祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.33 アレクサンドル・マテュッシさん

祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.33 アレクサンドル・マテュッシさん

祐真朋樹対談

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今回のゲストは、ami alexandre mattiussi(アミ アレクサンドル マテュッシ)デザイナーのアレクサンドル・マテュッシさん。アイコンであるレッドビーニーをSMILEY(スマイリー)が被ったモチーフをあしらったコラボアイテムの発売を記念して3年ぶりに来日したという彼に、コラボ誕生の経緯から今後のブランドの展望まで様々なお話を伺いました。

Interview by SUKEZANE TomokiPhotographs by SATO Yuki (KiliKiliVilla)Text by ANDO Sara (OPENERS)

アミの服やコレクションを見て“パリらしさ”を感じてほしい

祐真朋樹・編集大魔王(以下、祐真) アレクサンドルさんが愛用されていることで、ブランドのアイコンとしても知られるようになったレッドビーニーですが、この写真の少年はアレクサンドルさんですか?

アレクサンドル・マテュッシさん(以下、アレクサンドル) そうです。父親のお下がりのジャケットをリサイズしてシャツと合わせて着ているんです。

祐真 おしゃれですね。とてもファッショナブル!

アレクサンドル いいスタイリングでしょう? 子供の頃から自分なりにミックスして服を着るのが大好きでした。学生時代、周りの友達がTシャツとスニーカーで走り回っている中、僕はシャツと革靴というスタイルだったりして。

祐真 その頃からレッドビーニーはトレードマークだったんですか?

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アレクサンドル はい。僕はカールの強いくせ毛なんですが、当時母親も切ってくれないので、自分でこのボサボサヘアをなんとかしようと思ってかぶり始めたんです。一番好きな色が赤なのでビーニーも赤。アミを始めた頃は常にかぶっていましたよ。だからどこでも「レッドビーニーの人」と認識されるようになって。コミュニケーションのきっかけにもなるので、今回のスマイリーとのコラボにもつながりました。

祐真 なるほど。スマイリーとレッドビーニーはいいコンビネーションですね。スマイリーはイギリス発祥のものだと聞いたのですが、いろいろバリエーションがあるんですか?

アレクサンドル スマイリーを考案した人は1970年代のフランス人の男性だそうです。戦争や石油危機という時代背景もあって世の中全体に暗いムードが漂っていた中、新聞社のインターンとして働いていた彼は、何か明るくなるような記事を書こう、とこのスマイリーの絵も一緒に載せたら大きな反響があり、そこから世界中に広まったそうですよ。(※編集部注:諸説あり)

祐真 そうなんですね。では、服の話をしましょう。毎シーズン、コレクションを楽しみにしていますが、演出が素敵ですね。今回は屋根の上にモデルたちが登場したのが印象的でした。

以前も空港や満員電車の中、放課後のワンシーンを表現したものなどが記憶に残っているのですが、どれも斬新で面白いなと思って見ていました。インスピレーションはどのようにして沸いてくるのですか?

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アレクサンドル 毎朝起きるとアイデアが降ってくる感じなんです。まず、アミを作る上で、パリらしさというものを大事にしながら表現しています。

僕自身フランス人で、パリに住むパリジャンという意識がありますが、毎日パリという街からインスピレーションを得ています。日本人でもニューヨーカーでも中国人でも、アミの服やコレクションを見て「これがパリだ」と、まるでパリのポストカードを見るようにパリらしさを感じていただければ嬉しいです。

祐真 僕もパリ、大好きです。素敵なコンセプトですね。

アレクサンドル ありがとうございます。今回の屋根の上というアイデアはなかなか良かったなと自分でも思っています。6月のショーも特別な演出を予定しているので、是非楽しみにしていてください。パリだけど、また違うパリらしさを感じてもらえると思いますよ。

祐真 楽しみです。違うパリ……未来的な感じかな?

