Leica|開発者インタビュー&実機撮影

Leica|開発者インタビュー&実機撮影

DESIGN DIGITAL

Leica|ライカ

「ライカ M モノクローム」連続レポート

開発者ステファン・ダニエル氏インタビュー&実機撮影

世界初の35mmフルサイズセンサー搭載のモノクロ撮影専用のデジタルレンジファインダーカメラ「ライカ M モノクローム」を発表したライカカメラ社。5月10日にライカカメラ社があるドイツ本国で新製品発表が行われ、その翌週にはライカカメラAGプロダクトマネージメント・ディレクターであるステファン・ダニエル氏が来日、「ライカ M モノクローム」を含む新作発表を行なった。同時に発表されたライカMレンズの新製品「ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH.」とのセッティングで、ライカMデジタルユーザーである筆者自らシューティングしたステファン・ダニエル氏のポートレートとともに、インタビューをお届けする。

Text & Photographs by KATO Takashi

技術的な側面から生まれた、モノクロ専用という発想

――「ライカ M モノクローム」は、モノクローム専用のデジタルカメラという、ほかに類のないユニークで刺激的なカメラだと思いますが、モノクロのデジタルMカメラはいつごろ構想されたものなのでしょうか?

2008年にデジタルMである「ライカ M 8」を発表した当時から、モノクロームのMデジタルカメラのアイデアはありました。ですが当時はデジタルMの開発に際し、まずはカラー、そしてフルサイズ化をというプライオリティーの差がありましたので、いったん引き出しにしまっていたという経緯がありました。
いまではMデジタルはフルサイズ化し、デジタルカメラのマーケットも成熟してきました。カラーではないモノクロームに対するユーザーの興味も出てきましたし、モノクロ写真はトレンドのひとつでもありますので、いまがベストなタイミングだと判断しました。

レンジファインダーカメラ,ライカ M モノクローム,ステファン・ダニエル, M モノクローム,ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH,2

プロダクトマネージメント・ディレクター、 ステファン・ダニエル氏

レンジファインダーカメラ,ライカ M モノクローム,ステファン・ダニエル, M モノクローム,ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH,3

マグナム・フォトによる作例 ©Jacob Aue Sobol/Magnum Photos

――とはいえ、モノクローム専用デジタルカメラというものは、マーケティング的にハードルが高いとおもいますが、現在のデジタルカメラのマーケットに対するチャレンジという意味もありますか?

じつはモノクロームのMデジタルが生まれた背景にはマーケティング的な側面よりも、技術的なものが大きくありました。カラーフィルターを使う通常のカラーのデジタルカメラより、カラーフィルターなしのセンサーだけのほうが、理論的に解像感が高いデジタルカメラをつくれることは、ライカの技術者は分かっていました。ただおっしゃるように、当時はまだマーケティング的なリスクが高いという判断があり、すぐには商品化に至りませんでした。

――カラーフィルターをなくすことで、このカメラを手にしたフォトグラファーは、写真という世界を文字通り色眼鏡をかけることなく、よりダイレクトにみることになるのではないでしょうか。

そうですね。これまでのデジタルカメラはカラーフィルターを通すことでデジタル処理が施されるので、それがないモノクロームカメラはよりダイレクトに世界を見ることに繋がります。

レンジファインダーカメラ,ライカ M モノクローム,ステファン・ダニエル, M モノクローム,ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH,4

ダニエル氏はMだけでなく、コンパクトカメラなどの部門も統括する

レンジファインダーカメラ,ライカ M モノクローム,ステファン・ダニエル, M モノクローム,ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH,5

筆者が愛機の「ライカ M 8」でもダニエル氏を撮影

――モノクロのデジタルMであるメリットを教えて下さい。

3つメリットがあります。1つは先ほどお話した、カラーフィルターをとることによる解像度のアップ。具体的には同じ画素数のカラーデジタルカメラと比べて約2倍解像度がアップする計算です。2つめはカラーフィルターは色がついたサングラスのようなもので、そこを通る光を若干劣化させます。ですのでそれがないことによってカメラの感度を絞りで約1.5から2段階上げることが可能になります。3つめはモノクロ専用機ということで、フォトグラファーが色といった要素を考えることなく、撮影に集中することができることです。カラー撮影に慣れた人びとにとっては、まったくあたらしい心持ちで撮影ができるのではないかとおもっています。

――モノクロ専用になることによって、フォトグラファーはデジタルカメラにおいてもモノクロフィルムを使用する時と同じように、芸術的な画づくりや被写体とのコミュニケーションに集中できるようになったとおもいます。

そうですね。カラーフィルターをとることで単に解像度を上げることに成功したというだけでなく、よりよいモノクローム写真を撮影してもらいたいというおもいがあります。

レンジファインダーカメラ,ライカ M モノクローム,ステファン・ダニエル, M モノクローム,ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH,6

©Jacob Aue Sobol/Magnum Photos

レンジファインダーカメラ,ライカ M モノクローム,ステファン・ダニエル, M モノクローム,ライカ アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH,7

今回いちはやくライカ M モノクロームで撮影する機会を得た

――このカメラのコンセプトのひとつである「色をみることをせず、光を忠実に記録する」とは 、「フォトグラフ=光の画」という意味では、写真の原点回帰でもあるのではないでしょうか。

まさにその通りだと思います。ライカのカメラにとっても、ライカカメラが歩んできた写真にとっても、オリジナルの再発見でもあると考えています。

伝統、そして次世代のライカMカメラへ

――1954年に「ライカ M 3」が発表されて以降、ライカMカメラのかたちは大きな変更もなく、すでに完成された芸術品のように美しいと思うのですが、今後もこの形は継承されていくのでしょうか?

ライカMのかたちは伝統的なシェイプではあるのですが、伝統的だから継承しているのではなく、カメラを手にしたときの手になじむ大きさや形、ハンドリングのよさなど実際的なメリットがあるからです。ですのでMカメラの形状にかんしては大きくは変える必要がない完成されたものだとおもっています。

――ライカの新作カメラの発表はつねに世界的な話題になります。2009年9月9日の9並びの日に「ライカ M 9」デジタルが発表されたように、今回5月10日(May10)にライカカメラ社が新作の発表をすると公表したときには大きな話題になりました。

数字には特別な意味はありません。今回5月10日に発表会が行われたのは、たまたまその日に会場が空いていたからです(笑)。

――なるほど(笑)。「ライカ M 10」の発表を予想していたライカファンも多いとおもうのですが。

もちろん、いずれそのようなこともあるのでしょうが、いまは言えません(笑)。

――そうですよね(笑)。最後に、日本のライカファンにメッセージをお願いします。

日本ではかねてよりドイツ本国と同じくらいか、それ以上にライカのカメラに対する高い評価をいただいており、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。ライカのカメラで皆さんがたくさんのすばらしい時を美しく記録し、人生を楽しんでいただければ幸いにおもいます。

ライカカメラジャパン
Tel.03-5221-9501
http://www.leica-camera.co.jp