インド随一のコスモポリタンシティ、ムンバイのいまと未来を探る旅|特集
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2015年12月4日

インド随一のコスモポリタンシティ、ムンバイのいまと未来を探る旅|特集

特集|インド随一のコスモポリタンシティ

ムンバイのいま、そして未来を探る旅(1)

旅人にとって、インドは常に特別な場所だ。とくにポルトガル語の“よい港”(ボン・バイア)に由来するという名前をもつムンバイは、大航海時代にポルトガルの船乗りたちを魅了し、1534年に譲渡されて以来、エキゾティックで活気あふれる港町として、賑わいをみせてきた。変わりつづけるこの街のいま、そして未来を探しに出かけた。

Text by MAKIGUCHI June

01TO SEE:
ムンバイで訪れたいふたつの注目エリア

01TO BUY:
外せないショッピングスポットは?

01TO EAT:
カレーだけじゃない、ムンバイの絶品グルメ

01TO STAY:
伝統と格式、現代インドが融合した至極のステイ

Page02. TO SEE:ムンバイ建築を見に訪れたいふたつの注目エリア

特集|インド随一のコスモポリタンシティ

ムンバイのいま、そして未来を探る旅(2)

TO SEE:ムンバイで訪れたいふたつの注目エリア

1661年、ポルトガルの女王が英国のチャールズ2世と結婚したとき、持参金として英国の手にわたったという歴史をもつムンバイ。メインランドから離れていた7つの島が、まるで本土から突き出した半島のような形に埋め立てられてからは、東インド会社の発展とともに世界的な貿易港へと大変貌を遂げた。

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ムンバイ名物の渋滞も活気ある街の風景のひとつ

その後も、英国からの独立運動や宗教対立などを経験しながら、時代のニーズに応じて変容してきたこの街は、まさにインドの発展の象徴、歴史の証人ともいえる。さらには、インド経済の中心地として躍進しつづけ、この国最大の映画産業“ボリウッド”を擁し、現代アートや文化の発信地としての役割も担っている。ここには、インドの魅力を凝縮したようなおもしろさがあるのだ。

この国の変化の様子は、ムンバイの街のいたるところで見て取れる。いま、世界で存在感を増すインドそのままの姿を見せてくれるのが、パレル地区だ。有名なラグジュアリーホテルが次々と進出し、高さを競い合うかのように高層ビルが建設ラッシュを迎えている。大きく変わりつつあるこの街を訪れることは、まさに発展の歴史に立ち会うことになると言えるだろう。

また、ムンバイの歴史を感じるために訪れたいのは、発展のきっかけとなった歴史をそのまま閉じ込めたかのようなフォート地区だ。東インド会社が作りあげたこの地域では、世界史と建築好きにはもってこいの街歩きが叶う。英国植民地時代に、英国の威厳を示すために作られた白亜のグレコローマン様式の建築、「アジアティック・ソサエティ・オブ・ムンバイ(現・ムンバイ図書館)」を中心に扇状に街がつくられ、ヨーロッパの街並をおもわせる。

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歴史的建築をめぐるツアーも開催されている

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世界有数のアールデコ建築群も見られる

この地区には湾に面して建つインド門、英国人建築家のフレデリック・ウィリアム・スティーヴンスによる世界遺産の「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」、おなじく英国人建築家のギルバート・スコットによる「ムンバイ大学校舎」と、キャンパス中央にあるゴシック様式の「時計塔」、マイアミにつづく世界第二の規模を誇るアールデコ建築群など、歴史的な名建築が目白押しだ。

おもしろいところでは、1869年に建造された「ワトソンズ・ホテル」にも注目したい。カラ・ゴーダというアート地区にあるインド最古の鋳鉄建築で、英国で加工された建築材をふんだんに使った元ラグジュアリーホテルだ。だが現在は、ワイヤーでつくられた意匠やファサードなどに華やかな面影をかろうじて見出せる程度。

およそ100年近くムンバイの社交界を支えていたが、ホテルが閉館したあとも修復されることなく現存。危険な状態のまま雑居ビルとして使用されており、「100 World Endangered Monuments(喪失の危機にある世界で100軒の建造物)」のひとつとして登録されているユニークな建物だ。

フォート地区には、ムンバイのアイコン的存在「タージ・マハル・ホテル」や、「ナショナル・ギャラリー・オブ・モダンアート」をはじめとする美術館、博物館、ギャラリーも多い。ぜひ自身の足で、そして肌で、ムンバイのいま、そして過去と未来を感じてみてはいかがだろうか。

Page03. TO BUY:ムンバイで外せないショッピングスポットは?

