谷尻 誠|第9回 展覧会『Relation』記念 谷尻 誠×青野賢一 対談

谷尻 誠|第9回 展覧会『Relation』記念 谷尻 誠×青野賢一 対談

Another Architecture

「自分の言葉で建築を伝えていこう」と決心するきっかけをつくったひと

谷尻 誠×青野賢一 対談(1)

Translation【翻訳】──この言葉をいただいたのは、青野賢一さん(BEAMS クリエイティブディレクター/BEAMS RECORDS ディレクター)からだった。音楽ということを建築で考えてみる。ファッションということを建築で考えてみる。日々、そんなことを考えていると話したとき、青野さんは、「谷尻くんのその行為は翻訳だね」と、話してくれました。これほどまでにしっくりくる言葉があったことに驚き、そしてとても感動したことをいまでも覚えています。そんな言葉のセレクトに迷いのない青野さんの思考について、それ以降興味をもったのは言うまでもありません。そこで青野さんをお招きして、対談のお時間をいただきました。

文=谷尻 誠(サポーズデザインオフィス)

展示会のコンセプトを聞いたときに、まっ先に浮かんだもの

青野 谷尻くん、「地球空洞説」って知ってる?

谷尻 いきなりなんですか!?

青野 地球は、核があって、マントル(核の外側層)があって、地表があるというのが一般的に正しいと言われている姿。だけどもこの説が一般化されるまえに想像力豊かなひとたちがいろんな説を唱えていて。「地球空洞説」もそのひとつ。これは地球の中ががらんどうで、北極と南極を結ぶ穴があって、そこは空洞になっている。さらに穴の中に入っていくと、パラレルワールドのごとくひとが住んでいる……というものです。普通に考えて内側にいる人たちは重力があるから落っこちてしまうんだけど、なぜこの説が成立するかというと「地球は遠心力に支配されている」からだと。遠心力が働いている証拠として、空気上には軽い物質が、地面には鉱物や石といった重い物質が存在すると唱えているんだよね。

谷尻 おもしろい! なんかありそうですよね。

青野 この説を立証しようと「南極まで行くお金を出してほしい」とアメリカ政府にかけあったり、講演をしてその資金を調達したり、そんなひとたちもいたみたいで。ちょうどこの説に触れているドイツ文学者の種村季弘さんの本を読みなおしていたこともあり、谷尻くんの展示のコンセプト(10月25日からスタートした谷尻誠『Relation』@B GALLERY。コンセプトは「重力が存在しないと成立しない建築物を浮かせたら?」という発想のもと、建築模型を会場内に浮かせ、建築の既成概念へのあらたな提案を試みるインスタレーション)を聞いたときに、まっ先に浮かんだのが「地球空洞説」だった。

谷尻 そうなんですね! この説も「あると主張するひと」と「ないと主張するひと」のふたつに分かれますよね。だけども「ある」とわかった瞬間、「ない」と主張していたひとが「ある」に変わる。僕はこのような物事の捉え方にいつも興味があります。社会生活において「できない」とすぐに口にしているなと感じることが多々あるのですが、何かを根拠に「できる」「できない」を追求していない。その「可能」「不可能」の見極めっていつも大切だと思います。とくにあたらしいことをやろうとしたときに「無理」って言ったら絶対にできない。じゃあ「できない」のではなく、「できる方法を考える」ようにはいつも心がけています。

今回の展示では、「磁場」を設計することで「あるべきはずの構造があるけど形がない」という建築が生まれ、まだ小さな可能性ですが、テクノロジーが進化すれば住居としても十分に成立すると思います。リニアモーターカーが浮いて走るのをより建築的思考にした感じです。実際に試してみると結構浮くんですよね。

青野 3月11日に震災が起きて、モノのあり方、生活の仕方を見なおしはじめたと思う。谷尻くんが「建築を浮かせよう」と考えたのもやっぱり震災以降ですか?

谷尻 これは数年前から感じていたことをようやく形にしたという感じです。ひとの命を守る建物がひとの命を奪う建物になってしまう……根本的なところで矛盾を感じていて、違和感がずっとありましたね。「命を守る家」を考えたときに、建物を硬く強くつくろうとする。ならば必然的に重さが増すのだから、万が一壊れたときにひとが下敷きになって命を落とす危険もあるわけで……。

青野 たしかに一般的な建物って、地面を掘って、杭を打ってというのが当たり前だからね。

谷尻 建物の「基礎」ってすごく不思議で。広島の厳島神社って基礎がないのにもかかわらず、海の上に建っている。じゃあなぜ基礎が当たり前になったんだろうかと考えたり。たしかに基礎があることで地盤沈下を防げることもありますが、いまは基礎が当たり前になっているなと。「地盤がゆるければ基礎をしっかり」とよく言われますが、地盤が弱いんだったらあんなに重たい基礎はいるのだろうかと思うこともある。軽いものを設計したら地盤への負担も軽減できると考えたり……まぁ僕はヒネくれているんでしょうね(笑)。

ABOUT
TANIJIRI Makoto

建築家 Suppose design office 代表 1974年 広島生まれ 2000年 建築設計事務所Suppose design office 設立 住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクト、アートの インスタレーションなど、仕事の範囲は多岐にわたる。 広島・東京の2ヵ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設など国内外合わせ 現在多数のプロジェクトが進行中。 現在、穴吹デザイン専門学校 特任講師 、広島女学院大学客員教授 【主な仕事】 DESIGNTIDE TOKYO2008、2009 会場構成 Milan Salone 2010 東芝Luceste インスタレーション その他、これまで手がけた住宅は100件を超える。 【受賞】 2009 平和大橋歩道橋設計国際競技ファイナリスト 2009 Modern Decoration International Media Prize Annual Commercial Award(上海) 2009 AR Award / commendation (London) 2009 INAXデザインコンテスト銀賞受賞 2010 UPTO35 ギリシャ国際設計競技ファイナリスト 2010 愛知まちなみ建築賞受賞 2010 住まいの環境デザインアワード W受賞 2010 モダンリビング大賞受賞 2010 THE INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARD(Chicago) 2011 福岡県美しいまちづくり建築賞 […]

AONO Kenichi

セレクトショップBEAMSが手掛けるレーベルBEAMS RECORDSのディレクターであり、同ショップのバイヤー、そしてまたファッションの分野ではBEAMSのプレスを担当。 1980年代後半よりDJとしてのキャリアをスタート。CAVE、oto、web、Loopなどを経て、現在は目黒CLASKA 1F LOBBY(毎月第1土曜日with山崎真央)、青山骨董通りLA BOHEME “CLASSICO”(毎月第1金曜日with橋本徹)のレジデントDJなどを担当。他にもゲストDJとして全国各地の様々なイヴェントからのオファーを受けている。 また有名メゾンのレセプションパーティーや、フロアショウなどクラブフィールド以外でも活躍。クラブ、ラウンジ双方で自身の世界観を表現出来る数少ない「サウンドスタイリスト」である。 近年は、山崎真央とのユニット 「World Of Echo」名義で選曲や楽曲制作にも取り組んでいる。その傍ら執筆活動も行ない、雑誌「MEN’S EX」(世界文化社)、インターネットマガジン「フィナム」などにて音楽コラムを連載中。