INTERVIEW|『ブリングリング』ソフィア・コッポラ監督、来日記念インタビュー

INTERVIEW|『ブリングリング』ソフィア・コッポラ監督、来日記念インタビュー

LOUNGE INTERVIEW

INTERVIEW|ハリウッドのクローゼットを荒らしまくったティーン窃盗団

『ブリングリング』

ソフィア・コッポラ来日記念インタビュー(1)

ソフィア・コッポラ3年ぶりの新作『ブリングリング』が公開される。映画化のきっかけとなったのは、インターネットを武器に、ハリウッドセレブの豪邸を次々と狙ったティーン窃盗団についてのルポタージュ『The Suspects Wore Louboutins(容疑者はルブタンを履いていた)』を、ソフィアが偶然にも目にしたこと。事件のどんな側面が彼女の心をとらえたのか。そして、映画に込めた想いとは──。グリーンカーペットでの、父親フランシス・F・コッポラとの“共演”も話題となった、東京国際映画祭参加のために来日した本人に、話を聞いた。

Interview & Text by OKADA Yuka

映画ではセレブに重きを置きすぎた社会を検証

「実際の事件を描いた映画を作ったことがないので、ありがちな成り行きや描き方にならないように、自分のスタイルをキープしながら描くのに苦労しました。そこはひとつのチャレンジだったと言えます」

この日、ソフィア自身がそう切り出したように、メランコリーでナイーブ、孤独を抱えたキャラクターにフォーカスしてきたこれまでのオリジナル作品と、今作は少なからず趣が異なる。

題材となったのは、実際に2008年~2009年にかけてロサンザルス郊外の高級住宅地カサバラスで連続的に発生した事件で、パリス・ヒルトン、リンジー・ローハン、オーランド・ブルーム……といった憧れのハリウッドスターの自宅を決め打ちして、総額300万ドル(約3億円)相当の洋服や宝飾品を盗み出したティーン窃盗団“ブリング・リング”(キラキラしたやつらの意)の話。まずもって、このエピソードを映画化したいと決意した理由とはなんだったのだろう?

『ブリングリング』ソフィア・コッポラ監督インタビュー 02
『ブリングリング』ソフィア・コッポラ監督インタビュー 03

「今回の映画はわたし自身ですら観ていてイラっとするところがあって、どのキャラクターもとにかくやり過ぎで制御不能なんですよね。映画に出てくるシーンでもありますが、捕まったあとに法廷に出廷するときもサングラスをかけていたり、加害者なのにリアリティ番組に登場したりしてセレブ気取り。仕草や喋り方、洋服もルックスもまったくわたしの趣味ではないし、ほとんど感情移入できません。彼らがこれ以上有名になるのがイヤだったので、名前もあえて実名を使いませんでした。

でも、だからこそ映画化しようと思ったところもあります。いまの時代は社会全体がセレブリティというものに重きを置きすぎている。“セレブリティのようでなければいけない”という価値観を若者に押し付けてさえいます。このアンバランスさを、映画を通じて検証してみたいと思いました」

「10年前には描けなかった作品」

言われてみれば、確かにセレブリティの私服ファッションやプライバシーを浸食したメディアは、ネットからSNSの時代に入り、加速度的に増加。気がつけば彼らのスタイルを真似することも、セレブカルチャーそのものを疑うこともなくなった。映画のなかでも、セレブの服を着ているだけでクラブや街でセレブ扱いされるようになっていく彼らを取り巻く状況の変化や、証拠を残す危険にすら気づけない窃盗団が、盗み出したブランドモノの戦利品を自慢げにフェイスブックにアップするようなシーンが印象的。

『ブリングリング』ソフィア・コッポラ監督インタビュー 05

だが、今作でのソフィアは無意識にセレブの真似をすること、フェイスブックを繰り返しアップしては、自分をブランド化することに執着する時代の違和感や、盲点を果敢に描き出している。そのうえ、自らもフランシス・フォード・コッポラの娘であり、「昔からスターになりたい人が集まる街」と称した、ロサンゼルスとも縁が深いソフィアが取り上げているというのも余裕の皮肉だ。

「よく『自分の若いころと比較してどうですか?』と聞かれますが、わたしがティーンネイジャーだったころは、インターネットもソーシャルメディアもリアリティ番組もありませんでしたし、いまだにネット以外は興味がないので関わりはありません。要するに『ブリングリング』は10年前には描けなかった作品。

しかもティーンというだけでも混乱しているというのに、いまはそこにものすごい量の情報が入ってくるわけですよね。しかもまだアイデンティティも確立されていないから、窃盗団の子たちは、近所に住んでいるセレブリティたちの洋服を盗んで着ることで、“彼ら”になれると勘違いしてしまったんだと思います」