INTERVIEW|高橋幸宏 アルバム『LIFE ANEW』単独インタビュー

INTERVIEW|高橋幸宏 アルバム『LIFE ANEW』単独インタビュー

LOUNGE INTERVIEW

INTERVIEW|高橋幸宏 単独インタビュー
4年ぶりのソロアルバム『LIFE ANEW』をリリース

「未踏だった自身のルーツ」(1)

前作『Page By Page』から数えて4年ぶり、ソロとしては23枚目となる高橋幸宏の新作が7月17日にリリース。タイトルは『LIFE ANEW』。昨年、還暦を迎え、アニバーサリーライブを成功させた後、「ひと区切りついた気持ちはあった」と語る高橋が、新作で貫いたのは「バンドサウンド」。その考えに、堀江博久(キーボード)、ゴンドウトモヒコ(管楽器)、高桑圭(ベース)、ジェームス・イハ(ギター)が賛同し、In Phase(インフェイズ)という名のバンドを結成。高橋自ら「ドラムを叩いて歌う」ことで、バンドが肉体で奏でたアルバムとして完成した。新作『LIFE ANEW』を、高橋が語る。

Photographs by NISHIMURA TomoharuText by TASHIRO Itaru

5人の個性が生んだ、正真正銘のバンドサウンド

実に心地の良いサウンドだ。ドラムとベースがタイトにシンクロし、メロディ楽器が軽快にリフを奏でる。音がスッと身体に染み入るような感覚を、久し振りに味わう気がする。

「こういう普通のロックアルバムを作る人って、今どき、いないだろうと思います。みんな、売れっ子ばかりで忙しくて、スケジューリングには苦労しましたけど、それでも、ベーシックトラックは5人『せーの』で合わせて全曲、録っている。ゴンドウ君はラッパで、別室での録音が普通なんだけど、どうしても参加したかったんでしょう、同じスタジオに入ってタンバリンとかを鳴らしていた。そこまでして?って(笑)。基本的にコーラスは全員がやっていて、主メロに対してのハーモニーは、カーリー・ジラフがこと高桑圭くんが中心となってやってくれました。先行配信したのは『All That We Know』。最後まで『Looking For Words』とどっちにしようか迷ったんですけど」

メンバーが参加したハーモニーは美しく、結束の固さが感じられる。そして、半数の6曲は、高橋以外のメンバーが作曲。個性が光るアルバムとしても聴きどころは尽きない。

「『歌うのは僕、歌うけど、好きに書いて』って感じでしたから。自分が絶対に作らないようなメロディを歌うのは新鮮でした。唯一、オルタナティブな感じの『Shadow』はジェームスの曲で、それがあるおかげでゴンドウ君の『Ghost Behind My Back』も浮かないで済んだ(笑)。ジェームスにはもう1曲、アルバムのクロージングナンバー『Follow You Down』もあるんですけど、こっちは鼻歌のように素朴な感じで気持ち良い。けれど、2曲で全然、タッチが違うじゃんっていう(笑)。それがまた良かった」

個性が化学反応を起こして、相乗的に魅力を生み出していく。それがバンドの本質だとしたら、『LIFE ANEW』は正真正銘のバンドアルバムだといえよう。

「ジェームスはギターもミスマッチな感じで良かった。『World In A Maze』では、5thディメンションのようなコーラスが入る、航空会社のコマーシャルソングってイメージを、僕自身は思い描いていたんですけど、ジェームスが突然、ギターにディストーションをかけてガンガーンって弾き出して。『これはこれでいいかもね』って(笑)」

高橋幸宏|『LIFE ANEW』 02

高橋幸宏|『LIFE ANEW』 03

還暦を越えて、未踏だった自身のルーツに迫る

本作でバンドサウンドに思い到ったきっかけを尋ねる。

「僕のルーツの中で、19、20歳の頃――サディスティックミカバンドに入る前ぐらいですかね――、グラムロックが出てくる前のアメリカの音楽から結構影響を受けていたことを思い出したんです。で、その辺の音楽を、ちゃんとドラムを叩きながらやったこと、なかったなぁって。シンプルな、メロディを重視したロック。それをやるならバンドサウンドの方が良い。高橋幸宏は『ロンドンだ』『ヨーロッパだ』って言われてきたんだけど、実は、アメリカの音楽もいっぱい聴いてきたんです。イメージしたのはアメリカの一発屋が作ったヒット曲がいっぱい並んでいるようなアルバム。(バート・)バカラックっぽくやっていたはずなんだけど、なぜかロックになっちゃった、みたいなバンド(笑)。例えば、ニール・ヤングのようなグランジっぽい感じが入ると、また別の方向に行ってしまうんですけど。ザ・バンドとも違う、“その辺りの”アメリカのロック」

聴いていると、アソシエイションという1970年代のグループが持っていた、ソフトロックとでも呼ぶようなニュアンスが感じられてうれしくなる。そして、何より、あの高橋幸宏のドラムを聴いているという喜びに、最初から最後までどっぷり浸ることができるのだ。

「そういう意味で、僕の中で意識したドラマーが何人も登場しています。曲によって、スネアを取っ替え引っ替えして、音調を変えたりして。影響を受けたドラマー……例えばリンゴ・スターだったら、こう叩くだろうな、とか、考えながら叩いてましたからね。今どき、こんなパワードラムで、タカタカドコドコなんてやらないだろうな、なんて曲もある(笑)。僕、一番、影響を受けたのはブッカーT&MG’Sのアル・ジャクソンなんですけど、今回はそれをやらなくて良かったと思っています。黒人の方が多いんですよ、好きなドラマー。バーナード・パーディとか。ただ、今回は、基本的にはシンプルなドラム。ドラマーがイタリア系のラスカルズなんかの感じに、近いのかもしれません」

還暦を越えて、今一度ルーツに立ち返り、やってこなかった音に挑戦した高橋。それは、もしかすると、時代の要請だったのかもしれない。

「ベテラン勢が久しぶりにいろいろアルバムを出してますよね。それも、ただ出しているんじゃなくって『こんなルーツがこの人にはあったんだ』っていう新たな発見ができるから面白い。僕の場合はわりと気楽に『バンドでやってみよう』って思ったんだけど、ボズ・スキャッグスが『メンフィス』ってアルバムを出すなんて思わなかったし、(デビッド・)ボウイもあの鋤田(正義)さんの写真で『THE NEXT DAY』ですからね。

僕の『ANEW』は英語でもあんまり使わない言葉だけど、ただ『新しい』のではなく、『生まれ変わる』みたいなイメージがちょっとあったんで、あえて、この言い方にしています。今年は、日本でもいろんな人のアルバムに“NEW”の言葉が使われているそうです。世界的なシンクロニシティもあると思うんですけど、特に日本では、あの2011年から2年経って、一度、それは終わらせたいって気持ちがどこかにあるんでしょうね。『WORLD HAPPINESS』も2011年にやったときの気分と、今年とでは気分が違う。2011年のときは、みんなに日常を取り戻してあげなきゃっていう意識があって、それで逆に、あのフェスをやった感じがありました。そうそう、今年の『WORLD HAPPINESS』は6人全員が揃う“おそ松くん”にぜひ期待して頂ければ。もう全然、お粗末じゃないメンバーになりそうなんで(笑)」