日本に上陸した新型X1に試乗|BMW
CAR / IMPRESSION
2016年1月4日

日本に上陸した新型X1に試乗|BMW

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

日本に上陸した新型BMW X1に試乗

つきあいやすいSUV

今年、フルモデルチェンジを受け、日本でも10月より販売が開始されたBMWのコンパクトSUV「X1」。従来型の後輪駆動ベースより、「2シリーズ アクティブツアラー」や同「グランドツアラー」などと同様のFFベースのプラットフォームを採用したのが最大のトピックだ。モデルラインナップの中間グレードに位置するX1 xDrive 20iに、モータージャーナリスト小川フミオ氏が試乗した。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

眼目はシャシーの共用化と後席スペースの拡大

BMW「X1」がフルモデルチェンジ。最大の眼目は、前輪駆動のシャシーを使ったところにある。初代X1は、先代3シリーズ(E90)をベースに開発されたモデルだった。ステーションワゴンとSUVのハイブリッドともいえるスタイリングゆえ、メーカー自身が、SAV(スポーツアクティビティビークル)と新たに定義したほどだ。

新型X1は、スポーティな雰囲気を漂わせていた先代に対して、だいぶイメージが変わった。全高が30mm高められるという数値ばかりだけでない。スタイリングが、より一般的なSUVになった。先代のキャラの立った雰囲気を好んでいた人は、これを(ちょっと)悲しむかもしれない。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

「よりBMW Xモデルらしい、たくましく力強いスタイリング」とは、新型X1を定義して、BMW AGの日本法人、BMWジャパンによる表現だ。フルモデルチェンジの眼目は、少々勝手に想像させてもらうと、2シリーズアクティブツアラーおよび同グランツアラーとシャシーを共用してのコストダウンと、「後席スペースを大幅に拡大」(BMWジャパン)というパッケージングの見直しにあるのだろう。

前輪駆動モデルと定義すると、ただし、BMWジャパンでは「そうではなく4WD」と異議を唱える。日本におけるラインナップでは、sDrive(エスドライブ)と呼ばれる前輪駆動モデルは限定的な設定だからだ。車種構成は、エンジンを中心にみると、大きく3種類。駆動方式でみると、さきに触れたように2種類。ベースモデルは、1.5リッター3気筒搭載の18iで、これは前輪駆動のsDriveのみ。あとはすべて、オンデマンド式の4WDシステムであるxDrive(エックスドライブ)を備える。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

中間グレードは、2リッター4気筒の20i。その上に、同じ排気量ながら、よりパワフルな25iが設定されている。X1 xDrive 20iが、141kW(192ps)の最高出力と、280Nmの最大トルクを持つのに対して、X1 xDrive 25iは、それぞれ170kW(231ps)、350Nmとパワフルだ。

フロントマスクは大きなエアダムと、吊り目のヘッドランプ、それに上のほうが湾曲した立体的なキドニーグリルと、かなり力強い。ほかのBMW「Xシリーズ」とのファミリー・リゼンブランス、つまり一族であることがひと目でわかる意匠が採用されている。

一族といえば、さきにも触れたように、内容的には、「2シリーズアクティブツアラー」との近さが想像できる(ホイールベースも同一だし)。少なくとも側面から観た際のウィンドウグラフィクスと、ダッシュボードやシートの造型を含めたパッケージングは、いい意味では、機能的な使いやすさをすべて継承している。悪い意味では、特別感に乏しい。ただし、これら2台を同時に買って変化を楽しもうというユーザーはいないだろうから、これでいいのだ。

運転すると、しかしながら、X1 xDrive 20iはかなりよかった。違うクルマだと思ったほどだ。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

日本に上陸した新型BMW X1に試乗

つきあいやすいSUV(2)

理性を超えた付き合いがしたくなるクルマ

X1 xDrive 20iは、さきに触れたように、141kW(192ps)の最高出力と、280Nmの最大トルクを持つ。2シリーズアクティブツアラーではxDriveが組み合わされるのは、25iなので(グランツアラーにはxDriveの設定はない)、このモデルの独自性が光る。

操縦すると、はたして、かなりよいのである。まっすぐな道も、曲がった道も、しっかり走って、楽しい。1250rpmから最大トルクを発生するエンジンは、低回転域だけでなく、上まできっちり回って、エンジンの楽しさを味わわせてくれる。そこはやはりBMWだ。気がつくと、ガンガンというかんじでエンジンを回してこのクルマを楽しんでいる自分がいる。理性を超えた付き合いがしたくなる。少なくても、クルマの場合、これは長所である(笑)。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

