人間の本能と「i3」- 建築家・岡田公彦の視点|BMW
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2015年1月5日

人間の本能と「i3」- 建築家・岡田公彦の視点|BMW

BMW i3|ビー・エム・ダブリュー i3

人間の本能と「i3」

建築家・岡田公彦の視点

変わらないこと、変えていくべきこと──。岡田公彦氏は、時代の変化に応えながらも、永く使われ、愛され続ける建築やデザインを生み出す日本のトップアーキテクトのひとりだ。環境問題への対応が重視される現代。それはクルマ社会もおなじだ。BMWが今年あらたに送り出す「i3」は、創業100年に渡る歴史のなかではじめての電気自動車であり、あたらしい挑戦でもある。居心地のよい住宅、駆けぬける歓びを与えてくれるクルマとは何か。その答えはどちらも人間の本能のなかに潜んでいるのかもしれない。

Text by OGAWA Fumio

狭義のエコと広義のエコ

じつに気持ちよさそうな家を作る名手、建築家の岡田公彦氏。広島の戸田邸をはじめ、どの作品にも「太陽の動きや地形、風向き等、大きな環境とどう関係を持つか」をつねに考えながら建築を手がけているという。その岡田さんが最近、注目しているのがBMW iだそうだ。

──BMW iのどこに興味をもっていらっしゃいますか。

「いま、クルマはあたらしい時代に入っているように思います。環境問題への対応が重要視され、各国の燃費への規制も厳しくなっています。そのなかで、BMWが本格的に環境対応に取り組んだことは、必然といってもよいでしょう。エコと一般的に言いますが、環境をどのような範囲で捉えるか、が重要になってきていると思います。

例えば海上に発電用ソーラーパネルを並べる際、太陽光が遮られてしまう海の中の生命体のことまで意識を広げることではないでしょうか。これからは、自然のエネルギーを、生物すべてで分け合うことを考えていくべきです。BMW iは、そんなサイクルのなかに入れられる気がしています」

──クルマを選ぶとき、大きな意識をもっているといいということですね。

「私たちもつねに仕事上ではサステナビリティを意識しています。でも人間の活動は複雑で、あらゆる要素がからみあって社会状況や政策が決定されていくため、先のことをクリアに見通すのは難しい。しかし建築はいちど作ってしまったら、変更するのが困難なだけに、なるべく多くのことを考えて設計します。クルマにもおなじことがいえるのではないでしょうか」

BMW i カスタマー・インタラクション・センター(年中無休、9:00 - 20:00)
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BMW i3|ビー・エム・ダブリュー i3

人間の本能とi3

建築家・岡田公彦の視点(2)

人間の本能を満足させる

岡田公彦氏が仕事上意識しているのは、なんと、人間の本能だという。なかなか変わらない人間の本能が、私たちの住む家や乗るクルマに影響を与えている、と興味深いことを語る。

──岡田さんが手がける建築は、住みやすそうで、とても魅力的です。頭で考えて納得するのではなく、直感的に“こんな部屋いいなあ!”と感じさせます。

「世界中のどこの国の人でも、また子供から大人までどのような年齢の人でも、人間という種全体が共通して感じるような“気持ちのよい場所や“集まりたくなる場所”“気分が高揚するデザイン”といったものがあると思います。それは人間の本能的な感覚なのか、遺伝子に組み込まれたものなのか分かりませんが、生まれ持った感覚といったものを大事にしています。

多くのひとが無意識ながら住宅に求めているのは、敵から自分を守ってくれるシェルターとしての役割ではないでしょうか。めまぐるしく移り変わる社会ですが、生物としての人間はすぐに進化できるものではありません。一見あたりまえのようですが忘れられてしまうことも多く、それを考慮することが、居心地のよい住宅を作るときに重要だと思っています」

──クルマでもよく“本能”ということがテーマになるようです。

「小さな男の子は皆クルマが好きですよね。多くの子供が誰に教わるでもなく好きなものごとには本能的な要求が関係しているのではないかと思います。人間が一箇所に定住するようになったのはここ1万年前くらいからで、この年月は生物が進化するためには非常に短い期間です。その前には狩猟しながら移動を続ける生活があった訳で、人間にはまだ「移動する本能」が残されているのではないでしょうか。そこから、より速く移動したい、超人的な力を身につけたい……。さらなる欲望をもとに、これまでクルマの技術進化がおこなわれてきたわけで、そこから大きく舵をとるのは、けっこう大変なことではないかと思うのです」

──それでも、そうせざるをえない状況が現出しつつあるわけで……。

「そうですね。そこにあって、自然に走りを楽しめるという、人間の本能的要求を満足させるi3は、多くのひとに受け入れられる素地をもった新世代のクルマではないでしょうか。このあとも、プラグインハイブリッドのスポーツカー、「i8」が発売されますよね。エコカーといってもガマンを強いられる車でないのがいいですね」

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人間の本能とi3

建築家・岡田公彦の視点(3)

あたらしい乗り物という感覚

岡田氏が実際にi3に乗ったのは、東京・青山だった。「表情のあるクルマですね」がはじめて出会ったときの第一声だった。キーを操作してドアを開け、運転席に腰を落ち着ける。

──第一印象はいかがですか?

