清水久美子、ジャガーブランドいっき乗り!|Jaguar
CAR / IMPRESSION
2014年12月10日

清水久美子、ジャガーブランドいっき乗り!|Jaguar

Jaguar|ジャガー

清水久美子のジャガー体験

ジャガーブランドいっき乗り!

宮崎でおこなわれたジャガーのフルラインナップ試乗会。普段は日産「GT-R」を乗りこなす清水久美子が、ついにジャガーというブランドを初体験した。歴史も思想も環境も、日本とはまったくことなるところからやってきたジャガーというブランドのクルマを、彼女はどう感じたか?

Text by SHIMIZU Kumiko
Photographs by ARAKAWA Masayuki

ジャガーというブランドの印象

「美しく速いクルマ」として前身の会社を含めると77年以上の歴史をもつジャガー。ポルシェ、フェラーリと並んでル・マンなどで活躍してきたこともある英国スポーツカー メーカーのひとつでもある。そういう前提情報があっても、わたしにとってジャガーはあまりスポーツカーというイメージがなくて……どちらかというとトラディショナルな印象をもつ高級車。

「あたらしい経験をしてみてください」

ブランドの歴史、モデルラインナップの説明、デザインのアイデンティティなど、試乗前にいろいろと説明をうけ、聞きなれない言葉には戸惑いも覚えていたわたしに、そうストレートに言ってくださった、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのラッセル・アンダーソン社長。あたらしい経験とはなんなのか。その意味を探るべく今回はジャガーの世界に飛び込んできました。

今回試乗会がおこなわれたのは宮崎県にあるシェラトングランデオーシャンリゾート。2日にわたる取材となりましたが、その豪華なおもてなしには感激。スイートルームから見渡せるのは一面広がる緑と海の共演。「宮崎ってイイところ!」と感想はさておき。



のちに試乗していて気づいたのですが、こういった雰囲気づくりもジャガーを“経験”するには重要なことなのかも。ラグジュアリーなホテルに宿泊してゴルフやテニスといったスポーツを堪能し、移動すらスポーティなクルマで愉しむ……というイギリスのエグゼクティブな休日を体験することで、よりジャガーというブランドのポジションを感じてほしいという主催者側の演出を感じました。

初日はプレゼンテーションでジャガーというブランドのおさらいをしたのち、ディナー。そしてラッセル社長もまじえたセカンドパーティで歓談して終了。冒頭の「あたらしい経験をしてみてください」という言葉は、このときにいただいたものです。そして2日目、いよいよ試乗です。今回、わたしが乗ることにしたのは「XJ」、「XKR-S」、「XKポートフォリオ コンバーチブル」、「XFR」、「XF 3.0プレミアムラグジュアリー」の5台。

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清水久美子のジャガー体験

ジャガーブランドいっき乗り!(2)

大雨のなかXJからスタート

まず乗ったのはXJ。先代のXJにたいするわたしのイメージは、一言でいえばショーファードリブン。後席に乗ったエライひとが運転手さんに命令するというイメージです。じつはドライバーズカーに位置するXJですが、この重厚な外観からついわたしの勝手な想像が先走ってしまいます(汗)。

ところが、モデルチェンジによって、これまでのクラシカルな風貌とはうらはらに、まったくあたらしいデザインへ。この変貌には驚きました! ドライバーズカーというイメージを前面に押し出し、4ドアサルーンでありながらクーペのようなこのフォルム。お恥ずかしながら、バッジを見るまでは、他社のクルマかとおもっていました。

さっそく乗り込むと、独特のセンスが待っていました。まず目にはいるのがダッシュボードから左右ドアトリムまで、全体を囲むようなウッドパネル。なんだか豪華なクルーザーみたい! とおもったら、実際にXJは内外装ともにクルーザー(ヨット)をイメージしたデザインを、伝統的に採用しているということで、納得。

触れてみると上質な素材のレザーと、金属とのコンビネーションや、細かなパイピングも、とても気に入りました。

カタログを見てみると、インテリアのカラーや素材、パイピングのバリエーションは豊富で、コーディネートには頭を悩ませそう。

運転席に座り、電源をオンにすると、センターコンソールにATシフトダイヤル「ジャガー ドライブセレクター」が飛び出し、インパネに「3連液晶メーター」が浮かびあがります。液晶に映像として映し出されるこのメーター、ブルーが全体の引き締め役になっていますね。ステアリングに埋め込まれたジャガーのロゴデザインも新調されています。

では、いざ発進。残念ながらこの日は大雨だったため、V8スーパーチャージャーエンジンの持ち味をめいっぱいに味わうことはできなかったものの、車重は1,950kgのXJは、まさにクルーザーのように重厚感のある安定した走り。



とはいえ、大トルクのおかげか、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」、アウディ「A8」などの、そうそうたるフラッグシップカーをライバル車として、このXJも5メートルオーバーの車体であるのにかかわらず、いざとなれば、かなりの俊足である事をにおわせています。

足まわりは柔らかめでぐんわりと進みます。ゆったりとしていて、まさに「大海原を渡る船」のようですね。

おもかじいっぱ~い(笑) 陸上を進む豪華クルーザーです。

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清水久美子のジャガー体験

ジャガーブランドいっき乗り!(3)

渾身のGTスポーツカー「XKR-S」 550ps? どんとこい!

