アウディQ7のスポーティモデルSQ7が登場|Audi
CAR / NEWS
2016年3月16日

アウディQ7のスポーティモデルSQ7が登場|Audi

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

アウディSUVのトップモデルはディーゼルのSQ7

いよいよ3月下旬から、日本でも「Qシリーズ」のトップモデルとして2代目となる新型「Q7」がデリバリーを開始するが、本国ではその「Q7」のフラッグシップモデルとなる「SQ7 TDI」が発表された。Q7シリーズのトップモデルがディーゼルであるという事実は注目に値するが、ツインターボに加え市販モデル初の電動コンプレッサーを搭載。このトリプルチャージャーで市販ディーゼルモデル中ナンバーワンとなる435psの最高出力を発生するという。

Text by SAKURAI Kenichi

Q7初のSモデル

既報の通り、アウディ ジャパンは、2代目となるアウディ「Q7」を3月下旬より全国の正規ディーラーで販売開始する。フルサイズSUVブームの牽引車としなった初代Q7は、3列シートを備えた7人乗りの広いキャビンが特徴のプレミアムSUVとして2005年にフランクフルト モーターショーでデビュー。日本には翌2006年に導入が開始された。今回フルモデルチェンジで2代目となったモデルは、若干サイズダウンし、車重を約300kgも削減、パフォーマンスと環境性能の両立を果たしている。

日本導入モデルは、Q7初の直列4気筒となる2リッターエンジン(最高出力252ps)搭載の「2.0 TFSI クワトロ」(価格804万円)と、3.0リッターV型6気筒DOHCスーパーチャージャー(最高出力333ps)を持つ「3.0TFSIクワトロ」(価格929万円)の2グレード構成。ともにフルタイム4WDのクワトロシステムと8段ティプトロニックトランスミッションが与えられる。

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

お馴染みの迫力あるシングルフレームグリルに、ソリッド感溢れるエクステリアデザインを採用。水平基調のアウディらしい質感の高いインテリアデザインや、広大なキャビンスペース、リクライニングが可能な2列目シートや、乗員や荷物に合わせた多彩なシートアレンジもまた、Q7ならではの特徴といえるだろう。

日本市場では、導入のニュースが発表されたばかりとタイムリーなQ7にもうひとつ、注目すべきモデルが誕生した。それが本国で発表された「SQ7 TDI」だ。車名の前に「S」が加わることで想像できるように、このモデルは標準シリーズの上位モデルとなるスポーツバーション。アウディは「Sモデル」の原点を1985年のアウディ スポーツクワトロ「S1」にあるとし、高性能モデルの系譜として大切に育ててきた。日本にもほぼ全シリーズに「Sモデル」をラインナップ。同じSUVの「Q5」シリーズにトップモデルとして「SQ5」がすでに導入されている。

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

アウディSUVのトップモデルはディーゼルのSQ7 (2)

3つの過給器で市販ディーゼル中ナンバーワンのパワー

今回本国で発表されたSQ7 TDIは、初代モデルではなかったQ7初のSモデルであると同時に、最高出力320kW(435ps)の4.0リッターV8ディーゼルを搭載する、市販ディーゼル中もっともパワフルなモデルでもある。

ディーゼルエンジンで最高峰のパフォーマンスを得ることになった秘訣は、2つのターボチャージャーに加えて搭載された、世界初となる電動コンプレッサー(EPC)にある。通常ツインターボは、低速域と高速域をそれぞれひとつずつのターボチャージャーが担当。これをシームレスに作動させるとことによって、発進時から超高速域にいたるまでどんな状況においてもドライバーが望むパワーをすぐに引き出すことができるというわけだが、エンジンの低回転時における過給がさほど始まっていない、例えば停止時からの発進などでは、やはりトルク不足を感じるシーンがある。

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

それを補完するのが市販乗用車で初の技術となるEPCで、「排ガスエネルギーを必要とせずに過給圧を発生できることから、どのような運転状況下でも利用することが可能。排ガスを利用した従来型ターボチャージャーの弱点を克服することができた」とアウディでは説明する。

