マイナーチェンジしたゴルフ7に試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2017年3月22日

マイナーチェンジしたゴルフ7に試乗|Volkswagen

Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ

マイナーチェンジしたゴルフ7に試乗

2016年11月にマイナーチェンジを果たした、第7世代の「ゴルフ」に、河村康彦氏が試乗した。見た目には最小限の変更にとどめられた新型は、実際どのような変化が図られたのか。日本上陸を前に、マヨルカ島でのインプレッション。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

変わったのはディテールのみ

あれ、一体どこが変わったんだろう?

正直なところ、それがモデルライフ半ばでマイナーチェンジを行ったゴルフを目にしての、最初の印象だった。

舞台は地中海に浮かぶスペイン領はマヨルカ島の空港。ターミナルビル前にズラリ並べられた色とりどりの試乗車たちは、リファインが施されたとはいえ基本は従来と変わらぬ印象の、見紛うこと無き”純正ゴルフ”そのものだ。

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

もちろん、現オーナーであれば前後のバンパー形状が微妙に変わっていたり、リア コンビネーション ランプのグラフィックに手が加えられたことに、目ざとく気づくに違いない。そんな“標準シリーズ”よりもさらに変更点が少ないスポーツグレードのGTIでも、フロントグリルを横断する赤いラインがヘッドライト内で翼端状にキックアップして、独特の“目ぢから”が一層力強くなったことを、現オーナーならばすぐに見抜くはずだ。

そうは言っても、さほどディテールに詳しくない人にとっては、やはり「どこが変わったの?」という印象の方が強く浮かびそう。もちろん、こうして敢えて大きなイメージチェンジが図られなかったのは、そもそも2012年にデビューをした“ゴルフ7”こと現行型の、基本的なデザインのまとまり具合が高かったことを示すひとつの証左でもあるはずだ。

Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ

マイナーチェンジしたゴルフ7に試乗 (2)

進むデジタル化

一方、配布された資料の中に“The digitalised Golf”という表記が見られるように、今回のリファインでの最大のポイントは、安全ディバイスを含むさまざまな装備のアップデートや、最新の運転補助システムの採用など、昨今登場の最新ライバルたちに差を付けられはじめた、電装品関係の刷新をメインとしたものと紹介してよさそうだ。

例えば、自動ブレーキへの歩行者検知機能の追加や、表示画面の大型化を含む、完全に新しいマルチメディアシステムの設定。アダプティブクルーズコントロールの、ステアリングアシストを含む渋滞時前車追従機能の採用などはその一例。

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

Volkswagen Golf 1.5TSI BlueMotionTechnology|フォルクスワーゲン ゴルフ 1.5TSI ブルーモーションテクノロジー

グループ内ブランドであるアウディ車が先鞭をつけた、フルバーチャル式メーター設定も、ゴルフ史上では初めての出来事となる。やはりアウディ車での採用を追うように、一部上級グレードへの“流れるウインカー”の設定を含む、フルLED式リアコンビネーション ランプの全車採用も今回リファインを受けた最新ゴルフシリーズでの見どころ。

そんなこんなの最新電装関係テクノロジーの採用をもって、フォルクスワーゲンではこの最新モデルを「デジタル化されたゴルフ」と紹介。なるほど、インテリアで感じられる“新しさ”は、エクステリアでのそれよりも確実に大きいものだ。

Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ

マイナーチェンジしたゴルフ7に試乗 (3)

排気量の“ライトサイジング”

とはいえ、そもそもは“走り”の分野に関わる妥協のない開発の姿勢が評価され、常にライバルを凌駕する質の高い運動性能を備えることで、1974年の初代モデル登場以来このクラスの規範としての名声を勝ち取って来たのがゴルフというモデル。

そうしたポイントに磨きをかけるべく今回行われたのが、これまでは1.4リッターだったガソリンエンジンが、同じくターボ付きの直噴メカを採用しながら、1.5リッターへと“排気量アップ”されたことだ。

Volkswagen Golf 1.5TSI BlueMotionTechnology|フォルクスワーゲン ゴルフ 1.5TSI ブルーモーションテクノロジー

Volkswagen Golf 1.5TSI BlueMotionTechnology|フォルクスワーゲン ゴルフ 1.5TSI ブルーモーションテクノロジー

「え? 排気量ダウンではなくてアップ!?」と、このスペック変更を訝しく思う人もいるはず。

が、これこそが「行き過ぎた排気量ダウンは、カタログ上はともかく実燃費には悪影響を与えかねず、モデルごとに最適な排気量を再考する必要がある」という、このところのフォルクスワーゲンが提唱をする“ライトサイジング”のコンセプトに基づいたもの。

ちなみに、1.5リッター程度の場合、3気筒とするのがこのところの最新エンジンのトレンドのようでもあるもの。けれどもフォルクスワーゲンでは、「4気筒であれば2気筒の休止機構が採用できるので、燃費面でも不利はない」としている。