アレクサンドル みんなの知らないパリです。

祐真 いいですね! アレクサンドルさんの洋服を見ていると、アイビースタイルを彷彿とさせるのですが、ご自身の若い頃のファッションと何か関係があるのでしょうか?ってアイビー、わかるかな。最近はワールドワイドな言葉になってきていると思いますが。

アレクサンドル アイビースタイル、わかりますよ! そうですね……自分の文化的背景なのか、幼少期に受けた教育からなのかはわからないのですが、そういうことすべてがあってこそ今の僕があると思っています。

何からどう影響を受けて服をデザインしているのかということを説明するのは難しいですが、ブランドとしての考え方は実用的だと思っています。

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たとえばシャツであれば身幅や、襟の向きなどにこだわるように、何をデザインする時も一番大切にしているものはプロポーションです。漠然としたイメージを表現するのではなく、僕は形から入るタイプだと思っています。

そういう意味では、建築にも似ているところがあるかもしれません。ここに配置するのでもいいし、こっちでもいいけど、僕の感覚ではここ、というような決め方で進めています。

祐真 なるほど。

アレクサンドル コレクションに取りかかる時、あまり写真や絵などに頼らないようにしているんです。今回であれば、色をふんだんに使ったカラフルなコレクション、というキーワードからスタートしました。

この色を使おう、というところから始まり、そこからルックを作っていくんです。どことなく作曲するようなイメージにも近いかもしれませんね。僕の頭に浮かんだ主旋律に、チームと一緒にその後の展開を考えていくという作業です。

次のコレクションは今回の反動か、ベージュなどニュートラルな色使いがメインになっています。来季はそういった色合いのものが着たいなと思っているのですが、毎回、この先どんなものが着たいのかなどその時のフィーリングを大事にしています。

祐真 アレクサンドルさんの“今の気分”が反映されているのですね。2018年秋冬シーズンのルックはどれも素敵でした。

アレクサンドル ありがとうございます。今回で言うと、ショーの最初に登場したロングコートとクロップドジーンズ、そしてヘビーなニットのイメージからコレクションを膨らませたんです。

素材から始まって、そこからスタイルを作り上げていくという行程が僕のいつものやり方です。

ファッションショーでわざわざシンプルなジャケットとジーンズを見せる必要はないんじゃないかと言う人もいますが、僕は奇抜でクレイジーなデザインのものよりも、こういった日常的に着られて誰もが買えるものこそ提案していくべきだと思っています。

これなら20代でも60代でも自分を投影させられるから。

自分のスタイルがあって、何を着たらいいのかわかっている人たちというのはごく一部です。

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ami alexandre mattiussi 2018-19AW

デザイナーの役割は、服の着こなし方を提案することだと思っています。グリーンとブラウンをミックスするのもアリだよ、と提案したり、あなたは気づいていないかもしれないけど、このジャケット絶対に似合うよ、と勧めたり。トライしたことがなかっただけで着てみれば好きになるかもしれないでしょう。

祐真 素晴らしい考え方だと思います。オールキャメルのルック、素敵ですね。白のシャツとスニーカーが効いていて。

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ami alexandre mattiussi 2018-19AW

アレクサンドル ありがとうございます。そのルックは僕の母も気に入ってくれたんですよ。

僕たちはファッション業界に身を置いているから、それほど奇抜なアイデアではないけれど、ほとんどの人には十分クレイジーに映るでしょうね。「えっ、全身キャメル? 信じられない!」って。

でも奇抜なデザインにしているわけではないので、リアルに着られるんだということを伝えたいです。

毎シーズン、現実味のある設定でリアルライフを映したコレクションを作っているからこそ、ショーではセットを壮大なものにするんです。ストーリーをすべて語りたいので。

スタイリッシュでクールな若いパリジャンが、タバコを片手に彼女にメッセージを送っているという日常の風景ですが、そこは屋根の上、という感じに。

Page02. 大切な友達だけにこっそり教えてあげたくなるようなブランドでありたい

ABOUT
SUKEZANE Tomoki

1965年京都市生まれ。(株)マガジンハウスのPOPEYE編集部でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。現在は『UOMO』『GQ JAPAN』『Casa BRUTUS』『MEN’S NON-NO』 …