中間加速の領域でも、8段オートマチック変速機との連繋もよく、運転者の意志をちゃんとくみ取ってくれる。「ドライビングパフォーマンスコントロール」で「コンフォート」を選択していても、十分に楽しめる。加速しつづけたい時は、高めの回転を維持して、加速の快感をじっくり体験させてくれる。「スポーツ」モードを選べば、さらに、きびきびとした加速性はより強調される。

「ドライビングパフォーマンスコントロール」でどのモードを選んでいても、足まわりとステアリングの設定とのバランスが崩れることはない。ステアリングホイールの操舵感はやや軽めである一方、足回りはちょっと路面の凹凸を拾いすぎるかなと思うが、全体としては、操縦を楽しませるというメーカーの意図がしっかり伝わってくる出来だ。ダイレクトな感覚は、2シリーズアクティブツアラーより上だと感じた。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

動きは、サスペンションのストロークを感じさせるというより、はるかに一般的な乗用車に近い。オフロード走行は未体験なのだが、グラウンドクリアランスも185mmあるし、スキー場など、日常の延長でのオフロードなら、難なくこなすと思われる。

xDriveは、通常走行時には前輪にほぼ100パーセントのトルクを配分。悪路や滑りやすい路面では、電子制御技術を使って、瞬時に後ろにもトルクを振り分ける設定だ。かつ、カーブなどふだんの走行でも、可変トルク制御の技術を積極的に使っている。カーブで、オーバーステアやアンダーステアの兆候が出ると、トルク配分で車両の挙動を安定させようとする。また、カーブでは、自動ブレーキ制御も採用されている。アンダーステアを抑えるため、必要に応じて内側後輪にブレーキをかけるのだ。

もうひとつの魅力は、使い勝手のよさだ。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

日本に上陸した新型BMW X1に試乗

つきあいやすいSUV(3)

大型セダン並みの後席スペース

新型X1が、新世代のプラットフォームを得てよかったこと。それはユーザーのライフスタイルを拡充してくれる点ではないだろうか。なによりパッケージングがよくなった。つまり、ファミリーユースなどを前提とした場合、使い勝手がぐっと向上しているのだ。

「後席スペースを大幅に拡大し、ひとクラス上のモデルに匹敵する室内空間を実現」したとBMWではする。まさにこの点が新型X1の魅力のひとつだろう。2シリーズアクティブツアラーを知っている人は、室内に入ると、ダッシュボードやシートの意匠に、共通性を見つけるだろう。クリーンな造型に加え、使いやすい新世代のインフォテインメントシステムなど、ここに従来型との大きな違いがある。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

従来のX1が、ややタイトなかんじの車内で、どちらかというとクルマを“着る”感覚を持っていたのに対して、新型は、もうすこし理知的だ。“作業場”でなく、居心地のよいクリーンなラウンジ的な感覚がある。とくに試乗したモデルは「xLine」という、レザーシートなどでラグジュアリー感を強調した中間グレードだったので、その感が強かったのだろう。

後席の使い勝手のよさは、BMWの言うとおり、新型の最大の特長だ。レッグルームもヘッドルームも、実際、大型セダンなみの余裕を持つ。しかも大型パノラマガラスサンルーフをオプションでつけると、最高のもてなし空間になる。いっぽう、前後にスライドする機能をオプションで選ぶことができるので、3人乗車時はずらして肩がぶつかることから逃げられるし、搭載する荷物が(ゴルフバッグのように)長ければ、この機能は有効だ。

BMW X1|ビー・エム・ダブリュー X1

多用途性こそ、X1が新しい世代のSAV(BMW言うところのスポーツアクティビティビークル)であるゆえんかもしれない。アクティビティを、生活の楽しみに広がりをもたらす多機能性と位置づければ、オフロードからオンロードでの楽しいドライブ感覚、そして趣味を含めた日常での多用途性と、あらゆる分野をカバーしてくれる。つきあいやすいSUV、それが新型X1だ。

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BMW X1 xDrive 20i xLine|ビー・エム・ダブリュー X1 xDrive 20i xLine
ボディサイズ|全長 4,455 × 全幅 1,820 × 全高1,610 mm
ホイールベース|2,670 mm
トレッド 前/後|1,565 / 1,565 mm
重量|1,660 kg
最低地上高|185 mm
エンジン|1,998 cc 直列4気筒 DOHC ツインパワー・ターボ
最高出力| 141 kW(192 ps)/ 5,000 rpm
最大トルク|280 Nm(28.6kgm)/ 1,250-4,600 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|225/50R18 / 225/50R18
燃費(JC08モード)|14.6 km/ℓ
トランク容量|505 リットル
価格|492万円

問い合わせ先

BMW カスタマー インタラクション センター

0120-269-437(平日9:00-19:00、土日祝9:00-18:00)

           
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