自然と芸術の幸福な関係「SALON de CHAUMET」|CHAUMET
Watch & Jewelry
2016年10月11日

自然と芸術の幸福な関係「SALON de CHAUMET」|CHAUMET

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CHAUMET|ショーメ

自然と芸術の幸福な関係「SALON de CHAUMET」

「SALON」とは「客間」を意味するフランス語。17世紀の初め、貴族が芸術家や知識人を屋敷に招いて、知性や創造性を互いに刺激し合う時間を持ったことがはじまりでした。「CHAUMET(ショーメ)」の最初のお客様であったナポレオンの皇后、ジョゼフィーヌも、多くのサロンを開いて新しい文化を生み出していったのです。カリブ海、マリティニーク島生まれだった彼女は、洗練された明るいクリエイティビティを持った女性でした。そんなジョゼフィーヌの意思を受け継ぎ、『SALON de CHAUMET』が東京で開かれます。第2回目のテーマは「自然主義」。独自の分野でそれぞれに輝きを放つクリエーター達が集まりました。

Photographs by JamandfixText by OGATA Mariko

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二俣公一|FUTATSUMATA Koichi
空間・プロダクトデザイナー。1975年鹿児島生まれ。「CASE-REAL」と「KOICHI FUTATSUMATA STUDIO」、両主宰。福岡と東京を拠点に国内外でインテリア、建築、家具、プロダクトと多岐にわたるデザインを手がける。JCDデザインアワード/金賞(2016)、Domusweb/Best of #Japan(2016)、Wallpaperデザインアワード/Best Domestic Design(2014)など受賞多数。作品の一部はサンフランシスコ近代美術館のパーマネントコレクションにもなっている。http://www.casereal.com

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伊東友香|ITOH Yuka
作家・作詞家。1976年生まれ。朗読と文筆活動を軸に「ことばの力で、こころの振れ幅を表現する」ことに取り組み続けている。テレビ番組ホスト、ラジオ番組パーソナリティ、音楽アーティストへの詞・詩の提供、ライブなどで活躍。http://yukaitoh.net/

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岡崎裕子|OKAZAKI Yuko
陶芸家。1976年 東京都生まれ。1997年株式会社イッセイ ミヤケにて広報部に勤務後、茨城県笠間市の陶芸家・森田榮一氏に弟子入り。4年半の修行の後、笠間市窯業指導所釉薬科/石膏科修了。2007年神奈川県横須賀市にて独立。2009年の初個展以降各地で個展を行っている。小山登美夫ギャラリー所属。http://yukookazaki.com/

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土屋秋恆|TSUCHIYA Shukou
水墨画家。1992年、斉藤南北氏、寺山南楊氏の両氏に水墨画を師事。1999年、日本書画展 褒章受賞。CMやアーティストのMV、その他海外で個展開催、エキシビションにも招待されるなど、活躍の場を広げている。http://www.bokusenkai.com/

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ムラカミカイエ|MURAKAMI Kaie
クリエイティブディレクター。1974年生まれ。三宅デザイン事務所にて、衣服、広告デザインほか、様々なブランド施策を手がける。2003年 ブランディングエージェンシー「SIMONE INC.」を設立。資生堂、三越伊勢丹などのナショナルブランドをはじめ、国内外多数の企業へ向け、「テクノロジー」「デザイン」「マーケティング」3軸を主にした実践的なクリエイティブ・コンサルティング、ビジネス・デヴェロップメントを行っている。www.ilovesimone.com

――野にあるものを、そのまま写しとる。CHAUMETのデザイナー達は、身近な草花や昆虫などをモチーフとしてジュエリーを生み出してきました。「自然の姿をそのままに」といっても、どのように表現するかはジュエラーそれぞれの考え方や、技術によって個性があります。

ムラカミカイエ(以下、ムラカミ) ジョゼフィーヌ自身が自然に囲まれたところで奔放に育って、パリで暮らすようになってからも、望郷感というか、故郷に対しての愛情がとても強くて、それを思い出すために自然をジュエリーのモチーフとして使っていたんでしょうね。だからCHAUMETの麦は風に揺れている。ひとりの女性のエモーショナルな感情と、サヴォワールフェールを持った人との出会いとも言えますね。

