伝統の息づく京都の街から“Bento Box”を世界に発信！

ベルトラン氏が日本の弁当箱を目にしたのはまだ幼いころ。アニメやマンガをとおしてだった。それから20年近くがすぎたころ、フランスではファッション誌が“弁当箱”を取りあげはじめ、弁当のレシピを紹介するブログの数が増えていった。2008年のことだ。そのときすでに京都に移住していたベルトラン氏は、フランスにいる母親からその話を聞いたという。つねづね「日本のものづくりの素晴らしさ、日本ならではのおもしろい商品をフランスに紹介したい」とおもっていた彼にとって、これが転機を迎えるきっかけになった。

「フランスには弁当箱というものがありません。家からお昼を持ってくることはあっても、ただタッパーにつめるだけという人がほとんど。タッパーには仕切りもついていません。それに比べて、仕切りをうまく使って、おかずを少しずつ詰めていく日本の弁当箱は、中身をきれいに、さらにおいしそうに見せてくれると感じています」

ベルトラン氏は、弁当のレシピを熱心にあげているフランス人ブロガーたちが、ネットオークションを駆使するなど、あれこれ工夫しながら弁当箱を手に入れている点に注目。もっと気軽に楽しく弁当グッズを買える場所をつくろうと、2008年の11月、弁当グッズ専門のオンラインショップ「Bento&co」（フランス語版）をオープンした。

2010年には英語版を、さらに2011年末には待望の日本語版のオンラインショップをオープン。ベルトラン氏もふくめてスタッフは全員で6人という少人数の会社だが、たった3年で4万個の荷物を配送、世界70ヵ国から注文を受けるまでに成長した。そのうちの50％はフランスやベルギー、スイスなど、ヨーロッパからだが、最近ではカタールやイスラエルなどからも注文が増えているとのこと。

弁当箱そのものの魅力はもとより、「それをどう見せるかが大事」と話すベルトラン氏。たしかにオンラインショップでは、身近な存在の弁当箱が、いつもよりちょっと凛々しい表情で写真におさまっている。フランス語と英語で商品の解説があるのも、海外の“弁当ファン”にとってはうれしいポイントだろう。こうしたユーザー視点の“お店づくり”が功を奏し、Bento&coは着実にファン層を拡大していった。

ファンの数が増えていくにつれ、今度はネットではなく、実際に目で見て手で触れられる場所をつくりたいというおもいが芽生えはじめた。今年の2月初めに、偶然見つけた物件がたまたま空いていたことから、2年ほど温めていた実店舗の構想を実行に移すことに。京都の三条駅を降りて鴨川を渡ったら、河原町通を抜けて寺町通を左折。六角通沿い、寺町通と御幸町通のあいだに見える「弁当専門店」の看板。ここが、去る4月7日にオープンしたばかりのBento&coの実店舗だ。

お店には、オンラインショップと同様、ベルトラン氏みずからが選んだユニークな弁当箱に加え、Bento&coプロデュースのオリジナル弁当箱、さらにお箸やピック、シリコンカップ、型抜きなどの弁当グッズが並ぶ。一番人気の「こけし弁当」から、秋田の伝統工芸品「曲げわっぱ」、和布を特殊技術でプリントした「布貼弁当」、おにぎりをかたどった「Ojyu Onigiri」、カラフルなキャラクターものの弁当箱まで、目に飛び込んでくる商品はじつに多種多様。どれもすべて日本製だ。今後は弁当のレシピ本やふろしき、「開化堂」の茶筒や「一保堂茶舗」のお茶など、あたらしいことに果敢にチャレンジしている京都の老舗メーカーの商品も紹介していきたいという。

以前から「たとえ遠距離でも、たとえインターネットを介してでも、日本式のおもてなしの心でお客様と接したい」と語っていたベルトラン氏。実店舗をオープンすることになっても、その姿勢にブレはない。伝統の息づく京都の街から、 “Bento Box”の魅力とともに日本のものづくりのすばらしさを世界に発信しつづけていってくれるはずだ。

Bento&co
京都市中京区六角通麩屋町東入八百屋町117
Tel. 075-708-2164
営業時間｜12:00～19:00（土曜は20:00まで）
http://www.bentoandco.jp/
http://www.facebook.com/BentoandcoJapan（facebookページ日本語版）
http://www.facebook.com/bentoandco（facebookページ英語・フランス語版）