特集|インド随一のコスモポリタンシティ

ムンバイのいま、そして未来を探る旅(3)

TO BUY:ムンバイで外せないショッピングスポットは?

旅先でのショッピングは、その土地の暮らしや文化を感じる貴重な機会でもある。国際都市ムンバイには、ハイエンドからカジュアルまで、世界各国でお馴染みの有名ブランドも多く進出しているが、やはりその国の文化を色濃く映し出した店での買い物を通して、街がもつ雰囲気を感じたいものだ。

手っ取り早いのは、地元の人が集まる繁華街やマーケットを訪れること。ムンバイでのお勧めは、パレル地区にあるラルバウグエリアのマーケット「チワダ・ガリ」だ。生活に必要な品、生鮮品が売られるマーケットの一角に、香辛料を扱う店が立ち並ぶ路地がある。

とうがらしを粉状にひき、顧客のニーズに応じてマサラを独自配合する店もあり興味深い。郷土料理に欠かせない目にも鮮やかなスパイスや、鼻をくすぐる爽やかな香り、それを売り買いする人びとで賑わう様子に触れていると、素顔のムンバイが感じられる。また、ビールにぴったりの、マサラをまぶしたスナックを量り売りする店も多いので、おつまみを調達するのもいいだろう。

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ポップなデザインで現代ムンバイ・スタイルを感じさせる「ボンベイ・エレクトリック」

ちょっとトレンドを意識したアイテムや、気のきいたお土産を探すならフォート地区へ。「タージ・マハル・ホテル」周辺には、旅行者や駐在員らにも人気のスタイリッシュなショップが並ぶ。

「ボンベイ・エレクトリック」は、インド人デザイナーによる服やバッグ、ストール、アクセサリーなどを扱う店。鮮やかな色使い、きらきらとした素材、動物や植物を多用したモチーフなど、インドならではの個性を感じさせるエキゾティックなアイテムが多く、見ているだけで心が躍る。

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そのいっぽう、洗練されたモダンなデザインにアレンジされていているので、日本に帰ってきてからも違和感なく身に着けられそう。国内外のファッション誌が太鼓判を押す、おしゃれなセレクションは必見だ。

インテリアを選ぶなら「グッドアース」へ。クッションやテーブルクロスといったファブリックアイテムから、食器、キャンドル、コスメなどライフスタイルグッズ全般が揃う。所狭しと並べられた商品に目移りしてしまい、つい時間を忘れてしまうほど。とくに、布製品は軽くて壊れず、スペースもとらないので、お土産にも最適。とにかく種類が豊富なので、ぜひゆっくりと時間をかけてお気に入りを見つけてほしい。

インドで見つかる魅力的な品の多くは、カラフルで華やかな色使いが特徴。スパイスの国ならではの、華やかさに心惹かれたら、いつもは選ばないマサラカラーを手に取って、旅の思い出とともにもち帰るのも悪くないだろう。

おしゃれマダム御用達の「グッドアース」

CHIWDA GALLI|チワダ・ガリ
Dinshaw Petit Road, Chiwda Galli, Mumbai

BOMBAY ELECTRIC|ボンベイ・エレクトリック
1 Reay House, Best Margcolaba, Mumbai
http://www.bombayelectric.in/

GOOD EARTH|グッドアース
2 Reay House, Adjacent to Taj Mahal Hotel, Colaba, Mumbai
http://www.goodearth.in/Store-Locations

Page04. TO EAT:カレーだけじゃない、ムンバイの絶品グルメ

特集|インド随一のコスモポリタンシティ

ムンバイのいま、そして未来を探る旅(4)

TO EAT:カレーだけじゃない、ムンバイの絶品グルメ

インドといえばカレーは外せない。もちろん、本場の味を体験するのは必須だ。伝統的な料理を求めるなら南インド料理がおすすめだが、国内各地からひとが集まってきたこの地では、さまざまな地方の味が融合したハイブリッドなグルメも楽しめる。

ストリートフードに興味があるなら、ムンバイならではのスナックを頬張るのもいい。東インド会社が発展するにつれて、労働力が求められたこともあり、ムンバイにはインド国内から多くの人びとが集まった。やがて、忙しい労働者たちのために、早くておいしくて栄養があるオリジナルのファストフードも生まれたのだ。

