BMW 320d ブルーパフォーマンス ツーリングに試乗|BMW
Car
2014年12月8日

BMW 320d ブルーパフォーマンス ツーリングに試乗|BMW

BMW 320d BluePerformance Touring Sport|
ビー・エム・ダブリュー 320d ブルーパフォーマンス ツーリング スポーツ

ディーゼルは、ニッチからメインマーケットへ

BMW 320d ブルーパフォーマンス ツーリングに試乗

欧州で鍛え上げられたクリーンディーゼル技術が、日本国内でもついに本格導入される時代が到来した。その牽引役ともいえるBMWは、中核モデルたる新型3シリーズで、ディーゼルエンジンを搭載した「BMW 320d ブルーパフォーマンス セダン/ツーリング」を投入。ガソリン車に遜色ないパフォーマンスを持つとして、OPENERS CARの執筆者が選ぶ2012年のベスト5台「OPENERS CAR Selection 2012」でも高い支持を得た。そんな、いまもっとも旬なクルマ「BMW 320d ブルーパフォーマンス」のワゴンボディ「ツーリング」を小川フミオが試乗。リポートをお届けする。

Text by OGAWA Fumio
Photographs by ARAKAWA Masayuki

ディーゼル人気の理由

クリーンディーゼルエンジン搭載車として国内ナンバーワンの低燃費をウリにしたBMW「320d ブルーパフォーマンス」。そもそもBMWのディーゼルエンジンの歴史は長く、最新の3シリーズでもディーゼルモデルは、低燃費を謳いながら、その走りはガソリンエンジンとみまごうぐらいスムーズと、すばらしい仕上がりを見せている。

2012年8月22日にわが国で発売された320d ブルーパフォーマンス。車名の“d”はディーゼルエンジンをあらわし、“ブルーパフォーマンス”は排出ガス中に有害成分が少ない、いわゆるクリーンディーゼルを意味している。排出ガス中のNOx(窒素化合物)やPM(粒子状物質)の量を減らすことに成功し、世界でもっとも厳しいと言われる日本の排出ガス基準であるポスト新長期規制にも適合している。

欧州ではすぐれたディーゼルエンジンを持ちながら、日本市場での展開に及び腰のメーカーもあるなかで、BMWはやる気である。そして同年9月には、ツーリングモデルが追加された。今回試乗したのは、軽快さをセリングポイントにしたワゴンモデル、BMW「320d ブルーパフォーマンス ツーリング」である。

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欧州では、BMWをはじめ、アウディもメルセデスもポルシェも、ディーゼルエンジンに熱心だ。意外かもしれないが、「パナメーラ」でもディーゼルモデルの人気が高い。その理由は燃費と静粛性の高さ。価格はガソリン車より高額だが、売れ行きはたいへんよい。一時期はディーゼル車が売れすぎて、ドイツなどでは軽油が足りなくなったということもあった。

320d ブルーパフォーマンス ツーリングに乗ると、高速での高い静粛性や低回転域での太いトルクなど、燃費いがいの点でも、あちらでのディーゼル人気の理由がわかるとおもう。日本では価格にしても、「320i ツーリング」(2012年12月導入)より20万円高の491万円に抑えるなど、輸入元はいろいろ販売努力をしている。ここも評価したいポイント。

BMW 320d BluePerformance Touring Sport|
ビー・エム・ダブリュー 320d ブルーパフォーマンス ツーリング スポーツ

ディーゼルは、ニッチからメインマーケットへ

BMW 320d ブルーパフォーマンス ツーリングに試乗(2)

議論の意味を吹き飛ばす

BMW 320d ブルーパフォーマンスに搭載されるディーゼルユニットは、1,995cc直列4気筒。コモンレール式の燃料直噴システムを採用することで高効率化をはかり、それに、低負荷から高負荷までに対応し、低回転域から高回転域までをカバーする可変ジオメトリーターボチャージャーを装備。4気筒の低燃費と6気筒のパワフルさを両立させたことを、BMWでは謳っている。

実際、操縦すると、驚くほどスムーズだ。そもそも先代のディーゼルモデルはアルピナ「D3」で体験していたが、あのときの驚きがよみがえった。1,750rpmから380Nmもの大トルクを出し、かつ5,000rpmまでスムーズにふけ上がる回転マナーは、もはや“ディーゼルのメリットとデメリット”などという議論の意味を吹き飛ばすものだと、つくづくおもった。

ほぼアイドリングからものすごい力強さでもってクルマは加速する。とりわけ「ドライビング パフォーマンス コントロール」でスポーツモードを選択すると、どこまで加速するのか、と焦るほど、弾丸のように速度を増してゆくのだ。ディーゼル特有の低回転域からの大トルクと、効率のよいターボチャージャーは、最強のコンビだ。すごい仕事をしている。

