メンズ バイイング・ディレクター&マネージャーにインタビュー|MR PORTER
FASHION / FEATURES
2018年5月14日

メンズ バイイング・ディレクター&マネージャーにインタビュー|MR PORTER

MR PORTER|ミスターポーター

メンズ バイイング・ディレクター&マネージャー インタビュー

スペシャルアイテムのローンチを可能にする、

“スタイル・デスティネーション”という考え方

英国を拠点にし、世界最大のメンズファッションのオンラインサイトを展開するMR PORTER(ミスターポーター)。サイトの世界観を構成し、数多くの魅力的な商品をバイイングするキーマン2人が今春来日。東京で受けた刺激から、続々とローンチされる魅惑的な限定コラボアイテムなど、日々進化するサイトの今後について語ってもらった。

Photographs by SATO Yuki Interview & Text by HATAKEYAMA Satoko

東京でのバイイング&リサーチに影響されることは多々あります

――今回の来日の目的は?

サム・ロバン氏(以下、サム) 2018秋冬シーズンのメンズウェアの買い付けにきています。東京には3年ぶりで、日本の新しいブランドや、どんなトレンドが流行っているかなどを同時にリサーチしています。

――日本のブランドで新規に買い付けしたブランドはありますか?

サム 「フラッグスタッフ」「オーラリー」などですね。なかでも「オーラリー」はクオリティも素晴らしく、自分もシャツをプライベートでオーダーしました。

――お二人からみた今の東京のメンズシーンはどうですか?

フィオナ・ファース氏(以下、フィオナ) 東京のマーケットはいつ来てもエキサイティング。世界と比べると、日本の男性はとてもナチュラルにファッションを理解しているなと感じます。ショップにしても、メガストアから小さなセレクトショップまで面白いアイテムがたくさんあり、店独自のレーベルもクオリティの高いものが多いですね。クリエイティブでありながら、冒険心があるということをものすごく感じます。

サム 冒険心があるという意味では、街を歩いている人たちのスタイリングがとてもユニーク。例えば、アウトドアのアイテムにアメリカンスポーツをミックスしてみたり、フォーマルをミックスしたり。ウインドゥに飾られている素敵なコーディネートを、見事に取り入れて実践しているような印象を受けます。

フィオナ 極端な話、東京にはもうリアルな店はいらないんじゃないかとも思いますよね。若い世代はもちろん、年配の世代にとっても、特にメンズファッションにおいてはそう感じます。

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――東京でのバイイングやリサーチが、MR PORTERのテイストに影響することはありますか?

フィオナ MR PORTERは世界170国向けに販売しているので、たとえ自国で知名度がまだそんなに高くないブランドであっても、サイトを通じてワールドワイドでの認知度がアップすることが可能です。カジュアルなものが好きな人、アーバンなテイストが好きな人に「日本にはこういうブランドがあるんだ」と知ってもらえることは大きいと思います。

サム それに加えて、日本のブランドは価格とクオリティのバランスがすごくいいので、買った人は価格以上の満足を得られることができると思います。そこはMR PORTERが目指すところでもあるので、私たちが東京でのリサーチで得たものの影響は少なからずあると思います。

――MR PORTERではバイイングアイテムだけでなく、オリジナルレーベルの「Mr P(ミスターピー)」も順調だそうですね。

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フィオナ ブレザーやジーンズ、ニットなど「男性のワードローブの必需品」をコンセプトに昨年11月にローンチしたのですが、私たちが期待した以上に好評です。

4月に三回目となる春夏のカプセルコレクションをローンチしたばかりで、7月にはハイサマーのカプセル、9月には秋のコレクションが発表されます。アイテムのラインナップもさらに拡大していく予定です。

――素晴らしいですね。9月からの新展開が楽しみになってきます。

フィオナ 「Mr P」というレーベルは、アイテムのテイストとしてはカジュアル・コンテンポラリーな立ち位置です。MR PORTERで扱っているブランドよりは価格帯も抑え、買いやすさを意識しています。