「写真で見ていたより、ずっとキュートです。ひとつは、ヘッドランプを含めたフロントマスクの造形。もうひとつは、全体がコンパクトにまとめられているプロポーション。いっぽう、“ストリームフロー”と呼ばれるリアクォーターウィンドウまわりの造形は躍動感を生んでいますね。ひとことで言うと、カワカッコイイ(笑)。かわいいが、狩りをする動物を思わせます。建築家としては、ドアの下部に、キャビンの部分に使っている炭素繊維強化プラスチックが露出しているデザインが興味深いですね。内部構造を外観に反映させている手法は新鮮です」

──このi3は「LifeDrive(ライフドライブ)」というコンセプトで、電気モーターやバッテリーが収まっているシャシーはドライブモジュールと呼ばれアルミニウム製。一方乗員が乗るキャビンはライフモジュールと呼ばれカーボン製。これは水力発電100%の工場で作られています。では、インテリアの印象はいかがですか?

「ケナフといった自然素材や、リサイクルプラスチックを使っているそうですね。その素材感を活かした造形感覚がとても興味を惹かれます。建築ではメインテナンスが楽だからと、木であっても表面を厚くコーティングする時代が続きましたが、最近は少し変わってきました。本来は多少汚れることがあっても、素材自体の持つ変化やムラのようなものに人は安らぎを感じるのだと思います。i3からはおなじような主張を感じることが出来ました。視覚的に表情があり、触ったときに、質感があります」

──では操縦してはいかがでしょうか。

「起動させても、PCとおなじぐらい静かですね。そしてアクセルペダルを踏むと、じつにスムーズに動き出す。この流れるような感覚は、ガソリン車とはまったくちがいます。さらに、私が体験したハイブリッド車より、軽快感があるのも印象に残りました。スムーズで、静かで、インテリアも斬新で……あたらしい乗り物という感覚がとても新鮮です。

それと、アクセルペダルに載せた足の力を緩めると回生ブレーキが効いて、ぐっと力強い制動がかかる設定ですが、これも私にとっては、人の歩きに近い運転感覚で好ましかったです。

さきに、クルマがこれから進化するにしても、人間の本能とどうつきあうかが課題になるのではと私見を述べましたが、i3はそのあたりの要求に自然に応えつつ、人間の感覚をうまくコントロールして違和感を感じさせません。新しい車の未来がはじまっているように感じました」

OKADA Kimihiko|岡田公彦
建築家。岡田公彦建築設計事務所代表。1971年に神奈川県横浜市で生まれる。明治大学理工学部建築学科を卒業後、1997年に西沢立衛建築設計事務所でそのキャリアをスタートさせる。2005年、東京・目黒に岡田公彦建築設計事務所設立。現在は東京電機大学をはじめ各大学の非常勤講師も務める。

BMW i カスタマー・インタラクション・センター(年中無休、9:00 - 20:00)
free150120-201-438
bmw-i.jp

080507_eac_spec
BMW i3|ビー・エム・ダブリュー i3
ボディサイズ|全長 4,010 × 全幅 1,775 × 全高 1,550 mm
ホイールベース|2,570 mm
トレッド(前/後)|1,575mm / 1,560 mm
最低地上高|110 mm
重量|1,260 kg
駆動用バッテリー|リチウムイオン電池1個(96セル)
最高出力| 125 kW(170 ps)/5,200 rpm
最大トルク|250 Nm(25,5 kg)/100-4,800 rpm
駆動方式|RR
サスペンション(前/後)|ストラット / マルチリンク
ブレーキ(前/後)|ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後)|155/70R19
0-100km/h加速|7.2 秒
最小回転半径|4.6 メートル
トランク容量|260-1,100リットル
最高速度|150 km/h
一充電走行距離(JC08)|229 km
価格|499万円

BMW i3|ビー・エム・ダブリュー i3(レンジエクステンダー装着車)
ボディサイズ|全長 4,010 × 全幅 1,775 × 全高 1,550 mm
ホイールベース|2,570 mm
トレッド(前/後)|1,575mm / 1,540 mm
最低地上高|110 mm
重量|1,390 kg
駆動用バッテリー|リチウムイオン電池1個(96セル)
最高出力(電気モーター)| 125 kW(170 ps)/5,200 rpm
最大トルク(電気モーター)|250 Nm(25,5 kg)/100-4,800 rpm
発電用エンジン|直列2気筒DOHC4バルブ
最高出力(発電用エンジン)| 28 kW(38 ps)/5,000 rpm
最大トルク(発電用エンジン)|56 Nm(5,7 kg)/4,500 rpm
駆動方式|RR
サスペンション(前/後)|ストラット / マルチリンク
ブレーキ(前/後)|ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後)|155/70R19 / 175/60R19
0-100km/h加速|7.9 秒
最小回転半径|4.6 メートル
トランク容量|260-1,100リットル
最高速度|150 km/h
ハイブリッド燃費(JC08)|27.4 km/ℓ
充電電力使用時走行距離|196.1 km
価格|546万円

           
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