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いちど巡航速度に乗れば、100km/hで1,600rpmしかまわらないので、高速域でもエンジンの機械音や排気音は低く抑えられる。トルキーでかつ静かという、ディーゼルのよい面はそのままに、ガソリンエンジンなみにエンジンをまわせるという独自の楽しさまでが備わっている。それがBMW的なディーゼル車なのだ。

始動も一瞬でエンジンがかかる。まあ、いまごろ、こんなこと驚く人間も少ないかもしれないが。かつてのディーゼルエンジンはグロープラグというものを持ち、キーをひねってから始動まで1分などというのがざらだった。いまさらながら隔世の感にとらわれる。唯一、“あ、でも、このクルマはほんとうにディーゼルエンジン搭載なのだ”とおもうのは、アイドリングに近い回転域から多めにアクセルペダルを踏んだとき。特有のガラガラッという音が一瞬エンジンルームのほうから聞こえてくる。でもすぐになめらかな静粛性が支配する。

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ディーゼルは、ニッチからメインマーケットへ

BMW 320d ブルーパフォーマンス ツーリングに試乗(3)

失われることのない“駆け抜ける喜び”

ディーゼルは高速で静粛性が高く、街中では太いトルクで扱いやすい。つまり、2つの世界でおおいに魅力を発揮する。かつ、BMW 320d ブルーパフォーマンスは、3つめの世界でもすぐれた性能を見せる。かためられた足まわりゆえ、ワインディングロードでの振る舞いにも目を瞠るものがある。ドライビング パフォーマンス コントロールのスポーツモードを選ぶと、電動パワーステアリングが中立ふきんで目立って重くなる。昔のスポーツカーなみの重さで、“これは重すぎでは”とおもうぐらいだ。でも、こういうところに、メーカーが考える“スポーツ性とは”という考えがあらわれているようで興味ぶかい。

室内は広く、前後席とも余裕たっぷり。スイッチ類のレイアウトは上手に整理されており、操作はしやすい。ダッシュボードのデザインテーマは、合理性はないが、我慢はできる。かつてすべてのフェイシアをドライバーのほうに傾け、人間工学的なレイアウトの重要性を謳ったのがBMWだったが、同種のテーマをもっと掘り下げされないのだろうか。と、おもったりもする。レザーシートはちょっと腰がなくて、長い距離を乗っていると、背中がやや疲れた。個人的な体格の問題だろうか。そう考えたほうが自然だろう。

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足まわりはやや硬めだが、よくしつけられている。とくにフロントの味付けのすばらしさは、コーナーでハンドルを切り込んだときのクルマの動きで、ただただ感心するばかり。ノーズはぐっと沈みこむようで、きちんと足が踏ん張り、ハンドルの切れ角の微妙な角度に反応して車体をきれいに曲がらせる。ハンドルを切るためにBMWに乗る、というひとがいても驚かないだろう。

いっぽうリアサスペンションは、設定が日本向け3シリーズ代々の欠点だとおもうのだが、新世代でも高速道路の継ぎ目などでは、ショックの吸収がいまひとつよくない。ドシンバタンッとする。クルマのキャラクターを考えた場合、もっとしっとりしていてもいいようにおもう。

BMWのディーゼルモデルはいま着実に増えている。機能性を求めるひとが乗るステーションワゴンであるツーリングとディーゼルエンジンとの相性はとくにいいし、先んじて発表されたセダンのラインナップでも存在感が光る。2012年9月には「X3」に四輪駆動システムと184psの2リッターターボディーゼルを組み合わせた「X3 xDrive 20d ブルーパフォーマンス」(564万円)が設定されたのが記憶にあたらしい。

さらにさかのぼり、同年8月には「523d ブルーパフォーマンス」(633万円)と、同ツーリング(663万円)、年初には3リッター6気筒ディーゼルの「X5 xDrive35d ブルーパフォーマンス」(839万円)が導入されている。

価格的にこなれた3シリーズとしての導入で、ニッチ(すきま)市場から軸足をメインマーケットに移し、わが国でも本格的にディーゼルエンジンによる攻勢をかけていくBMWの姿勢が明らかになったといえる。それは評価に値する。

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spec

BMW 320d BluePerformance Touring Sport|
ビー・エム・ダブリュー 320d ブルーパフォーマンス ツーリング スポーツ

ボディサイズ|全長4,625 × 全幅1,800 × 全高1,460 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,520 / 1,560 mm
最低地上高|140mm
トランク容量|495 - 1,500リットル
重量|1,620 kg
エンジン|1,995cc 直列4気筒ターボディーゼル
最高出力| 135kW(184ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|380Nm(38.7kgm)/ 1,750 - 2,750 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ストラット / 5リンク
タイヤ|225/50R17
ブレーキ|ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08モード)|19.4 km/ℓ
価格|511万円

           
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