“音楽愛”に満ち溢れた25年間 DJ伊藤陽一郎の過去・現在・未来|AKAKAGE
LOUNGE / MUSIC
2018年4月19日

“音楽愛”に満ち溢れた25年間 DJ伊藤陽一郎の過去・現在・未来|AKAKAGE

“音楽愛”に満ち溢れた25年間
DJ伊藤陽一郎の過去・現在・未来

Photo by NAGAO masashi  Text by NAGASAKI yoshitsugu

伊藤陽一郎、またの名をAKAKAGE。クラブミュージックファンにはおなじみだろうが、クラブミュージックに疎いという人も、彼の創る様々なサウンドロゴや番組テーマなどを一度は耳にしているはずだ。
そんな彼は、今年、音楽生活25周年を迎えるという。これは、伊藤陽一郎というのは単にDJとして名を成しているだけでなく、作曲家、サウンドプロデューサーとして多岐にわたる活躍をしているからこそ成し得た、ある種の偉業とも言える。

伊藤 「25年というと長いようで、でもまだまだという感じもあります。道半ばというのが自分自身に言いたいことです」。

謙虚ともとれる発言だが、“これから”という意思に満ちた発言ともとれる。

伊藤 「岐阜に育って、小学生の頃から音楽は好きだったんですが、高校に入るとラグビー漬けで音楽の空白時代。高校3年の頃にファッションに目覚めて、そこで進学は美大へと向かって行きました」

一浪ののち多摩美術大学へ。それも建築科!

伊藤 「変わっている物事が好きだったんで、美大で建築というのも変わっているかなと思って(笑)。名古屋での浪人時代にまた音楽熱が再燃して、大学に入るとそれがさらにエスカレート。学内でパーティを開いてそれがDJの始まりでした」。

そんな中、仲間3人とスタートさせた<Natural Essence>での活動から生まれたYMOのリミックスが大きな評判を呼ぶ。

伊藤 「一応、建築もちゃんとやっていて、学生時代から某有名建築事務所でアルバイトを続けていたのですが、もう音楽で食べて行こうと決めました」。

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AKAKAGEとしてのスタート

<Natural Essence>としての活動はロンドンでも評判を呼び順調な音楽生活が始まっていた中、伊藤氏はさらなる自分自身の興味の道を発見する。
「<Natural Essence>とは違うこと、裏の活動をしようと考え、それなら忍者だなということで<赤影=AKAKAGE>という名義で、表のアブストラクト的だけではない、元々好きなラテンやジャズをベースにもっとマルチなジャンルの音楽活動を始めました」。

さらに、もう一歩先へ

そのAKAKAGEとしての活動も今年で20年を迎える。

伊藤 「とにかく、ここまで続けられたのは、基本的に音楽で人をハッピーにしたいというのがあって、そのためには自分も楽しくなければという想いがあったからかもしれません。単にDJだけにこだわっているのではなく、最初から曲作りもやっていたし、仕事としてのリミックスワークもかなりの量をこなしてきた。音楽との関わりもジャンルやスタイルにはこだわりたくないですね」。

まさに、“音楽愛”こそが、伊藤氏がここまで長く音楽ライフを続けてこられた理由だろう。
そして、この25周年を記念したアニバーサリーとしてアナログ7inchシングルが発売される。A面の『巻き戻したいほどの幸せ』はボーカルに横山剣(クレイジーケンバンド)、演奏に東京スカパラダイスオーケストラのホーンセクションを迎えた軽快なスカ歌謡で、作詞はスカパラの谷中敦が担当。B面の『青の世界 feat. CRAZY KEN』は同じく横山剣のボーカルをフィーチャーした楽曲で、スウィングするバンド演奏にドラマチックなストリングスが寄り添う、美しいバラードナンバー。ジャケットに描かれたオープンリールのイラストは伊藤陽一郎本人によるもの。

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伊藤 「どちらも思い入れ深い楽曲です。『青の世界 feat. CRAZY KEN』はその時に関わっていたCASIOのOCEANUSという時計のビジュアルから一気にイメージが膨らんで生まれた曲。時計と街がシンクロしながらゆっくり回る感じを曲にしました。そしてOCEANUSの10周年記念ソングとして作った、『巻き戻したいほどの幸せ』。これは、東京スカパラダイスオーケストラの谷中さんの作詞です。2曲ともボーカルはクレイジーケンバンドの横山剣さん。普段の剣さんは、人の曲でボーカルを取らないとのことだけど、剣さんのボーカルがどうしても必要だからとお願いして、歌ってもらえました。結果的にも大正解。男の心情をじっくりと声に乗せられるのは、剣さんしかいないですからね」。

伊藤氏のDJという仕事からダンサンブルな曲をイメージするが、意外にも『青の世界』は美しいバラードだ。

伊藤 「僕自身はDJをやるけれど、曲はメロディーメーカーとしての意識で作っているから、違和感はないですね。『巻き戻したいほどの幸せ』の方は、オーセンティックなスカをやりたいと思って、狙い通りになりました。どちらの曲も自分としては、スタンダードになるような音楽を作りたかった。いつまでも歌い続けられる、いつ聴いても素敵であるようにと。当然だけど、いい音楽は時代を越えて、いつまでも聴かれ続けると思うし、自分の曲もそうあって欲しいと思ったのです」。

その根底には、伊藤氏が子供の頃から追い続けてきた、音楽を通じて人を楽しませたいというベーシックがあったからだろう。

伊藤 「そう。でもそれだけでなく、自分自身も進化し続けて、その中で本当のスタンダードを産める自分にならなければという気持ちもあるからですかね」。

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伊藤陽一郎「巻き戻したいほどの幸せ / 青の世界 feat. CRAZY KEN」
発売日|4月11日
価格|1,620円(税込)
JET SET
https://www.jetsetrecords.net/i/816005400129/

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