「この新しいTDIエンジンにおいて、ターボラグは過去のものになった。EPCによりわずか0.25秒で、大トルクを発生するための過給エネルギーを提供。小型の電気モーターによって駆動されるコンプレッサーは、最大70,000rpmの高速回転が可能で、ターボラグを伴わない素晴らしいエンジンレスポンスを実現する。EPCは、ドライバーがアクセルを踏み込んだ瞬間に反応し、とりわけ発進加速において大きなアドバンテージが得られる」のだという。

EPCを駆動させるのは専用の48V電源。そのため、最大13kWを発生させる容量470Whのリチウムイオンバッテリーを荷室床下に搭載している。このバッテリーはEPCのほか、必要に応じて通常の12Vバッテリーの電気システムもサポートする。発電は、最高出力3kWで80パーセントを超える効率を誇る新しくパワフルなジェネレーターが担当。この48V蓄電ユニットの搭載に合わせて、通常の鉛バッテリーの負荷も低減している。

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

ふたつのターボチャージャーとEPCの搭載によって、SQ7 TDIの最高出力は320kW(435ps)、最大トルクは 900Nm(91.8kgm)/1,000-3,250rpmを発生。0-100km/h加速は4.8秒、最高速度は 250km/h(電子リミッター作動)に達する。

反対に新欧州ドライビングサイクル(NEDC)における、100km走行あたりの燃料消費量は7.4ℓで、リッターあたりの燃費に換算すると13.5km/ℓになる。ちなみに二酸化炭素排出量は194g/kmと、こちらも500ps近いハイパワーモデルであることを考えれば、望外に低い水準であるといえる。

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

アウディSUVのトップモデルはディーゼルのSQ7 (3)

電動化による新たな可能性

もうひとつ、SQ7 TDIで注目すべき新技術が、サスペンションとボディコントロールのデバイスである。なかでも今回新しく採用された、最大1,200Nmを発生する電気モーターを用いてスタビライザーをコントロールするエレクトロメカニカル アクティブ ロールスタビライゼーションは、不整地ではスタビライザーを分割し乗り心地を改善し、反対にスポーツ走行時にはスタビライザーを連結しボディ剛性を向上。足回りを引き締めロールを抑え、同時にアンダーステアも解消するという。

また、サスペンションは「ドライビング ダイナミクス パッケージスポーツ(ディファレンシャル、エレクトロメカニカル アクティブロールスタビライザーション、オールホイールステアリングとアウディが呼ぶ3つのデバイス)」によって統合制御。このシステムは、可変ショックアブソーバー、エアスプリング、スポーツディファレンシャル、ロールフォースディストリビューションといったサスペンションに関連する機能を連携させ、路面や状況に関わらず卓越したハンドリングや乗り心地を提供するという。

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これまではクルマの世界では、エンジンのパワーを補完するためにモーターを用いたシステムを一般的にハイブリッドと呼んだが、SQ7 TDIでは、エンジンパワーの向上はもちろんのこと、サスペンションの制御にまでモーターとバッテリーを使用、新たなハイブリッドモデル像を具現してみせた。パワートレインだけでなく、クルマの電化はまだまだ可能性を秘めていることがSQ7 TDIを見ると分かる。

欧州では今春からオーダーの受け付けを開始、ベース価格は8万9,900ユーロ(邦貨約1,150万円)になるというSQ7 TDI。日本市場向けにはドイツ プレミアム御三家で唯一ディーゼルエンジンを持たない電化に積極的なアウディだが、果たしてSQ7 TDIを含めディーゼルの日本導入は検討されているのだろうか。

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

Audi SQ7 TDI |アウディ SQ7 TDI

フォルクスワーゲン グループにおけるディーゼルは、確かにナーバスな問題を抱えていると承知してはいるものの、ディーゼル最高峰を謳うSQ7 TDIのスペックは、確実に世のハイパフォーマンスカーオーナーたちの琴線に触れるはずだ。また、日本におけるSモデルのフルラインナップ化にも、このSQ7 TDIは必要なモデルだ。なにせ本国でもQ7のSモデルは、ディーゼル搭載車のこのモデル以外にはないのだから。すでにSQ5も本国ではディーゼルのSQ5 TDIのみになっている。今こそアウディの英断を、ぜひ期待したいと思う。

           
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