日本美のミュージアムホテルで見つけるアートの秋|ホテル雅叙園東京

日本美のミュージアムホテルで見つけるアートの秋|ホテル雅叙園東京

LOUNGE ART

ホテル雅叙園東京

日本美のミュージアムホテルで見つけるアートの秋

暑さが厳しかった今年の夏。ようやく秋らしい気配に包まれ始めているものの、まだまだ天候が安定しない季節なだけに、レジャーを計画するには不安が残る。そこで提案したいのが、都心のホテルで楽しむアートいっぱいの避暑ライフ。“昭和の竜宮城”とも称された目黒のホテル雅叙園東京には、貴重な芸術品が館内のいたるところに。天候不順に悩まされることなく、ホテルで優雅に芸術鑑賞ができるのだ。

Text by MAKIGUCHI June

時間を超えて出会う日本の美。コンドル設計の部屋も。

2018年12月に創業90周年を迎えるホテル雅叙園東京。長年、目黒雅叙園として、婚礼や催事などで親しまれてきた。2017年4月からは、より多くの宿泊客を迎えるためにリブランドオープン。全60室のゲストルームすべてが80m²以上のスイートルームというラグジュアリーホテルとして生まれ変わった。コンセプトは「和敬清心」。茶室の侘び寂びに代表される精神性、自然への想いや光の演出などを意識した落ち着いた客室が自慢だ。都内では珍しい緑に囲まれた環境で、ゆったりとした滞在が楽しめる。

前身である目黒雅叙園の歴史は1928年に始まる。創業者・細川力蔵が、東京芝浦にあった自宅を改築し純日本式料亭「芝浦雅叙園」を開業。 日本料理に加え、北京料理をメインに、本物の味を提供することにこだわった高級料亭だった。

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1931年には、庶民でも気軽に入れる料亭として目黒へ移転。料理だけでなく、目も楽しんでもらいたいと、全国から呼び寄せた芸術家たちに壁画や天井画、彫刻などを任せ、館内を装飾。細川には作家たちに仕事を与えるというパトロン的な意識もあったため、仕事を求めてやってくる芸術家たちには費用を惜しまず依頼したという。その結果、“昭和の竜宮城”と呼ばれるほどに豪華絢爛な館になったのだ。

当時生まれたアートのほとんどは、建物が新築された際にも丁寧に移築され、今も大切に守られている。館内に飾られた美術工芸の数々は、創業者による“お客様を喜ばせたい”という一心から生まれた究極のホスピタリティを象徴するもの。それを守り抜くことは同時に、雅叙園のホスピタリティ精神を受け継ぐことなのだ。現在は、国内だけでなく、海外からも、日本美が詰まった唯一無二のミュージアムホテルとして注目を集めている。

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メインエントランスから館内を歩いていくと、突如出現するのが水の流れる通路。そこに建つ「招きの大門」を抜け、歩みを進めていくと、目にも鮮やかな装飾品が次々に出迎えてくれる。絢爛豪華。まさに、その一言に尽きる。

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壁、床、天井と館内の至る所でアートを見ることができるので、ホテル内を歩くだけでも美術鑑賞が楽しめるのだが、実は通常は入ることのできない場所にある作品も間近に見る方法がある。それが、宿泊者限定で開催されるアートツアーだ。

ツアーはまず5階へ(※日によって順番が変わる場合あり)。神殿、チャペル、美容室、写真室、ご親族控室などがある、ブライダルフロアだ。廊下では、漆芸による「天女の舞」が迎えてくれる。

螺鈿、蒔絵、象嵌などの技法が使われている。優雅に天上の音楽を演奏しながら華や香りを振りまく天女。高野山金剛峰寺の障壁画を修復した画家、木村武山が原画を手がけている。廊下天井にも、武山の原画による「天女の舞」が飾られているが、こちらは彩色木彫板だ。

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親族紹介室を通り抜け神殿に入ると、入り口には根上富治が奈良の春日大社の鹿を描いた彩色木彫板「春日の春」が迎えてくれる。愛くるしい鹿たちが、二人の門出を祝福してくれているかのように佇む。

