シロッコ|Scirocco|Volkswagen Scirocco:The Car makes Style. 躍動するランドスケープデザイン
CAR / FEATURES
2015年3月19日

シロッコ|Scirocco|Volkswagen Scirocco:The Car makes Style. 躍動するランドスケープデザイン

Volkswagen Scirocco|フォルクスワーゲン シロッコ

Scirocco × ランドスケープデザイナー 団塚栄喜

躍動するランドスケープデザイン

クルマの美しさにはさまざまな決定要素がある。エンジンなど駆動系と室内空間をバランスさせたパッケージング。車体とキャビン、それに車輪の配置によるプロポーション。線や曲面による車体の表情。いろいろあがる。フォルクスワーゲンが2008年に発表した2ドアクーペ、シロッコは、パッケージングがうまく、均整のとれたプロポーションで、緊張感あるボディ面をもつ。スポーティなイメージは「素性のよさ」を土台に成立している。

文=小川フミオ写真=五十嵐隆裕

なぜシロッコはクリエイティブか?

「ヘッドライトからフェンダー、そしてドアへと手のひらを滑らせると、なだらかな曲面のさまざまな方向への動きに気がつきます。見る角度や光の当たる角度が変化すると、複雑な面構成が強調され、躍動するアスリートの筋肉を彷彿とさせます」とフォルクスワーゲンが謳うとおりだ。

シロッコのデザインを成立させる努力は並大抵ではないだろう。高品質の工作精度とともに、金属の塊をくりぬいたような車体のもつ力強さは、美術から工芸までをふくめた「アート」と感じられる。

シロッコ|Scirocco06

駐車場の表面には川崎の地図や、かつて東芝の工場が作っていた製品をパターン化している。メッセージもおもしろい。

シロッコ|Scirocco03

千年の森と題された、フォルクスワーゲン ビートルをモチーフにした作品。レモンの木をはじめ白い花を咲かせる草木ばかり。

美しいクルマのよさは、もつよろこび、乗るよろこびを感じさせることだ。シロッコは、乗るひとの気持ちを高揚させる。創造とは、たんにモノをデザインするのではなく、環境すべてに対する働きかけだ。だから運転する行為も創造的といえる。言い方を変えると、創造的でなくてはならない。美しいものとともにドライブすることの重要性はそこにある。それゆえにシロッコはクリエイティブだ。

今回紹介するクリエイターはランドスケープデザイナーの団塚栄喜氏。1999年に自身の事務所「アースケイプ」を立ち上げた。公共・商業施設及び、国内外の大規模なコンプレックス、レジデンス、学術施設など数多くのランドスケープを手がけ、大きな話題を呼んできた。ランドスケープデザインは、環境への働きかけや、環境とひとをつなぐ創造的な仕事だ。

ランドスケープデザインという創造

団塚栄喜氏の手がけたおもな作品を列記すると以下のようになる。晴海トリトンスクエア(2000年)、丸の内オアゾ北口ビルディング(2004年)、ららぽーと豊洲(2006年)、パークシティ豊洲(2007年)、三井アウトレットパーク入間(2008年)。都市と建築とひととを結ぶのがランドスケープデザイン。クルマとも共通するものがある。

シロッコ|Scirocco12

ルーファ広場で動線が交差する。さまざまな仕掛けがここにもらしつらえられている。

「ランドスケープデザインにあたって意識することは、ひととひとの触れあう仕掛けをうまく作る、自然を広げる、その土地に対して近隣のひとがもっていた“記憶”をちりばめる。それが“訪れるひとに施設のなかで長い時間を過ごしてもらいたい”という事業者の願いをかなえることでもあります」。団塚栄喜氏は語る。

団塚栄喜氏の代表作のひとつに数えられる川崎駅西口に隣接する「ラゾーナ川崎プラザ」。もとは東芝川崎事業所(旧堀川町工場)で、数々の機械や電化製品を送り出してきた。商業施設が多く入るが、同時に都市の再生が重要なテーマだったという。住宅地のほうからは階段を使って上がり、広場をとおり、駅へと向かう。広い敷地には、数々のユニークな仕掛けがほどこされる。

クルマで訪れたゲストがまず目にするのは、「千年の森」と題された団塚栄喜氏による作品。「フォルクスワーゲン タイプ1」、いわゆるビートルをモチーフにしている。白いワイヤを曲げていって、ビートルのシェイプを作っている。シルエットはビートルだが、よく見るとワイヤは草木の模様を構成。しかもビートルのなかには草花が植えられ、天井からはレモンの木が大きく伸びている。

