連載・藤原美智子 2018年11月|パウダーファンデーションの進化と意識改革

パウダーファンデーションの進化と意識改革|連載・藤原美智子 2018年11月

COUTURE of LIFE:Essay and a story

連載・藤原美智子 2018年11月|パウダーファンデーションの進化と意識改革

パウダーファンデーションの進化。それでも意識改革は必要か?!

前回は1980年代に私がヘアメイクアップアーティストの仕事に就いた頃の懐かしいメイクテクニックのことを書きましたが、今回は化粧品のことを。その頃との違いは、もちろん化粧品の進化ですが、それを一番感じるのはパウダーファンデーションでしょうか。何しろ当時、それは誕生したばかりのメイクアイテムだったからです。

Photographs & Text by FUJIWARA Michiko

パウダーファンデーションの進化の記憶

私が記憶しているパウダーファンデーションは普通に塗れるだけでなく、スポンジを水で濡らしてケーキファンデーションとしても使える2ウェイタイプ。ケーキタイプにして使うと、水や汗に強くて落ちにくくなるという特徴があります。

その頃は、まだ紫外線の害が一般的に知られていなくて、夏になると海でガンガンに焼いて小麦色の肌にするのが流行っていました。だから「こういうのが欲しかったー!」と皆こぞって使っていたように記憶しています。私も「わぁー。簡単に塗れるし、自然〜」と喜んで使っていたけれど、もちろん現在のものと比べたら随分とマットで厚塗りだったことでしょう。

そして80年代半ばから起こったバブル時期はマットな質感のベースメイクが流行っていたのでパウダーファンデーションはこの頃に、さらに一般的な存在になっていったのではないでしょうか。それから2000年にかけて美の基準がナチュラルに向かっていくに連れ、パウダーファンデーションもそれに合わせて透明感や保湿効果のあるものへと進化していったと記憶しています。

それぞれのメイクアイテムには、それぞれの役目がある

ところで話は変わりますが、それぞれのメイクアイテムには、それぞれの役目があります。例えば、ファンデーションには肌の明るさや透明感や色みや質感を美しくする役目がある。コンシーラーにはふた通りのタイプがあって、隠したい部分をカバーする役目のものと、クマなどを明るくする役目のものがあります。

また、新しいアイテムというのは「こんな物があるといいな」という作り手側のイマジネーションと消費者側の願望があるからこそ誕生するのでしょう。例えば、「もっとツヤを出せる口紅ができないか」という発想からグロスは誕生したのではないでしょうか。

でもグロスが人気を博すと口紅がグロスの質感に寄りすぎてしまい、一時、私は「これでは口紅である必要がない!」などと憤慨していた時期がありました。また、その逆も然り。でも口紅はグロスの誕生によって質感の幅がウーンと広がり、その後、両者の良いとこ取りしたリキッドルージュタイプも誕生しました。

このように化粧品会社の努力によって、化粧品が進化したり新しいアイテムが誕生したりしてきました。また年々、増え続けている化粧品ブランドからもより多くの化粧品が生まれてきています。そのために、それを使う消費者側には益々“選び取る力”が必要とされてきています。

だから、「こんな肌になりたい」という明確な意図や、「この部分をこんな風にカバーしたい」と言った具体的に願望がハッキリしていなければ、膨大な化粧品の中から「これ!」という一つを選び取ることが益々困難になってきました。そして、それを解決するかのように登場したのが化粧品の情報サイトやSNSの書き込み。今では雑誌だけではなく、こうしたネットの情報が選び取る際の重要なカギとなっています。

使い手側が意識改革しなければならないこと

このように化粧品は進化したし便利な世の中にもなりましたが、それでも消費者側が意識改革しなければいけないことがあると私は感じています。

講演をした時に「簡単に手軽に、最高に綺麗になれるメイク法はないですか?」というような質問を受けることがあります。でも「簡単に手軽に」と「最高に綺麗」はイコールにならないのは火を見るよりも明らかなこと。簡単に手軽にということは、そこそこの綺麗さにはなる。

でも、どんなに化粧品が進化したとしても、メイクで最高に綺麗になるには手間をかけなければ、なれないのです(もちろん使いやすさや仕上がりの綺麗さは、昔のものとは雲泥の差がありますが)。