パッと見、ド派手なカラー! 目の覚めるようなマットブルー。あいにくの雨のなかでもよく目立ちます。高速走行時の安定性を計算にいれて設計された、カーボン製のリアスポイラーとディフューザーがカッコイイ!

XKR-Sといえばジャガー渾身のGTスポーツカー。「GT-R」乗りのわたしにとっては“GTスポーツカー”と聞いただけで前日から興味シンシン。スーパーチャージド5.0リッターV8エンジンに550ps? どんと来い!(笑)と意気込んで乗り込むも、さらに豪雨に見舞われ、その実力の半分も出せない状態。本当に残念。



インテリアはレーシーな雰囲気とラグジュアリーがうまく融合しています。このコンビネーション、スポーツカーだからといって「スポ根一直線!」とはならないバランス感覚がうれしい。16ウェイの調整が可能な電動パフォーマンスシートが体をしっかりホールド。一体になっているヘッドレストとあいまって、気分はレーシングマシンのドライバー。

乗り味は、さすがのジャガーも意外に硬い? 印象も。しかしスピードがあがっていくにつれ、そんな印象がいつのまにか消えて、しなやかさを取り戻す感じ。なんとも不思議な感覚。そして、試乗はパワーをもてあますうちに終了。

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ジャガーブランドいっき乗り!(4)

清水久美子的フェイバリット XK Portfolio Convertible

XKポートフォリオ コンバーチブルはジャガーのラインナップで唯一のオープンタイプであり、『美しく、速いクルマ』のコンセプトがもっとも出ている車種ではないでしょうか。XKのもつなめらかなフォルムと個性的なデザインで、オープントップのドライビングが楽しめるなんて、存在がすでに爽快そのもの。

こちらの試乗時には運よく雨が上がり、今のうちにと急いでライドオン。ルーフを全開にして走り出せば、しなやかな乗り味と心地よい低めのマフラーサウンドをBGMに流れる宮崎の林の風景が絶品。

走っているあいだに雨が降ってきたので、クルマを止めてルーフを閉じたのですが、防水性ルーフは風の音や雨音、ロードノイズを遮断してくれて、閉じた状態も快適。オープン/クローズに必要な時間も18秒と速いので、天気を見計らってなんども開けたり閉めたり。

デートや街乗り、ちょっと海まで、みたいな移動を楽しく演出してくれる、それがこのXKコンバーチブルなのでは!? わたしの今回のフェイバリット!

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ジャガーブランドいっき乗り!(5)

XFR / XF 3.0 Premium Luxury

ここまでイッキに3台を乗り比べてきて、最後にきたのが2台のXF。ラインナップ中もっとも末っ子といっても、そこはジャガー、高級路線になっています。

エクステリアは、フェイスがXJと似ている。正直なところ、正面から見ると、XJとXFのちがいがわかりにくいのですが……横からみるとクーペのようなルーフのアーチ型がXJよりもスタイリッシュで、4ドアクーペともよべそうな車体のバランスが綺麗なんです。重量配分は前51パーセント、後49パーセントという理想的な設計がなされているそう。

まず乗ったのはXF 3.0 Premium Luxury。4ドアセダンとして考えると、若干足まわりが固めに感じられますが、搭載する3リッターのV6エンジンは、最高出力243psと程よいスペックで、全長4,970×全幅1,875×全高1,460mmのボディサイズも大き過ぎない。街乗りや普段使いを考える場合は、もっとも適したジャガーではないでしょうか。



でも個人的には、5.0リッターV8スーパーチャージャーエンジンを搭載したXFRが好み。510馬力を誇るおなじスペックのXJのスーパースポーツとくらべると、車重はおなじ1,960kgながらホイールベースは160mm短く、小回りもきいてスポーティさが増してます。

値段は1,200万円と「XF 3.0 Premium Luxury」と比較に比べてしまうと倍近い額ですが、メルセデス・ベンツ「E63 AMG」やBMW「M5」の購入を検討するなら、個性的なこちらも、おすすめしたいところです。

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清水久美子のジャガー体験

ジャガーブランドいっき乗り!(6)

GT-Rと交換ね?

冒頭に引用した、ラッセル社長の言葉のとおり、どのメーカーにも似つかない独特な存在感を“経験”しました。英国らしいカラーリングや乗り心地のフィーリングも、わたしにとってすべてあたらしいテイストでした。

個人的なことをいえば、クルマはアクセサリーのように、「自分を主張してくれるもの」。バッグや時計を選ぶ時といっしょで、日常的な利便性だけでなく、わたしはクルマに非日常的な個性を求めます。それが、わたしにとっては、あるクルマをほかのクルマたちから区別し、愛する理由になるからです。

ジャガーのラインナップは、それぞれが個性的。ドライバーズカーとしての性能は十二分。それにくわえて、どのジャガーに乗り込んでも高級ブランドに囲まれたような雰囲気や香り、クルマが愛おしくなる、非日常性をふんだんに備えています。

ジャガーはくやしいくらい魅力的!

あ、ラッセル社長とかわした「ジャガーを『経験』できたらジャガーとGT-Rを交換ね!」という約束、どうしよう……

           
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