その奥にある大巳殿では、出雲大社より迎えられた御霊が祀られている。右手には、児玉希望の原図による「波涛に群鶴」、左手には菱田春草の原図による「梅と紅葉」が描かれ、それぞれ四季を表す。これから二人が手を携えて長い年月を共に過ごしていけるようにという願いが込められているかのようだ。

日本初の総合結婚式場として、これまで22万組以上の新たなる人生の旅たちを祝福してきた快い“気”が流れる雅叙園。祝いの場である宴会場として愛されてきたこともあり、おめでたいモチーフが施されているのも印象的だ。

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4階には和室宴会場がある。そのメインエントランスには、創業時「目黒雅叙園」だった頃に、料亭の正面玄関として使われていたインテリアが、ほぼ当時のまま再現され、現在も多くのゲストを迎えている。玄関内の壁面は実に圧巻だ。黒漆螺鈿造りで「梅と群鶴」と「竹林と雀」が描かれているが、これは玄関入口上の欄間にある螺鈿作品同様、尾竹竹坡の原図によるもの。欄間と天井に飾られた色鮮やかな彩色木彫板と相まって、実にきらびやかだ。欄間に描かれた立体の画は、「徳川将軍家大奥四季年中行事遊楽の図」。

螺鈿と彩色木彫による驚くべき手仕事はもちろん、華やかな季節の行事の様子を見るのは興味深く、つい時間を忘れて見入ってしまう。現在では到底生み出すことができない貴重な美術品を前に言葉も出ない。5階も4階も、ゲストたちが待ち時間にも退屈せずに過ごせる様、誰が見ても一目でわかる豪華さと、寿ぎを意識した装飾が360度に施されている。祝いの一日がより特別な日なるようにという創業者の願いが伝わってくるようだ。

1階に降りると、茅葺屋根の日本家屋が印象的な日本料理「渡風亭」がある。黒漆にはめ込まれた蝶貝がきらめく螺鈿が壁や床柱に施された個室“竹坡”は、原画を描いた尾竹竹坡に由来した名を持つ。壁面の螺鈿、「老松に鶴」が実に圧巻だ。この螺鈿細工には研ぎ出しという手法が使われている。形に合せた貝を漆で塗り込み、上から木炭で研いで模様を浮き出させるという手法だ。天井画と欄間は、杉板に北海道の湖(阿寒湖、摩周湖、屈斜路湖)などの四季が描かれている。

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天井と欄間に池上秀畝による四季の花と七十七羽の鳥が描かれ、螺鈿細工の障子や富士山を描いた格子も独創的な“秀畝”もおすすめだ。この部屋には螺鈿と組子、床柱の彫刻という雅叙園を代表する美術工芸がバランス良く取り入れられていて特徴的。どこに目を向けても楽しめるのだ。
 
1階の最奥には中国料理「旬遊紀」が待っている。創業当時から供されていた自慢の中華だが、伝統の味だけでなく、インテリアもまた凄い。特に必見は、鹿鳴館やニコライ堂などを手掛けた建築家ジョサイア・コンドル設計の部屋“南風”だ。昭和6年に創業者がこの地を購入した時にもとからあった旧岩永邸の遺構。マントルピースとアールのついた出窓は建築当時洋館であった名残で、天井とマントルピースには当時流行していたアールヌーボの装飾が施されている。建築好き、インテリア好きにとって、ここで食事が楽しむのは夢のような体験だろう。文化勲章受章者・竪山南風による壁画や天井を彩る装飾にも注目だ。   

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“玉城”は美人画の大家・益田玉城による「桜下花見踊りの図」を堪能できる個室。新橋の東おどりを題材にした艶やかな図案と、扉や幅木、戸枠に施された朱漆塗りの鮮やかさに心が躍る。

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“玉城”の中央には、現存する最古の回転テーブルが置かれている。綺麗に修復されて現在も使われているのだ。

実は回転式の中華テーブルは日本で生まれたもの。「席に座ったまま料理をとりわけ、次の人に譲ることができないか」という、創業者がもてなしの心が見て取れる。

また、1935年に宴会場として建てられた「百段階段」も現存している。東京都の有形文化財に指定されており、伝統的な日本の装飾美、日本の美意識の最高到達点として評価されている。