だから私は上記のような質問を受けた時には「それは蜃気楼を求めるようなものです。それを探し求めるよりも、メイクの練習をして早くできるようにした方が確実に簡単に綺麗になれるし、時短にもなりますよ」と応えています。

化粧品会社は、このような消費者の“蜃気楼のような願望”を実現しようと奮闘してきたからこそ化粧品は進化をしてきたのでしょう。それでも使い手側は、それぞれのアイテムの機能と限界を知っておくことは必要だと思うのです。例えばファンデーションで濃いシミを完璧にカバーしたいと思うのは蜃気楼を求めるようなもの。それができるファンデーションがあったとしたら、顔全体がよほど暑化粧になってしまうことでしょう。完璧にカバーするにはカバー用のコンシーラーがなければできないことなのですから。

さて、こうしたことを踏まえて考えると、パウダーファンデーションの存在価値は何でしょう。私は手を汚すことなく簡単にベースメイクができること。そして日中のメイク直しをする時に便利なアイテムであること。また肌に何のトラブルがないのであれば、これ一つでベースメイクを仕上げることはできるでしょう。つまり“そこそこ”の綺麗さが簡単にできるということに尽きると思っています。

でも、もし「ここも、あそこも何とかしたい」という願望があるならば、それに合うアイテムを使わなければ願望を満たすことはできません。だから「このパウダーファンデーションを使ってもシミがカバーできない!」と憤慨するのはナンセンス。“そこそこ”にカバーできたとしても、完璧にするのはパウダーファンデーションの役目ではないのですから。そのことを知っておいた方が選び取る際の迷いは軽減するし、逆に正しく利用できるのではないでしょうか。

パウダーファンデーションに求めるものは何?

私自身、パウダーファンデーションを使用するのはお化粧直しや、休日にサッサッとメイクを済ませたい時。あるいはシミなどをコンシーラーでカバーした後にフィックスする時に使っています。そんな私がパウダーファンデーションに求めるのは、そこそこのカバー力と透明感、潤い感とフォギー感があること。

つまり私にとって“そこそこ”というのは、最上級に全体のバランスが整っているということです。そして、それが私にとって優秀なパウダーファンデーションであり、使いやすい条件というわけです。

皆さんにとっての条件は何ですか?

私は今、パウダーファンデーションというアイテムはグーンと進化している最中であるように実感しています。もしかしたら将来的には違う形へと変化していくような予感もします。いずれにしろ、どんなに優秀なアイテムが誕生したとしても「自分が求めているものは何?」ということを把握していなければならないのは変わらないと思っています。結局、それを使ってメイクをするのは人間の意識と手なのですから。たとえパーソナル・メイクロボットのようなものが誕生したとしても……!


(写真左から)
コスメデコルテ ザ パウダーファンデーション
透明感と軽くサラサラーッとした軽い付け心地。時間の経過と共に皮脂と馴染み、程よいツヤ感が出て素肌が綺麗になった?!という印象に。

エスティローダー ダブル ウエア モイスチャー ステイ イン プレイス パウダー メークアップN
しなやかに肌にフィッとする塗り心地と、仕上がり感は別格!潤いと、余分な皮脂を吸着して塗りたての美肌がキープ。女らしい印象に。

アルビオン スウィート モイスチュア シフォン
軽くフンワリとしたフォギー肌に。コーラーゲンとヒアルロン酸の複合成分で潤いが続くのも嬉しい。フワッとした優しい女性の印象に。

ABOUT
FUJIWARA Michiko

ラ・ドンナ主宰。 ヘア・メイクアップアーティスト/ライフスタイルデザイナー 多くの雑誌や広告撮影のヘアメイク、執筆、化粧品やファッション関連のアドバイザー、講演、TV出演などで幅広く活躍している。 また美容だけではなく、近年は栄養コンサルタントの資格を取得し、食や健康、装い、暮らし、生き方などライフスタイル全般を提案。 近著『美の宿るところ』(幻冬舎)、『大人の女は、こうして輝く。』(KKベストセラーズ)、『美しい朝で人生を変える』(幻冬舎)ほか、著書多数。 LA DONNA OFFICIAL SITE http://www.ladonna-inc.jp 藤原美智子Instagram公式アカウント http://instagram.com/michiko.life