伊東友香(以下、伊東) 私も人間や自然など、生き物を題材にしている作品が多く、自然からの贈り物を言葉にしている気がします。

岡崎裕子(以下、岡崎) 麦やアジサイ、水の流れ、蜂や蜘蛛など「日常にある自然」がCHAUMETの生み出す自然主義なのだと感じます。漆の人間国宝の師匠から、「新しい作品を生み出そうと思ったら、他人の器は見るな、自然の中にしか答えはないから」と言われたことがあります。私自身も自分が日々目にしている自然からしか、やはりクリエイションは生まれないと感じています。

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二俣公一(以下、二俣) 機能や意義をカタチにするデザインでは、自然そのままの直接的な写実表現は、逆に避けることが多いのです。植物の忠実な再現から生まれるジュエリーの技術力の高さ、精巧な美しさには、新鮮な驚きを覚えますね。

――ジュエリーで自然主義が花開くとき、背景には社会不安の傾向があります。たとえば戦争が終わったあとや、芸術様式、価値観が大きく変わった時など。人間は本質的な癒しをそこに感じるのかも知れません。

土屋秋恆(以下、土屋) 時の権力者が求めた質の高い「美」をアトリエの職人達が具現化し、それを連綿と継承する。そのメゾンの宿命のなかには、個人的な郷愁の想いや自然への憧憬が多分に添加されていること。自然主義の背景を想像することは、時代は違えど同じものを創る立場の人間として非常に興味深いです。

伊東 自然は人間が決してコントロールできない、気高く獰猛なものです。共存には思いやりが必要で、それは人間同士でも同じです。好きな人と肌が触れ合い幸せを感じるように、自然を感じ大事にして、時に傷つけられながら、それでも乗り越え癒される。自然と一緒に生きていくしか人々に道はありません。

二俣 いつの時代にも自然主義というのは、人へ安らぎや美しさの感動を与えてくれるもの。取り巻く自然を間接的に取り入れたりしながら、基本的には自然といい意味で対峙する空間やモノを作っていきたいと思っています。これも僕たちのベースが自然の中に生きている故の在り方とも思います。

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――自然とクリエイティビティの関係は、今後どのような兆しがあると感じていますか?

岡崎 私が作っているのは、今は昆虫とか花が中心なのですが、私の器って都心のほうの人が買ってくれるんですね。ナチュラルなものを取り入れたいという都心の人なので、これからもっと自然を取り入れていくことを考えていきたいなと。普段触れ合えない中で、自然を模した作品を手にすることが、自然と触れ合い心を満たすひとつの接点になっているのではないでしょうか。

ムラカミ 僕はむしろ自分の住環境に自然をどう取り込むかという様式から、住まいを2つ持ち、移動するというやり方が定着するとおもしろいと思いますね。自然というのは無理やり手にするものではなく、そのままにしておいたほうがいいんじゃないかな、と。移動するためのコスト、トラフィックコストが下がることがポイントですが。人間って気まぐれなので、白と黒とはっきりした世界を行ったりきたりしながら、自分の感情が揺れ動かされることで、クリエイティビティって生まれてくることもあるので。

土屋 100年単位で遡ると、人間が「心地いい」と感じる環境は物質的、意識的に変わり続けてきたように思います。科学や医療の研究が進み、人間を取り巻く環境が大きく変化すればするほど、先人達が自然の中でどのように過ごしていたのか、そのノウハウや意識の高さに再び光が当たる。今後世界がさらに大きく変化したとしても、過去の自然主義によって生み出された多くの創造物は、自然と人間との精神的調和を意味する重要なアイコンになっていくのではないかと思います。

――創業以来、自然のモチーフとともに歩んできたショーメ。自然の壮大さと向き合いながら、デフォルメではなく、ありのままを優美に象る哲学と技術が連綿と受け継がれています。自然はそのままが完璧であり、そこに人間の思想を塗して誇張する必要はないからです。そんな自然への敬愛がショーメの美意識の礎となり、受け継がれた職人の技術によって見事なまでにジュエリーとして作り上げられ、身につける人間の素顔を自然界に存在する繊細な輝きや美しさとともに表現し続けるショーメの姿勢こそが、時代を超えて人々を魅了し続けるのです。

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尾形真理子|OGATA Mariko
1978年東京都生まれ。2001年、博報堂に入社し、コピーライターとして活躍。LUMINE、資生堂、東京海上日動あんしん生命、キリンビール、日産自動車などの広告を手がける。朝日広告賞グランプリ他受賞多数。「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」(幻冬舎文庫)が初めての小説となる。雑誌「広告」の編集長も務める。

問い合わせ先

ショーメ

Tel.03-5635-7057

http://www.chaumet.jp

http://www.facebook.com/chaumet.japan

https://www.instagram.com/chaumetofficial

           
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