メルセデス・ベンツ G550に試乗|Mercedes-Benz
CAR / IMPRESSION
2016年7月29日

メルセデス・ベンツ G550に試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

メルセデス・ベンツ G550に試乗

世界中のセレブリティたちから愛される理由

1979年のデビュー以来、ほぼ変わらぬ姿とメカニズムを踏襲しながら現役であり続けているGクラス。同モデルに、初にして唯一となる電子制御式ダンパーが与えられているのが「G550」である。その進化を確かめるべく、大谷達也氏が試乗した。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

最近のSUVとはまったく別の発想で作られている

「メルセデスGクラスはNATO軍のために開発された」みたいな話をたまに耳にするけれど、もともとは一般ユーザー用として企画されたものが、その抜群のポテンシャルを見込まれて各国の軍隊に次々と採用されていったというほうが真相に近いようだ。

もっとも、あのいかにも頑丈そうなフレームや足回り、そして無骨ながらも圧倒的な存在感を放つ佇まいを見れば、軍事用から民生用に転用されたと言いたくなる気持ちも分からなくはない。なにしろ、ボディの下を前後に走るフレームはクルマの部品というよりもまるでビルの骨格をなす鉄骨のようだし、前後の車軸に取り付けられたデファレンシャルギアはたわわに実った大玉スイカ並みの大きさ。この車軸を位置決めするトレーリングアームとリーディングアームにしたって丸太を思わせるほどの太さがある。それらを見れば、オンロードユースを重視した最近のSUVとはまったく別の発想で作られていることは明らかである。

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

こうした頑丈な作りは本格的なオフロード走行、そしてそれこそ軍事目的で使うなら心強いことこのうえないが、街中でのちょっとした買い物のために走らせるとなるとデメリットも感じられる。堅牢なサスペンションはバネ下重量の増加を招いてばたついた乗り心地の原因となりかねないし、起伏の激しいオフロードでは強力な武器となるリジッドアクスルは路面からの入力を分散させるのが苦手だからオンロードでのハンドリングと乗り心地を高次元でバランスさせるのは難しい。つまり、Gクラスのタフな作りは、それ自身が憧れの対象になり得ると同時に、日常的なシーンでの乗り心地についてはマイナスに作用するという、いわば両刃の剣でもあるのだ。

そこでメルセデスは、オンロード性能をより重視する層に向けて「GL」を作り上げたわけだが、いっぽうでGクラスはその基本を守りつつ、ハンドリングと乗り心地のバランスを改善するという難しいテーマにも取り組んできた。そうした努力の最新の成果が、ここで紹介する「G550」なのである。

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

メルセデス・ベンツ G550に試乗

世界中のセレブリティたちから愛される理由 (2)

これまでのGクラスでは体験したことがない乗り心地

そのプレゼンテーションでは、足回りにGクラス初にして唯一となる電子制御式ダンパーが採用されたとの説明があったが、実際に試乗してみると、とてもダンパーの改良だけで実現できるとは思えないほど大きな進歩が実感できた。

先ほど、リジッドアクスルは路面からの衝撃をその入力の方向によって分散させることが難しいと述べた。実は、最新のサスペンションは複雑なリンク構造を用いることで、ハンドリングの向上に効果がある入力の方向と乗り心地の改善に効果がある入力の方向とに力を分散させたうえで、前者には硬めのゴムブッシュを、後者には柔らかめのゴムブッシュを用いることでハンドリングと乗り心地の両立を図っている。しかし、リジッドアクスルでは入力をこのように都合よく分散することが難しいので、乗り心地をとるか、ハンドリングをとるかの二者択一的なセッティングになってしまうのだ。

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

ここで、最近のGクラスは快適性を確保するためにやや柔らかめのブッシュを使う傾向があり、このため足回りとボディが別々の動きをしているように感じられなくもなかったのだが、新型はこの点がすっきりと生まれ変わり、ステアリングを操作してからクルマが実際に向きを変え始めるまでに要する時間がぐっと縮まった。つまり、ハンドリングのレスポンスが大きく改善されたのである。

では、乗り心地が悪くなったのかといえば、そんなこともない。路面からのショックを優しく受け止めつつも、そうした振動がゴムブッシュなどにブルブルと残ることもなく、すっと減衰していく。その乗り味は、これまでのGクラスでは体験したことがないくらい心地よいものだった。

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メルセデス・ベンツ G550に試乗

世界中のセレブリティたちから愛される理由 (3)

従来からのGクラスらしさも存分に残されている

だからといってGLほど洗練されているかといえば、さすがにそこまでのことはない。けれども、あれだけ頑丈そうな足回りを備えていながら、ここまでハンドリングと乗り心地のバランスを高めることができたのは、1979年のデビュー以来、36年間にわたって弛まぬ改良を続けてきた努力の成果という以外にないだろう。

G550で変わったのは足回りだけではない。AMG GTで登場した最新のV8 4.0リッター ターボエンジンを搭載することで、従来型を34ps/80Nm上回るパフォーマンスを獲得するとともに、燃費性能も改善をみたというのだ。このエンジン、3,000rpmくらいまではV8らしい「プロロロロ……」というエグゾーストノイズを聞かせるのだが、そこから先では現代的なハイパフォーマンスユニットらしいスムーズで澄んだ快音を響かせる。また、エンジン回転数の上昇に伴うパワーの高まりもリニアで、ドライバビリティは思いのほか良好だった。

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

Mercedes-Benz G550|メルセデス・ベンツ G550

そのいっぽうで従来からのGクラスらしさも存分に残されている。頑強そうな足回りが変わっていないことはすでに何度も述べたが、それ以外にも、着座位置が高く周囲を見わたすのが容易なドライビングポジション、平面ガラスを垂直近くまで直立させたフロントウィンドウがもたらす視界のよさ、最近のモデルでは見かけることがなくなった奥行きの浅いダッシュボードまわり、そして細かいところではドアをロックしたときに響く「パシャッ!」という音色も昔のまま。いずれも、長年のGクラス ファンには忘れられないポイントといえるだろう。

本物のよさを残しつつ、現代的な価値観も取り込もうとするGクラス。世界中のセレブリティたちから愛される理由も、このあたりにあるのかもしれない。

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Mercedes-Benz G 550|メルセデス・ベンツ G 550
ボディサイズ|全長 4,575 × 全幅 1,860 × 全高1,970 mm
ホイールベース|2,850 mm
トレッド 前/後|1,540 / 1,540 mm
重量|2,560 kg
最低地上高|235 mm
エンジン|3,982 cc V型8気筒 DOHC ツインターボ
最高出力| 310 kW(421 ps)/ 5,250〜5,500 rpm
最大トルク|610 Nm(62.2 kgm)/ 2,000-4,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|275/55R19 / 275/55R19
トランク容量|480-2,250 リットル
価格|1,470万円

問い合わせ先

メルセデス・コール

0120-190-610

           
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