連載・柳本浩市|第35回 「代官山BOOK DESIGN展」について語る

連載・柳本浩市|第35回 「代官山BOOK DESIGN展」について語る

How to see design

連載・柳本浩市|第35回 「代官山BOOK DESIGN展」について語る

代官山蔦屋書店の自主企画「代官山BOOK DESIGN展」が、5月25日(日)まで開催中だ。国内外で2013年に発行され、蔦屋書店で販売している書籍の中から、印刷、レイアウト、装丁の視点で、アート・デザイン売場のコンシェルジュが選定。厳選した30冊を、展示・販売している。

Text by YANAGIMOTO Koichi

2013年発行の“グッドデザイン・ブック”を紹介する展覧会

日本ではなじみが薄いが、ヨーロッパでは毎年前年に発行された書籍の中から「最も美しい本」を選定するイベントは、昔からおこなわれている。

特にスイスやオランダ、ドイツは世界的に知られている。この3カ国に共通しているのが、過去にプロテスタントが盛んだった国なのだ。プロテスタントでは聖書に忠実である事が最も重要であったことから、聖書を普及させること、それがすなわちキリスト教を広げる大きな手段であった。

ドイツのヨハネス・グーテンベルグが、1455年に世界で初めて活版印刷で制作した書籍も旧約・新約聖書であった。そういった理由で、スイス、オランダ、ドイツでは特に印刷・出版が盛んな国となり、キリスト教の勢力が弱まって以降も、印刷は発展をつづけた。


連載・柳本浩市|第35回 「代官山BOOK DESIGN展」 05

Rijks Museum

19世紀末頃には印刷会社がアーティストやデザイナーのパトロンとなり、芸術活動を支えながら、芸術家達が望む印刷技法を開発していった。オランダでは中小の印刷会社組合が週報を発行し、毎年クリスマスの特別号では、その年に話題のデザイナーにコンセプトから編集・デザインまでをすべて監修させ発行する機関誌があり、戦前から現在まで続いて刊行されている。

もちろん、このような環境はデザイナーの活躍の場も広がってくる。イルマ・ボームはそういったデザイナーのひとりだろう。今回の「代官山BOOK DESIGN展」でも選書されているし、オランダのベストブック・オブ・ザ・イヤーではここ10年以上常連になっている。

イルマ・ボームは昨年、10年近くの改修が終わりリニューアル・オープンした、ライクス・ミュージアム(アムステルダム国立美術館)のアートディレクターとして任命され、トレードマークからガイドチラシ、包材、ミュージアムグッズに至るまで手がけたのだが、最も気になるのがこの美術館の写真集だ。

通常、美術館そのものの写真集というとコレクションしている名画が美術館のロケーションの中で紹介されているカットを想像するが、イルマはコンセプトの中で解体中の廃墟のような美術館写真のカットを多用。美術館のリニューアル自体が、まるでコンセプチュアルアートのように1冊の本になっている。今回の展示でももちろん、選書されている。

ABOUT
YANAGIMOTO Kouichi

幼少のころ、植草甚一に影響を受けジャズと古本に目覚め、その後小学校1年生のときに発売された『Made in USA cartalog』でアメリカ文化の虜に。 そのころから古着と家具などを集めはじめる。その後、現在に至るま …