新型メルセデス・ベンツ Eクラスに試乗|Mercedes-Benz
CAR / IMPRESSION
2016年7月12日

新型メルセデス・ベンツ Eクラスに試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz E Class|メルセデス・ベンツ Eクラス

新型メルセデス・ベンツ Eクラスに試乗

乗用車の新たなるスタンダード

今年1月に開催された北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)でお披露目された新型メルセデス・ベンツ Eクラス。7年ぶりのフルモデルチェンジで大きく進化した同モデルの試乗記をおとどけする。

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

乗用車のスタンダード

1953年のメルセデス・ベンツ180を祖先とする「Eクラス」の歴史は、常に最先端の技術の投入により乗用車のスタンダードを更新することによって紡がれてきた。しかも、それは単に採用するというだけでなく、必ず普及へと繋げられてきたのである。

例えば近年で言えば、W124型(1985-1995年)のABS、そしてW210型(1995-2002年)のESPなどは、初出こそ「Sクラス」に於いてであったが、Eクラスへの採用によって、その後ポピュラーな装備として定着していくことになったと言っていい。そうやってEクラスは、まさにその時代ごとに、乗用車のあるべき姿を提示し続けてきたのだ。

新型Eクラスも、その例に漏れない。率直に言うならば、ここ数世代のなかでも、もっとも革新的なモデルに仕上がっていると評することすらできるだろう。

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Sクラス、Cクラスと一瞬見紛うエクステリアには新鮮味はないし、インストルメントパネル内に高精細液晶モニターを2基並べたインテリアもSクラスと雰囲気は近い。しかしながら、ハイテク化はさらに進められ、操作系も大幅に見直されている。

特に目をひくのはステアリングホイールのスポーク上に設けられたタッチセンサーを使ったスイッチ。左側画面は左手の、右側画面は右手のそれぞれ親指のスワイプ動作によって、両手を離すことなく豊富な機能を瞬時に呼び出すことができるのだ。スイッチの数は少ないとは言えないが、実際にはこの親指の動きと音声入力の組み合わせで、大抵の操作はこなせてしまうのである。

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新型メルセデス・ベンツ Eクラスに試乗

乗用車の新たなるスタンダード (2)

現時点で考えられる運転支援機能、衝突回避機能のすべてを採用

さらに目玉といえるのが、ステアリングコラム左側のディストロニック プラスのレバーを2度手前に引くことで起動する「ドライブパイロット」。すでに半自動運転を実現したと謳っているメルセデス・ベンツの次のステップだ。

アダプティブクルーズコントロールは設定された速度を維持し、前走車がいれば自動的に車間を調整する。また、車線に沿っての操舵も自動で行なわれ、車線が見えないところでも前走車に追従して行く。しかも渋滞などで停車した場合の再発進も、30秒以内なら何の操作も不要。つまり、当然ながら法規上、運転はあくまでドライバーの管理下にあるものの、機能的にはクルマ任せでも高速道路はほぼスムーズに走れてしまうのである。

それだけじゃない。ドライブパイロットは初めて、自動車線変更の機能まで備える。ウインカーレバーを行きたい方向に2秒以上押し続けると、車両の側で後続車両との間隔などを検知し、可能となれば自動的に隣の車線へと移っていくのだ。これも高精度なミリ波レーダーを使うおかげで、動作は至極滑らか。最初はおっかなびっくりでも、すぐに慣れて、どんどん使うようになってしまった。

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メルセデス・ベンツが切り拓いてきた先進安全機能も、さらに充実度を高めている。衝突の可能性を検知すると警告し、必要ならば自動でブレーキをかけるアクティブブレーキアシストは、100km/hまでの衝突回避が可能に。渋滞末尾などの回避スペースが少ない場面ではより早期に制動を開始したり、交差点などで急に前を横切る車両や歩行者を検知する機能も追加された。

さらに、操舵による回避操作のさいに、ステアリングトルクを付け足して操作を補助する機能や、ドライバーが急病などにより運転操作ができなくなったとき、自動的に車両を停止させるアクティブエマージェンシーストップアシストも搭載されている。狭い駐車場で重宝する、車両外部からスマートフォンを使って車両を駐車させる機能も選択可能。要するに、現時点で考えられる運転支援機能、衝突回避機能のすべてが採用されていると言っても、決して過言ではないのである。

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乗用車の新たなるスタンダード (3)

Sクラス以上の快適性

では肝心の走りっぷりはと言えば、こちらも格段の進化を感じさせる出来栄えとなっている。アルミニウムと高張力鋼板の使用割合を大幅に増やした軽量、高剛性のボディと、前2室、後3室の複数のチャンバーを用いることで入力の大小を問わずしなやかな乗り心地を実現したエアサスペンション「Air Body Control」の組み合わせは、まさに極上の乗り味を提供。フットワークの一体感も正確性も文句なしで、ファンとまでは言わないものの、ストレスなく気持ちの良い走りを楽しめる。特に快適性については、現時点ではSクラス以上と評すこともできそうな仕上がりだ。

ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドが揃うパワーユニットのなかでは、特にE220dが搭載する新開発の2リッター ディーゼルエンジンに注目したい。アルミブロック化で軽量化を図り、熱膨張の少ないスチールピストンや、エンジンのすぐ脇にモジュールとしてまとめられた排ガス後処理システムなどの採用により、燃費向上だけでなくエミッション性能も強化したこのエンジンは、スペックも最高出力195ps、最大トルク400Nmと十分以上。きっと主力ユニットとして受け入れられるに違いない。

Mercedes-Benz E Class|メルセデス・ベンツ Eクラス

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このように新型Eクラスは、走り、快適性、先進安全装備に自動運転システムと、全身どこを見ても新機軸が盛り込まれ、乗用車の新たなスタンダードを提示する意欲作として仕上がっている。冒頭に記したように、Eクラスは常にそういう存在であったわけだが、しかしこの通算10世代目となる新型の跳躍ぶりは、これまでのどの世代と較べても、ひときわ大きいと断言できる。

それだけに返す返すも惜しいのが、Sクラスや特にCクラスと一見、いやしばらく目を凝らしてもなお、見間違えてしまうエクステリアデザインである。例えばW124型とW201型190Eだって似ていたけれど、少なくともリアに回ればすぐにどちらだか判別できた。ユーザーの満足度を考えたら、もう少し差別化されていてよかったのではないだろうか。せめて日本仕様では、スリーポインテッドスターがフード上に屹立したクラシックグリルの選択肢が多いことを願いたい。

その日本上陸は、6月頃の予定。まずはガソリンエンジン車から導入され、年内に続々バリエーションを増やしていくかたちとなりそうである。

問い合わせ先

メルセデスコール

0120-190-610

http://www.mercedes-benz.co.jp/

           
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