「やがてここから森ができればいい、という思いを込めました。フォルクスワーゲン ビートルを選んだのは、もっとも人気があって、誰もが知っているクルマだからです」

Volkswagen Scirocco|フォルクスワーゲン シロッコ

Scirocco × ランドスケープデザイナー 団塚栄喜

躍動するランドスケープデザイン

クリエイターが観た、シロッコの魅力

ランドスケープデザインにあって重要なことは記憶をよびさますこと。観たひとが「あれ、これはなんだったっけ」と思い、自分の記憶を探り、そこからあらたな感覚が生まれる。それをつねに念頭に置いていると話す団塚栄喜氏。ラゾーナ川崎プラザでも、駐車場を上から俯瞰すると、川崎の地図やかつての工場が送りだした電気器具がパターン化されて地面に描かれているのがわかる。

駅と町を結ぶ線が交差する場所は「ルーファ広場」と名づけられ、クロスする2つの通りは、1つは「都市」、もう1つは「自然」がテーマとなっている。たとえば、通りに置かれたベンチ。川崎の街と自然の風景を色相分解し、それぞれの色がほどこされている。多摩川が流れる川崎だけに緑にも恵まれている。曲面を使う「自然」のベンチはパステルカラーで、四角い「都市」のベンチはクールな色づかいだ。

シロッコ|Scirocco04

クルマ好きの団塚氏も、デザイン、性能ともにシロッコを絶賛。

団塚栄喜氏にとって気になっているクルマ、それがシロッコだったという。クルマ好きとして知られる氏は、シロッコが「Irocコンセプト」という名のスタディモデルとして発表されたときから注目していたと語るほど。

「シロッコの魅力のひとつはデザイン。プロポーションがよくて、見るからに走りそう。それにプロ好みといえそうなディテールにも凝っています。リヤコンビネーションランプの立体的な造形とか、ボディ側面のキャラクターラインとか。Aピラーとボンネットあたりの面のつなぎ方もきれいです。ムダがなくてイヤなところがない」

運転したあとも「期待どおりだった」と団塚栄喜氏は顔をほころばせる。「エンジンはよく回るし、ハンドリングはスポーティ。加速がよくて、ハンドルを切ったときに車体が曲がる感覚もよい。見た目から期待するとおり、運転して楽しいクルマ。デザインと操縦性ともにすぐれています」と絶賛。

クルマと環境、ランドスケープと環境

1.4リッターTSIツインチャージャーエンジンを搭載する「シロッコTSI」は、平成17年排出ガス基準75%低減をクリア(4つ星を取得)。平成22年度燃費基準値プラス15%を達成した。エコカー減税対象車となっている。環境ぜんたいに目配りをするエコロジーは、クルマの燃費や低公害性にはじまり、ランドスケープデザインにいたるまで、クリエイターにとって重要なテーマになっている。

「シロッコの環境適合性のよさについては知っています。デザインと操縦性能と環境性能の3つが、現在のクルマにとって重要で、それがクルマの価値につながっています。地球とどうつきあっていくか。いま誰もが考えていかなくてはいけない時代ですから」

シロッコ|Scirocco11

四季の道と名づけられ、「春」「夏」「秋」「冬」のテーマに沿い、四季折々に花を咲かせる樹木が植えられている。

シロッコ|Scirocco13

ルーファ広場に設置されたベンチは、「都市」と「自然」をモチーフに色づかいまでふくめてデザインされている。これは「都市」のベンチ。

クルマは環境にとって重要な役割を果たす存在だ。都市を構成する大切な要素で、クルマなくしては現代の生活は成立しないからだ。そこでランドスケープデザインとも密接な関係をもつ。団塚栄喜氏はそこに注目して、駐車場のデザインにも力を入れている。

団塚栄喜氏の「ラゾーナ川崎プラザ」を例にとっても、「千年の森」など、緑化や自然との共生のメッセージを視覚的に仕掛けている。クルマに乗るひとに、環境のことも考えさせようとしている。そこにあって、クルマ自体が自然との共生を目指していることは、大いに評価に値する、と語る。

フォルクスワーゲン シロッコは、たんに移動の道具にとどまらない。さまざまなポジティブな感情を喚起するデザイン、運転することを楽しませてくれる操縦性能、そして、自然との共生を目指し未来への道のりを切り開いていこうとする環境適合性。すべてで高いレベルを目指し、我われの生活にとって大事なパートナーとなっている。それゆえ、クリエイティブだ。

団塚栄喜|DANZUKA Eiki
1963年大分県生まれ。環境美術研究所を経て1999年アースケイプ(www.earthscape.co.jp)設立。公共施設や、国内外の商業施設、レジデンス、学校など大型施設のランドスケープデザインを数多く手がける。従来の枠を超えた独創的な作品が、高い支持を得ている。アースケイプが行うデザインを通じた社会貢献活動MHCP(メディカルハーブマンカフェプロジェクト、www.mhcp.jp)は2010年グッドデザイン賞を受賞するなど、まちづくりやランドスケープデザインをその一翼に、枠を超えたさまざまなプロジェクトが進行中。

           
Photo Gallery