連載・藤原美智子 2013年10月|自分らしいクリエイティブなお金の使い方をしよう!
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年1月19日

連載・藤原美智子 2013年10月|自分らしいクリエイティブなお金の使い方をしよう!

2013年10月|もっとちゃんとしたお金の使い方ができるひとになりたい!

「自分らしいクリエイティブなお金の使い方をしよう!」

この連載の過去のラインナップを見ていたら、定期的に本を紹介していることに気がつきました。ローフードの本とかシンプルな生き方の本、断捨離、免疫力、ファスティング、筋肉の本などなど──本を読んで触発されて起こした行動もあるし、ある行動をもっと詳しく知りたくて購入した本もあります。さて今回は、興味をもったひとがきっかけで購入した本を紹介したいと思います。それは『ケチケチ贅沢主義』(mucco著/プレジデント社)と『未来の働き方を考えよう』(ちきりん著/文藝春秋)の2冊。

Photographs&Text by FUJIWARA Michiko

人気ブロガーの人たちに興味が湧いて出合った2冊

名前を見てピンときた、あるいは著者のブログを読んでいる、というひとも多いのではないかしら。そう、おふたりとも、いわゆる人気ブロガーと呼ばれている人たち。私はブログやSNS系をしていないので、じつは人気ブロガーという人たちの存在を詳しく知らなかったのだけど、先月、ハワイでメイクトークショーをしたときに「最前列で見ていた、あのひと、すごい人気のブロガーの○○さんなんですよ」と言ったスタッフの一言で初めて、人気ブロガーというのはメジャーな存在だということを知ったのだ。そんな無知な私に、そのスタッフが人気ブロガーというのはどれくらいのフォロワー数をもっていて、どれくらいの影響力があるかなどをレクチャーしてくれたのだが、私はただただビックリするやら感心するやら。でも、そのお陰で人気ブロガーの人たちに興味が湧いて、自分でもネットで調べて出合ったのがmuccoさんと、ちきりんさんの本とブログというわけである。

muccoさんとちきりんさんのそれぞれの魅力とは

muccoさんのブログ名は本のタイトルとおなじ「ケチケチ贅沢主義」というもの。ご自分の毎日の装いを写真にしてアップしているのだが、それがシンプルでとてもセンスのある装いなのだ。流行に踊らされているのではなく、そのエッセンスを上手に取り入れ、自分の価値観で丁寧に楽しみながら装っているという意識が見て取れるし、コメントにもそれはあらわれている。そこに多くのひとが魅力を感じているのだろう。

ちきりんさんは「Chikirinnの日記」というタイトルのブログ名で、主にあたらしい働き方や経済についての考え方を提示しているブログ。「ほほうー、働き方もそういう自由な発想をすればいいんだ!」とか、「こういう考え方もあるんだ!」と脳に新鮮な刺激をもらえるような内容で、やはり、ちきりんさんも自分ならではの価値観や思考力で(もちろん、キチンとしたデーターと分析がベースにあってのこと)意見を述べているのが、多くのひとの興味を集めているのだと思う。

多くのひとの、経済や生き方やお金に対する意識が少しずつ変わってきた

さて今回、紹介した本はそれぞれブログに沿った内容で興味深かったのだが、そのなかで両者ともに似たような意見を述べている章があり、私はそれに触発されたのだ。それは「お金の使い方」。周りに左右されずに支出のマネジメントをキチンと考えて、自分の生き方や価値観に合ったお金の使い方をしよう、そしてお金に縛られるのではなく、自分ならではの豊かで自由な生き方のために使おう、といったことが書かれていたのだ。

私はバブル経済の恩恵を少しばかり受けてきた年代なのだが、そのころの「豊かさ」と言えばズバリ、お金や物をどれくらい多く所有しているかどうかであり、それが豊かさのバロメーターだった。当時は「あのひとも、あのブランドのバッグをもっているから私も!」などと、しっかり(?)周りに左右されて身の丈を考えずに物を購入しているひとは多かったし、自分なりのお金の使い方や、生き方と支出の内訳がリンクしているかどうかなどを考えているひとはごく少数だったのではないだろうか。

それがバブル経済がはじけ、リーマンショックや東日本大震災が起こり、多くのひとの経済や生き方やお金に対する意識が少しずつ変わってきた(ように私は感じている)。「断捨離」や「シンプル」といった本が多くのひとに支持されているのは、そのあらわれだと思っている。そして物と心を消費するだけの時代は終わり、それらにキチンと向き合っていく、いや向き合っていかなければならない時代になってきたと多くのひとが肌で感じるからこそ、率先して実践しているふたりのブログに人気が集まっているのではないだろうか。情報に踊らされるのではなく、またひとの目を気にするのでもなく、多くの情報のなかから自分の生き方や価値観に合う物や事柄をキチンと選び取るという意識を育んでいかなければならない、今はそういう時代なのだ。

お金の使い方が下手だから、丁寧にお金を使うという練習を

……と、このようなことを何も私が声高に言わなくてもじつは、若いひとと話をしたり生活習慣を聞くと、豊かさのバロメーターはひとそれぞれちがうのは当たり前だと普通に思っているようだし、自分の生き方と価値観に合ったお金の使い方を普通のことのようにしているひとが多いのだ。それを知るにつけ「若いのに偉いなー」と心から感心しているのだが、そうした反応を私がするのにはワケがある。じつは、私はバブル経済に関係なく、若いときからお金の使い方が下手なひとなのだ。そして、もっとちゃんとしたお金の使い方ができるひとになりたいとズーッと思っていたのだ。だから、よけいにふたりの本の「お金の使い方」の章に反応したのだと思う。この詳しい経緯は、3年ほどエッセイの連載をつづけていた文芸誌『GINGER L。』(幻冬舎)の12月12日発売の“WINTER13”に書いたので(この号が連載の最終回)、月末になると「あれ? 何にお金を使ったんだろう?」と頭をひねることがしばしばある、というひとはとくに読んでみてほしい。

さて、このように「お金の使い方」に触発された私は今、家計簿とにらめっこしながら、意識しながら丁寧にお金を使うという練習をしている。そうしていたら、なんだか自分がとても“ちゃんと”しているひとのように思えてきたし、より丁寧にお金を使おうという気にもなってきた。そしてお金を払ったものに対して、「ちゃんと味わおう」とか「ちゃんと使おう」などと以前よりも思えるようになり、充実感と楽しさも湧いてきた。おなじ“お金を使う”でも、意識するのとしないのでは、こんなにも得るものはちがうものなのかということを実感している。このように2冊の本によって、私は“自分らしいクリエイティブなお金の使い方ができるようになりたい!”と触発されたというわけである。

           
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