1.4リッターユニットをベースに開発されたそんな新エンジンを、7段DSGと組み合わせたモデルで走りはじめると、率直なところその力感やエンジンのフィーリングに、従来型と大きな違いは感じられない。

最高出力値は10ps上乗せされたものの、最大トルクに変更がないことも、そうした印象に繋がっているはずだ。

Volkswagen Golf 1.5TSI BlueMotionTechnology|フォルクスワーゲン ゴルフ 1.5TSI ブルーモーションテクノロジー

ちなみに、ハッチバックモデルの0-100km/h加速タイムは8.3秒。日常シーンでは十分どころか、「十二分に速い」と実感できるのは、こうしたデータにも裏づけられているわけだ。

Volkswagen Golf|フォルクスワーゲン ゴルフ

マイナーチェンジしたゴルフ7に試乗 (4)

次世代ゴルフへの期待も膨らむ

試乗会の場では、そんな“ベーシックゴルフ”に加え、もはやグレードそのものがブランド化されている、ホットモデルのGTIもテストドライブした。

制御の変更でこちらも従来型より10psの上乗せが謳われているものの、テストルートが公道上のみで、フルパワーを使い切れるシーンがほとんどなかった今回のテストドライブでは、やはりその差を明確に感じるにはいたらなかったもの。

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

が、MT仕様、DSG仕様共に、ベースグレードと変わらぬ実用性をキープしながら、それに劣らぬ快適性を実現させつつ飛び切り速く、かつ痛快なドライビングプレジャーを味わわせてくれるという点は従来から変わりなし。特に、今や加速タイムでも燃費性能でもDSG仕様に後塵を浴びるのは承知のうえで、優れたシフトフィールを味わわせてくれるMT仕様の走りが何とも楽しい! ということを、改めて教えられることとなった。

実は、先に紹介した新しい1.5リッター エンジンには、その“進化型”としてミラーサイクルを採用し、可変ジオメトリー式ターボを組み合わせたさらなる高効率ユニットもスタンバイ中。

GTIや4WD仕様ではいまだ6段タイプに留まるDSGも、この先順次、7段化が進められて行くことも決定済みという。

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI

かくして、装備群のデジタル化が一気に進んだ今回の最新モデルは、いずれ数年後にデビューするであろう“ゴルフ8”への期待を、さらに膨らませる内容の持ち主でもあるもの。

すでに勝ち取った名声にかまけず進化を続けるこうした姿勢こそが、長年続くゴルフ人気の最大の理由であるはずなのだ。

編集部註|フォルクスワーゲン グループ ジャパンによると、この新型ゴルフについては既存の1.4リッターおよび1.2リッターエンジンを先に導入する予定となっており、1.5リッター搭載モデルについては未定とのこと。

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Volkswagen Golf 1.5TSI BlueMotionTechnology
フォルクスワーゲン ゴルフ 1.5TSI ブルーモーションテクノロジー

ボディサイズ|全長 4,258 × 全幅 1,790 × 全高 1,492 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,533-1,549 / 1,504-1,521 mm
最低地上高|142 mm
最小回転半径|5.45 メートル
重量|(6MT)1,294 kg  (7DSG)1,317 kg
エンジン|1,498 cc 直列4気筒ターボ
最高出力| 110 kW(150 ps)/ 5,000-6,000 rpm
最大トルク|250 Nm(25.5 kgm)/ 1,500-3,500 rpm
トランスミッション|6段MT / 7段AT(7DSG)
駆動方式|FF
0-100km/h加速|8.3 秒
最高速度|216 km/h
燃費|(6MT)5.1-5.0 ℓ/100km(19.6-20.0 km/ℓ) (7DSG)5.0-4.9 ℓ/100km(20.0-20.4 km/ℓ)
CO2排出量|(6MT)116-114 g/km  (7DSG)114-112 g/km
トランク容量|380-1,270 リッター
タイヤ 前/後|(試乗車は225/45 R17)

Volkswagen Golf GTI|フォルクスワーゲン ゴルフ GTI
ボディサイズ|全長 4,258-4,351 × 全幅 1,790-1,799 × 全高 1,492 mm
ホイールベース|2,626 mm
トレッド 前/後|1,533-1,549 / 1,504-1,521 mm
最低地上高|133 mm
最小回転半径|5.45 メートル
重量|(6MT)1,364 kg  (6DSG)1,386 kg
エンジン|1,984 cc 直列4気筒ターボ
最高出力| 169 kW(230 ps)/ 4,700-6,200 rpm
最大トルク|350 Nm/ 1,500-4,600 rpm
トランスミッション|6段MT / 6段AT(6DSG)
駆動方式|FF
0-100km/h加速|6.4 秒
最高速度|(6MT)250 km/h  (6DSG)248 km/h
燃費|(6MT)6.4 ℓ/100km(15.6 km/ℓ) (6DSG)6.4-6.3 ℓ/100km(15.6-15.9 km/ℓ)
CO2排出量|(6MT)148 g/km  (6DSG)148-145 g/km
トランク容量|380-1,270 リッター
タイヤ 前/後|(試乗車は225/40 R18)

           
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