、逆です。コットンというのは基本的に「水」を吸い込む素材です。その素材に水を吸い込ませながら、入れたい成分をしっかり均等に肌に入れることができるものです。研究所で商品の処方を考える研究者は、その商品がどのように使われるものなのかによって、成分の処方を変えます。だからコットンを使うか否かで商品のつくり方はまるで異なります。

そして一社が薦める使い方は、新商品ごとに異なるのではなく、基本的におなじです。新商品が出るたびにコットンか否かをクルクル変えることはあまりないと思います。私はアルビオンの研究所にいましたが、アルビオンの場合、コットン派でしたね。弘法は筆を“選ぶ”んです(笑)。

Q.コットン選びも難しそうですね。

岡部 化粧水とコットンは、おなじ会社のものを使うのがベストです。“コットンは高級なほうがいい”“自然素材のほうがいい”と鵜飲みにしている方も多いのですが、各社、自社が出している商品の効果が最大限に発揮できるコットンを開発しているのです。開発者も研究者も、使い方には相当こだわっています。ですから、使い方にこだわっている商品ほど、そのとおりに使うべきです。

化粧品のこだわりはモノづくりのこだわりですから、使用方法は、研究者のその商品への思い入れとメッセージ性の高さの表れでもあります。“自由に食べてください”と言われるより、“こういうふうに食べてください”と言われたとおりに食べた方が、その味がわかったりするじゃないですか。使用方法もおなじことです。

Q.やはり使用方法に倣わないと効果は……。

岡部 まぁ、我流の使い方をしても、商品の設計者が想定している100%のうち、70%くらいの効果はあるでしょう。ただ、商品の使用方法というのは、いわば開発者からのラブレターみたいなものなんです。そのラブレターにどれほど心が入っているかということも商品を選ぶひとつの選択肢になりますし、効果を最大限に発揮してもらいたいというためのものですから、倣わないテはないと思いますよ。

岡部美代冶オフィシャルサイト
「美」の科学 「ビューティサイエンスの庭」
http://www.kt.rim.or.jp/~miyoharu/

           
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