熟成を重ねた粋な男のアクセサリー|M・A・R・S
FASHION / MEN
2017年3月14日

熟成を重ねた粋な男のアクセサリー|M・A・R・S

M・A・R・S|マーズ

熟成を重ねた粋な男のアクセサリー

1990年代後半より盛り上がり、男性がジュエリーを身に着けることが一般化するまでに至った日本のシルバーアクセブーム。当時の主流はバイカー好みのデザインだったが、「M・A・R・S(マーズ)」はすでに曲線を巧みに用いたアイテムや異素材を組み合わせたものなど、洗練されたデザインで時代を先駆けていた。その設立は1990年と古く、今年でなんと27年目を迎える。ここでは、いつの時代においても色気のある男らしさを漂わせながら、時代のエッジを捉え、それでいて主張し過ぎずに馴染んでいくマーズ製品の魅力を紐解いていく。

Photographs by TANAKA TsutomuStill Photographs by JamandfixText by TOMIYAMA Eizaburo

竹工芸から着想した、COMPOSIT SERIES(コンポジットシリーズ)

「M・A・R・S(マーズ)」を代表するデザインといえば、真っ先に「COMPOSIT SERIES(コンポジットシリーズ)」 が挙げられる。日本古来の伝統技法である竹の編み込みに着目し、それを金属で表現した驚きのデザイン。そこに、好きなチャームを選んで付け加えることができるのも魅力だ。原型においては、実際に太さの異なる3本のシルバーを独自技法で編み込んで作りあげている。アイテム単体で見ると強い存在感があるが、ひとたび身に着けてみると緻密で繊細、そして上品な美しさが際立つ。なんとも不思議な魅力を放つシリーズなのだ。

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デザイナー 米山庸二氏

「僕は欲しがりな一面があって。硬くて柔らかくて、しなやかで重厚感があるとか、相反するすべての要素を詰め込みたいと思ったんです。そんな時にふと思い浮かんだのが竹工芸。よく考えたら昔から竹細工が好きで、心の引き出しにはずっとあったものなんです」とデザイナーの米山庸二氏。

竹を編むようにシルバーを編めないか? と考え始めたのは2005年。そこから完成までには実に4年の月日が費やされることになる。最終的に頼りにしたのは原型師であるPLUS4の朝妻豊彦氏だった。マーズは、彼のその高い技術力をずっと買っていた。

「最初はできないと思いました。シルバーが硬すぎても柔らかすぎても編めないし、薄く作ることはできてもそれでは強度が出なかったり。素材の純度はもちろん、編み方もいろいろと試しました。また、当初は2本で編んでいたんですけど、それだと密度がうまく出なくてスカスカな感じになってしまったり。試行錯誤の末にある方法にたどり着いたんです」(原型師・朝妻氏)

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コンポジットシリーズがどう編まれているのかは企業秘密。現在は一度編み込んだものを型取りして製品化しているが、今後はオーダーメイドによる1点ものの本編みジュエリーも販売する予定だとか。それが実現すると、3本中1本はイエローゴールドで作るなども可能になる。また、同時に新しいパターンの編み方も研究中だ。

マーズには◯◯風のデザインはひとつもない

「米山さんとは15年くらいの付き合いですけど、絶対に妥協しない方ですね。コンポジットシリーズも編みをきれいに見せるだけでなく、丸みや膨らみに関しても徹底的にこだわっている。その他のシリーズでも、研究しないと完成しないような無理難題を言ってくるんです(笑)。だからこそ面白いんですけどね。世の中には◯◯風っていうものがたくさんありますけど、マーズには◯◯風のデザインはひとつもない。すべてがオリジナル」(原型師・朝妻氏)

もうひとりマーズの米山氏が信頼を置く職人がいる。磨きや仕上げの担当をするGold Worksの金澤 臣氏だ。彼もまた米山氏を手強い相手だと語る。

「当然なことですけど、カッチリさせる必要がある箇所はカッチリと、丸みが必要な箇所は丸く。ダラッとした部分があることを嫌う方ですね、だから手抜きができない(笑)。そのためには下ごしらえが大事なんです。アクセサリーの最終仕上げはバフがけなのですが、そこは最後にちょっとやるだけで終わるようにしています。つまり、まずは粗いヤスリ、それから細かいヤスリとしっかり順を追って、最後にサッとバフをかけて終わる。そうすることでバランスのとれたフォルムが完成するんです。僕が思うマーズらしさは、そういう生真面目なまでのこだわりの強さ、それと男くささにあると思う」(仕上げ担当・金澤氏)

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見た目はもちろん、身に着けたときのフィット感にまで強いこだわりを貫くマーズ。米山氏の言葉を借りれば、全体のバランスがとれた”しっとり感”を一番大事にしている。その背景には、原型制作から、仕上げ、磨きに至るまで、ゴム型製作以外のすべての工程をひとりでこなしてきた経験がある。だからこそ、職人たちにも細かな要求ができるのだ。一方で、2010年頃から自らはデザインに徹する方向にシフトしていった。

「きっかけは、レディスを始めようと思ったのがひとつ。でも、いわゆるシルバーアクセの世界って、自分で考えて、自分で彫って、ひとりで完成させていく職人のイメージが強いじゃないですか。だから葛藤はあったんです。でも、よりよい完成品を作ることを念頭に置いたとき、このパートは自分でやらないほうがいいかもしれない、このパーツはCADを使って機械でやったほうがいいかもしれないなどの思いが生まれて、それらを試したくなったんです。すると、デザインに対しての突き詰め方が自然と変化して、これまで以上に妥協点が減っていったんです」(デザイナー・米山氏)

ハットやメガネのように、アクセサリーでファッションを楽しむ

人に託すことで選択肢が広がり、自分の作りたいものによりピュアに進んでいけるようになったマーズ。同時に、プロデューサー的な感覚でブランドを見渡せるようにもなった。

「デザインをするにあたって、大人っぽくミニマルでモードな雰囲気な人に着けて欲しいとか、遊んでいる風だけど奇抜じゃなくシンプルな感じの人に着けて欲しいとかはあります。でも、一番大事にしているのはオリジナリティとクオリティをいかに高められるかということ。これからも、奇抜過ぎず、本当の意味でのかっこいい個性を表現していけたらと思っています」(デザイナー・米山氏)

コンポジットシリーズの他にも、数字の8やインフィニティー(無限)をモチーフとした曲線が美しいユイットシリーズ。また、生物に対するリスペクトから生まれた、昆虫や動物をモチーフにしたシリーズも人気のマーズ。ブランド設立から常に究極を追い求め、じっくりと熟成されていったデザインは、歳を重ねた大人の男性にこそ似合うものばかり。ハットやメガネなどでファッションを遊ぶように、アクセサリーでアクセントを着けてみる。そんな気分がいま再び新鮮に感じる。

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