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独自に発展したストリートフードも魅力

お勧めはパレル地区にある人気店「ラドゥ・サムラート」。植物性のオイルでカラリと揚げたコロッケやサモサのようなものが評判の小さな店だ。ベジタリアンの多いインドらしく、マッシュしたポテトや野菜にスパイスをくわえて揚げたものが種類豊富(16ルピー~)。パンに挟めば朝食にぴったりのボリュームになる。

揚げ物そのものは辛すぎることもなく、ソースで刺激を調整できるので、香辛料が苦手な人でもおいしく食べられる。

テイクアウトでも、店内で座って食べてもオッケー。インドスイーツもたくさん揃っているので、地元の食を体験したい人に格好の店だ。

世界有数のコスモポリタン都市に来たからには、ぜひここでしか味わえない個性的な創作料理もぜひ味わってほしい。変容を遂げつつあるムンバイでは、いままさに、食文化にも大きな変化が表れている。自国の食文化に敬意を払いつつ、モダンな洗練を加えた味が自慢のレストランも増えているのだ。

カリフォルニア出身のシェフが作る料理が話題の「ザ・テーブル」は、よく海外のメディアにも取り上げられているモダンなレストラン。スタイリッシュな店が増えつつあるコラバ地区に店を構え、インドの食材を使って、ワインとも相性のよい西洋スタイルで仕上げた料理を提供している。

スモールプレート(前菜)には、ズッキーニ“スパゲッティ”(600ルピー)がおすすめだ。ロングパスタのように細長く仕立てられたズッキーニに、アーモンドとパルメザンをかけていただくオリジナルの一品は、シャキシャキとした歯触りとシンプルな素材の味が、トッピングの香ばしさとあいまった自慢の一皿。

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甘いものに目がないインドの人びとのため、スイーツも充実している「ザ・テーブル」

ラージプレート(メイン料理)には、しめじが入ったレッドワインリゾット(750ルピー)やラムのラグーでいただくホームメイドパッパデッレ(850ルピー)はいかがだろう。きのこやラムの風味が豊かで赤ワインにぴったり。スパイシーな料理にすこし疲れたときにも、西洋の洗練さが恋しいときにも、うれしいお店だ。

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工場だった廃屋を改装した「ボンベイ・カンティーン」

同様に開発が進むロウワー・パレル地区で、工場跡の巨大な敷地の一角を改装してつくられたのが「ザ・ボンベイ・カンティーン」。ここでは、地域によって特徴のことなるインド料理を融合させた、あたらしいタイプのインド・フュージョン料理が楽しめる。

インドの人びとにとっては極めて馴染み深い食材と料理法をもちい、組み合わせの妙によって、まったくあたらしい料理につくりかえるという試みをつづけているのだ。

とはいえ、登場するのは決して奇をてらわない美食ばかり。あくまでもインド料理というジャンルを守りつつ、驚きを与える味に地元からの支持も大きい。

また、地元の新鮮食材を使うことをモットーとし、季節によって変わるメニューも評判だ。年中気候に大きな変化がないインドで、シーズンごとにあたらしいメニューを開発するのは至難の業であり、とても稀。インド料理界に新風を吹き込む、風雲児たちのチャレンジ精神を感じさせるレストランだ。

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ここでしか味わえないインド・フュージョンを食せる「ボンベイ・カンティーン」

廃墟を改装した店内は、ボンベイで親しまれている建築、ガラス×スチールやセメントをもちいたアールデコ、ブロックをもちいたゴシックなどにインスパイアされていて、街の歴史に敬意を表しているのだという。

ご紹介した3軒はいずれも、ぜひもう一度訪れたいと心から思える店。ムンバイでレストランを探す際は、ぜひ候補に入れてみては。

LADU SAMRAT|ラドゥ・サムラート
1 & 2 Habib Terrace, Dr BA Road, Lalbaug, Parel, Mumbai

The Table|ザ・テーブル
Kalapesi Trust Building, Below Hotel Suba Palace, Apollo Bunder Marg, Colaba, Mumbai
http://thetable.in/

The BOMBAY Canteen|ザ・ボンベイ・カンティーン
Unit 1, Process House, Kamala Mills, S.B Road, Lower Parel, Mumbai
http://thebombaycanteen.com/

※1ルピー≒1.8円(11月30日現在)

Page05. TO STAY:伝統と格式、現代インドが融合した至極のステイ

特集|インド随一のコスモポリタンシティ

ムンバイのいま、そして未来を探る旅(5)