ローンチしてみて私たちがひとつ驚いたのは、「ロロピアーナ」や「ブルネロ クチネリ」、「アクネ」「プラダ」などを買うお客様が「Mr P」も一緒に買ってくださるということ。ハイブランドのアイテムとミックスして着てくださっているのでしょう。そういう使い勝手の良さも「Mr P」の特徴だといえます。

MR PORTER自体も“スタイル・ディスティネーション”を提案しているサイトなので、単にハイブランドのアイテムを提供するだけでなく、美しい生地を使っているとか、仕上げが素晴らしいとか、加工が素晴らしいとか、ディテールやクオリティにこだわったベーシックなアイテムの提案を「Mr P」ではやっていきたいですね。

MR PORTER|ミスターポーター

メンズ バイイング・ディレクター&マネージャー インタビュー

スペシャルアイテムのローンチを可能にする、

“スタイル・デスティネーション”という考え方 (2)

今後もユニークなサイトでいられるよう、常に努力していきたい

――MR PORTERはハイブランドとのエクスクルーシブコレクションも大きな話題となっていて、今春は「ベル&ロス」「カルティエ」「プラダ」と、立て続けにスペシャルなアイテムがリリースされました。なぜ、こういったプロジェクトが可能なのですか?

フィオナ MR PORTERのお客様はデジタルに慣れている方が多いので、オンラインで高額商品を買うことに全く抵抗がないというのがひとつあります。もちろんこれまでもラグジュアリーウォッチは、各ブランドでオンラインのショッピングサイトはありましたが、アメリカのみなどの地域限定配送でした。

MR PORTERはグローバルな配送ができるので、そこで様々なアプローチの可能性が広がったのも大きいと思います。あとは、先ほども申し上げた“スタイル・デスティネーション”というコンセプト。買いやすいスポーツウォッチも高級なファインウォッチも、メンズのワードローブのひとつであることにはかわりがないという考え方が、MR PORTERでのプロジェクトを可能にしているのだと思います。

サイト内で最も高価な商品となる「ベル&ロス」の時計は5型すべてがスペシャルなものなので、すでにコレクターズアイテムになっているようです。限定ストラップの「サントス ドゥ カルティエ」もローンチしてすぐに完売になりました。

サム 「プラダ」は春夏のコレクションになりますが、限定のカプセルコレクションをオンラインで販売するというのはメンズではMR PORTERが初となります。4月25日からのスタートで、32アイテムを販売します。

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――例えば日本のブランドと限定のカプセルコレクションを販売するなど、今後の取り組みのご予定などは?

サム 日本のブランドとはすでにいくつか限定やコラボレーションはやっていて、カプセルコレクションの販売に関してもゆくゆくは取り組みたいと考えていますけれど、ちょっと先のお楽しみとしておいてください。私たちにとっても、個々のブランドとのスペシャルなプロジェクトはとても大切にしていることでもあります。MR PORTERが今後もユニークなサイトであるように常に努力はしていきたいですね。

フィオナ 私たちがいま取り組んでいるのは、世界中でその地域にあったアイテムと、よりよい形でお客様にアプローチしていくということ。2020年までにはサイトをその国の言語でローカライズする予定です。配送のサービスにしても、今後は日本や中国などにもオフィスを置いて、よりスピーディな配送のインフラを整えていきたいですね。

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Fiona FIRTH | フィオナ・ファース
MR PORTER(ミスターポーター)のメンズウェア&アクセサリーのすべてを管轄するバイイング・ディレクター。ハーヴェイ・ニコルズ、リーバーアイランドなどを経て、2016年よりMR PORTERに参加。現在はロンドンのオフィスで、400以上のブランドを担当している。

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Sam LOBBAN |サム・ロバン
バイイング・マネージャーとして、デザイナーズ、シューズ、スポーツウェアなど6つのバイイングセクション、15人のチームを率いる。2011年よりMR PORTERに参加。現在はL.A.に家族と住み、世界中をバイイング&リサーチで飛び回る。

           
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