鮮やかな日本画、浮彫彫刻などがあらゆる空間を埋め尽くし、部屋ごとに趣が異なっている。日本美術の多彩さを感じられる空間だ。

このほか、1階の廊下にある美しい彩色木彫版や、衣装サロン入り口の南風階段などを解説付きで巡ることのできる全90分のアートツアーを終えて感じるのは、「よくぞ遺していてくれた」という思い。

文化の保存には責任が伴うが、それを実現させているものこそ、ホテル雅叙園東京に創業以来息づいている、独自のもてなしの精神なのだろう。

ホテル雅叙園東京に現存するもてなしの日本美。宿泊者だけに許された特権を享受しながら、優雅に酷暑を乗り切ってみてはいかがだろうか。

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宿泊者限定「雅叙園アートツアー」
毎週月曜日、水曜日、金曜日、日曜日
9:00am〜10:30am
※前日の5:00pmまでに要予約。先着順で定員になり次第締め切り。
※撮影可
http://www.hotelgajoen-tokyo.com/stay/guide

ホテル雅叙園東京で艶やかにアートに浸るなら、着物で日本の美を満喫する女子会プランも
『撫子NADESHIKO』着物プラン(女性限定)
デザイン着物やレトロ着物など多数のラインナップからお気に入りを選びレンタルし、和の装いで有形文化財「百段階段」を見学し、食事も楽しめる宿泊込みのプラン。手ぶらででかけ、着付けをしてもらったら、見学、食事時間以外は、ホテル内外を自由に散策可能。

料金に含まれるもの
【 1 】 着物レンタル一式 & スタッフによる着付け
希望の時間にお部屋で着物選び&着付けが可能。肌着や襦袢はもちろん、足袋や下駄、バッグまで全て込み。着付けの時間は15:30~17:30(所要時間60分)。事前にご希望のお時間を指定。

【 2 】 有形文化財「百段階段」見学ツアーに参加 18:30~

【 3 】 夕食 19:30~
3つのレストランから選択(予約状況に依る)
■日本料理「渡風亭」
■中国料理「旬遊紀」
■RISTORANTE“CANOVIANO”
※5名様以下で利用する場合、旬遊紀及び渡風亭は相席の可能性あり。

【 4 】 ご朝食・エグゼクティブラウンジアクセス付

料金:ホームページを参照
http://www.hotelgajoen-tokyo.com/restaurant/nadeshiko
開催期間:2018年10月1日(月) – 2018年12月30日(日) 要予約
※宿泊なしのプランもあり。
着物レンタル、着付け、ランチ、百段階段見学がついた通常プラン(1名1万3000円)、
さらに、プロによるヘアセット、写真撮影、レンタル小物、1ドリンクがついたフルパッケージプラン(1名2万5000円)の2種。
※フルパッケージプランのみ12/28(金)まで、1週間前までに要予約。

ホテル雅叙園東京
http://www.hotelgajoen-tokyo.com/

ホテル雅叙園東京はSmall Luxury Hotels of the World 加盟ホテル
Small Luxury Hotels of the World(SLH)とは、世界80カ国において個性溢れるラグジュアリーな独立系ホテルだけで構成されたホテルグループ。最先端のデザイナーズホテル、都心の隠れ家ホテル、歴史の香り漂うカントリーハウス、プライベートアイランドのリゾートなど520以上のホテルが加盟している。オリジナリティ、ロケーション、クオリティ、サービス、滞在を楽しむための工夫など、あらゆる面から快適な旅を楽しんでもらうための高いマインドを持っていることが、加盟のための厳しい条件となっている。日本国内で認定されているのはわずか12軒のみ。
https://www.slh.com/

ABOUT
牧口じゅん

牧口じゅん|MAKIGUCHI June 共同通信社、映画祭事務局、雑誌編集を経て独立。スクリーン中のファッションや食、音楽など、 ライフスタイルにまつわる話題を盛り込んだ映画コラム、インタビュー記事を女性誌、男性誌にて執筆中。