TO STAY:伝統と格式、現代インドが融合した至極のステイ

いま、ムンバイに滞在するなら、大きく姿を変えつつある街の活気を肌で感じられる、市内中心部のロウワー・パレルがお勧めだ。ここは現在、開発の真っただなかにあり、空港からも近く、市内でも最も高級な繁華街や住宅、エンターテイメント施設が立ち並ぶエリア。

5年後と言わず、1年後には、まったくちがう印象をもつエリアになっているはずだ。

今秋には、かつて工場が立ち並び、労働者たちであふれかえっていたこの場所に、ラグジュアリーホテルの代名詞といえる「セントレジス・ムンバイ」がオープン。財界人、ボリウッド関係者など、インドの富裕層が集まるムンバイで話題のスポットとなっている。

1904年にニューヨークで誕生した、名門ホテルブランドの系譜を受け継ぐ世界で35軒目のセントレジス。紳士淑女が自宅にいるかのようにくつろげる場を、とはじまったブランドの精神は、ここムンバイでもエレガントな空間づくり、妥協のないパーソナルなサービスに色濃く反映されている。

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発展めざましいパレル地区に建つ「セントレジス・ムンバイ」

たとえば、ゲストのニーズに一括して応じる、英国式の伝統で磨き抜かれたオーダーメイドのバトラーサービスはあまりにも有名。到着時はもちろん、滞在中のドリンクサービス(マサラティーがお勧め!)や、荷解き、パッキングサービスなど、個々の要望に専用のバトラーたちが24時間体制で応えてくれるのだ。

館内には9つのレストラン、バー、ナイトスポットがあり、さまざまなオケージョンに対応してくれる。応接間のようなロビーでは、伝統的なアフタヌーンティーを用意。ムンバイの歴史と現在をモチーフに描かれた壁画を眺めながら、オリジナルブレンドの紅茶をいただく、ゆったりとした午後をすごすのもいいだろう。毎夕ここでは、シャンパンボトルを剣で開封する“リチュアル”も開催され、ゲストにシャンパンが振る舞われている。

そんな伝統と融合するかのように、インドらしさが添えられているのもおもしろい。都会的でスタイリッシュなインテリアで統一された館内と客室内は、インドの現代アーティストによる特注の美術品が飾られ、この地の文化を感じさせてくれるのだ。インドのモダンアートに興味をおもちなら、バトラーにホテル内のアートを巡るツアーをお願いしてみるのもいい。

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スタイリッシュなレストランには、ムンバイのセレブリティが夜ごと集う

「セントレジス・ニューヨーク」のバーで「ブラッディ・メアリー」(ウォッカをベースにした、トマトジュースを使ったカクテル)が生まれたことから、各都市のセントレジスで地域色を反映したオリジナルのブラッディ・メアリーが味わえるのをご存知だろうか? ここムンバイの「セント レジス バー」では、シナモンやコリアンダーなどでアレンジをくわえた、インドならではのスパイシーな「ムンバイ・メアリー」が楽しめる。

また、ホテル内のイリジウムスパで、インドならではのマッサージ「ANGASHANTAM」(60分5800ルピー/90分7500ルピー)を受けてみるのはいかがだろう。伝統医学、アーユルヴェーダの手法をもちいて、サンダルウッドをブレンドした薫り高いピュアオイルで全身にくまなく圧をかけ、血流を促すだけでなく、心を落ち着けるよう内面にまで働きかけるホリスティックな施術だ。デトックス効果が高いとされ、日ごろのストレス、旅の疲れを取り除くのにもってこいだ。

見知らぬ旅先では、確かな技術が保証されたホテルのスパは格好の癒しの場。ボディマッサージ、トリートメント、フェイシャル、そして紳士用、カップルで受けられるメニューまで、時間と要望に応じたコースが多数用意されている。街歩きに疲れたら、喧騒を逃れてゆっくりとスパでリラックスするのをお忘れなく。

セントレジス・ムンバイで経験するサービスは、決して通り一遍ではない。王制時代から受け継がれたホスピタリティを継承するインドならではのサービススピリットと、セントレジスの伝統と格式とが見事に融合した、至極のステイと心に残る体験を、ここムンバイで味わってみてはいかがだろうか。

The St. Regis Mumbai(セントレジス・ムンバイ)
462, Senapati Bapat Marg, Lower Parel, Mumbai
Tel. +91-22-6162-8000
http://www.starwoodhotels.com/stregis/

※空港内のエスコートサービス、空港ホテル間の送迎サービスも手配可能
※1ルピー≒1.8円(11月30日現在)

           
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